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男性の喫煙者は年々減っているが、女性の喫煙率は横ばいのまま――アンケート調査(5月23日~24日、エーテンラボ株式会社)によれば、コロナ禍によって「喫煙量が増加した」と答えた人の割合は、男性では21%、女性は38%と、女性は男性の約2倍になった。
男女別では、男性は「かなり増加した」13%、「少し増加した」8%。女性は「かなり増加した」が16%、「少し増加した」が22%となり、女性喫煙者ほど「喫煙量が増加した」との回答の割合が高かった。
新型コロナ流行前より喫煙量が増加した理由を聞くと、「気分転換のため」が35%、「孤独感や不安感、ストレスのため」が28%、「生活習慣の乱れのため」が21%、「在宅勤務によりいつでも吸える環境になった」が15%となった。
禁煙の予定について聞くと、「予定はない」が46%、「禁煙の意思はあるが時期は未定」が42%、「禁煙の予定がある、禁煙を始めている」が12%だった。禁煙する理由を聞くと、「健康のため」が44%で最も多く、次いで「金銭上の理由」が26%となった。
また、国立がん研究センターがん対策情報センターが行った「新型コロナウイルスとたばこに関するアンケート調査」(3月9日~16日)によれば、非喫煙者1000名に「新型コロナによるステイホーム・在宅勤務などで同居人の喫煙による受動喫煙は増えたか?」と尋ねたところ、10.6%が「増えている」と回答している。
女性の喫煙率でいちばん高い年代は40代
10月1日、段階的に増税されてきたタバコ税が再び引き上げられ、紙巻きタバコ1本あたりの税率が15.244円になる。金銭的な負担がさらに増えることで、喫煙習慣の見直しが進むかもしれない。
日本たばこ産業の「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は27.8%で、昭和40年以降のピーク時(同41年)の83.7%と比べて、約50年間で56ポイント減少したことになる。一方、成人女性の平均喫煙率は8.7%だ。これはピーク時より漸減しているものの、ほぼ横ばいだ。その喫煙率がいちばん高い年代は40代(13.6%)という。
医療保険を使った禁煙治療にアプリの処方がスタート
そもそも喫煙は、病気や死亡の原因の中で最も防ぎやすいものといわれている。禁煙することで、重篤な疾病や死亡を劇的に減らすことができる。
「禁煙研究」の第一人者である産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室の大和浩教授は、次のように禁煙の効用を次のように説く。
大和浩(やまと ひろし)
1986年、産業医科大学卒業。呼吸器内科でじん肺の治療を担当したことで作業環境改善の重要性を感じ、産業医学へ。粉じん・有機溶剤対策を応用して下方向に吸引する解剖台を開発。喫煙コーナーや喫煙室のデザインを通じて喫煙対策にのめり込み、自身の禁煙にも成功。「ニコチン依存症」から「タバコ対策依存症」となり、日本の空気の改善をライフワークとして発信中。
http://www.tobacco-control.jp/
禁煙は、社会全体の健康増進に寄与する最大のものと言っても過言ではありません。受動喫煙をなくし、喫煙者と非喫煙者の双方の健康の維持と莫大な保険財政の節約になります。
そこで近年、喫煙の本質を「ニコチン依存症」として「繰り返し治療することで完治できる慢性疾患」と捉え、禁煙治療を受けることができるように社会環境の整備が進められている。
禁煙治療の有効性や経済の効率性は、十分な科学的証拠があり、費用対効果に優れていることがわかっています。日本でも、医療や健診などの場での禁煙治療の受療を推奨する企業や自治体が増えてきました。
かつて禁煙治療は自費で行われてきましたが、2005年に日本循環器学会や日本肺癌学会などの禁煙に取り組む9学会が厚生労働省に保険適用の要望書を提出し、2006年度から保険適用がスタートしました。
日本では現在、多くの医療機関で禁煙治療が受けられます。2020年にはオンライン診療による禁煙治療も保険適用(初回・5回目は対面、初回のみ対面でアプリ活用など)になり、以前と比べて禁煙治療の受診が容易になりました。保険適用外なら、初診からオンラインでの受診も可能です。
仕事や家事、育児などで多忙な女性でも、保険を使いながら禁煙にトライしやすくなりました。
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