「地球が燃えている」温暖化が進めば地球はどうなるのか IPCC最新報告の深刻度を解説

文=志葉玲
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Getty Imagesより

●いま、“ここ”が分水嶺…豊かな地球を残すために知っておくべきこと(第6回)

 温暖化が人類の脅威となるのは、未来のこと──その様な幻想を打ち砕いたのが、この8月にその一部が先行公表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書です。

 同報告書は、熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧のような激しい気象災害が、温暖化によるものであり、人間活動の結果であることを、これまでになく強調しています。この報告を受け、国連のアントニオ・グテーレス事務総長も「地球が燃えている」として、温暖化の進行が待ったなしの緊急事態であることを訴え、各国へ対策強化の必要性を強く呼びかけました。

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温暖化による被害は既に深刻!

 近年、世界各地で「数十年に一度」であるはずの異常気象が頻発するようになってきています。

 北部が北極圏に入るなど、世界で最も寒い国の一つであるカナダでは、今年6月末、熱波に見舞われ、同国南西部の都市リットンで気温49.6度を記録しました。

 また、この夏は地中海周辺の国々も異常高温と干ばつに襲われ、ギリシャやトルコ、アルジェリア等で大規模な森林火災が発生。特にアルジェリアでは、対立する隣国モロッコが放火に関与したのではと疑い、国交を断絶。気象災害が国家間の紛争にも影響するようになってきています。

 気象災害は日本にとっても他人事ではありません。「数十年に一度の雨」を意味する気象庁の「大雨特別警報」が、2017、2018、2020年、そして今年8月と相次いで発表され、いずれの年も被害は深刻でした。特に2018年は西日本豪雨だけではなく、台風21号と24号の被害も甚大で、日本損害保険協会によれば、これらの気象災害での保険金支払額は1兆4467億円と、東日本大震災のそれを上回る規模となりました。

温暖化の進行と異常気象の関係

 温暖化の進行によって異常気象が発生するリスクについては、以前からも懸念されていました。

 本来、その地域ではあり得ない異常な暑さや寒さはジェット気流の蛇行が関係しています。地球の中緯度上空を流れるジェット気流は、赤道側の高温の空気、北極側の寒気を遮るカーテンのような役割を持ちますが、これが大きく蛇行することで、赤道側の高温の空気が北側に張り出してきたり、逆に北極側の寒気が南下したりします。これは、ジェット気流のエネルギー源である北極と赤道の温度差が、温暖化によって北極の気温が高まることにより小さくなり、ジェット気流の勢いが弱まるためと考えられています。

 また、大雨の増加は、海面水温の上昇により、蒸発する水蒸気の増加によるものです。海からのぼる水蒸気の増加は、台風がその勢力を強大化させたり、強い勢力を保ったまま日本に上陸したりということにも関係しています。

 気象は大変複雑なものであり、これまで温暖化と異常気象の関係は因果関係の立証が難しかったのですが、観測データを元にしたシミュレーションの技術向上によって、IPCCの第6次評価報告書は、異常気象の頻発が温暖化によるものである確度が高まったとしています。何より、皮肉なことですが「数十年に一度」のはずの異常気象の頻発により、私たちはまさに温暖化の猛威に直面しているのです。

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