発酵食品はすばらしい…けど過度に効能を謳い、衛生面にも問題ある「野良発酵」には要注意!

文=山田ノジル
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GettyImagesより

 微生物の作用で、風味・栄養・保存性を高める発酵食。人類の知恵、そして世界各地それぞれの土地の特徴をも感じることもできる、素晴らしい食文化です。素人でも家庭で作ることができるので、工場で大量生産される類の食品を嫌う人たちからも大人気。手作り発酵食品づくりを手軽に始められる市販品がたくさんあるなか、あえてのチャレンジ精神で挑む、なかなかにエクストリームな手作り発酵食が度々発生しています。

 手作り発酵食自体は、ごく一般的なものでしょう。ところが当連載でたびたび取り上げる「野良発酵」(と呼んでます)のなかには、それ、発酵でなく腐敗や……と思えるヤバげなものもありました。赤子ヨーグルトにマンモスジュース、そしてパラダイス酵母。ピンポイントでは取り上げていませんが、アボカド豆乳ヨーグルトもなかなかの魔界でしたなあ。

 野良発酵愛用者たちのあいだでは、右回りに混ぜるとエネルギーが抽入されるだの、発酵食は究極の引き寄せだの、スピリチュアルエッセンスもたっぷり抽入されています。食は哲学や思想、文化、習慣も色濃く反映される宇宙ですので、栄養面のみを語るのは無粋というものですが、衛生的にヤバげでかつ、あまりにもお作法に無理があるものにはツッコミたい。

 今回は、そんな野良発酵のラインナップに加えるべき新顔のご紹介です。

 物件名は「しゅわさかさん」。産みの親は「トレジャーじいさん」を名乗る人物のよう。しゅわさかさんとは「複合発酵ドリンク」と謳われた液体のことで、「国際プロジェクト」としてはじまり(自称かな)、2013年ごろから母親たちのあいだで口コミで広がりはじめたと説明されています。写真や動画で見ることができるそれは、黄色、もしくは茶色っぽい濁った液体。これを飲めと言われると、ちょっとひるむビジュアルです(パラダイス酵母で作った炭酸飲料のほうがだいぶ安心感ある)。

 しゅわさかさんはどうやって作られたのか? はじめは「国内のさまざまな乳酸菌」が加えられ、2013年からは「手に入るかぎりの薬草・薬木から、薬効成分を生みだす常住菌を採取して」投入。そうしたものに水・糖・ミネラルなどを与え、醗酵環境を整えて育てていくそうです。さらに仲間内で抽出した微生物をテイスティングして混ぜ合わせたり、「海外の微生物研究者たちが分けてくれた「免疫力を最適化する最強の乳酸菌」を加えたとも……。要は、よさげなものを「継ぎ足しのタレ」のごとく上からどんどんぶちこみ発酵させたよ! という感じでしょうか。

 そうしてできた「しゅわさかさん」は基本、無料で配られています。分けてもらった人は自分で増やし、積極的にどんどん人に広めよう! というのがルールのよう。増やし方は、人から分けてもらった「元」に、「湧き水・井戸水などの天然水」「生成されていない糖(おすすめは黒糖)」「天然塩をときどきひとつまみ」加え(大量生産の精製塩は体に毒なのでダメなんですってよ)、なるべく日のあたる暖かい場所に置き、酸っぱくかもされてきたら毎日飲むのだとか。日々のお世話はたくさん振って「今日も元気ね。ありがとう♡」と話しかけるともありました。

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しゅわさかさんとともに配布されている説明書。トレジャーじいさんのHPでは、イギリス語、スペイン語版もダウンロードできるようになっている。

 な~るほど。令和のヒッピー・トレジャーじいさんが、感性のままに作り上げた発酵ドリンク(的なもの)なのかな。ネーミングの由来は「しゅわしゅわ栄える微生物さん」という意味からきているようですが、私の目には「コンタミ飲料」※です。だってそれ、いろいろブッコミすぎてすでに何が入っているかよくわからないのでは?

※コンタミ=「コンタミネーション(contamination)」の略称。異物混入、あるいは異物混入があった製品を表す語である。特に主原料とは異なった物質が混入することを意味する場合が多い。

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