「年をとった“女子アナ”は見たくない」女性アナが直面するキャリアの壁について小島慶子さんに聞いた

文=雪代すみれ
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 女性がメインキャスターを務める番組は徐々に増えつつある。だが、「番組が女性キャスターにどのような役割を担わせているのかを見る必要がある」と小島さんは指摘する。

 例えば、女性にメインキャスターの肩書きはあっても、全体を和やかに回すことや華を添えることが主な役割で、番組の要は男性出演者が担っているのでは、年配男性キャスターの隣に女性をサブキャスターとして座らせているのと実質的には変わりません。

 それでは、見せかけの「女性活躍」です。本当に女性の実績や能力に信頼を置いたキャスティングなのか。本人の責任感や向上心に見合った、きちんとした役割を与えているか。成長の機会を与えているか。目先の視聴率稼ぎに利用するだけの起用になっていないか。

 視聴者も「女性がメインキャスターなんて、かっこいいね」と表面だけを見るのではなく、メインキャスターにその肩書きに見合うだけの役割が与えられているかを注意深く見ることが大事だと思います。女性が、見せかけの女性活躍に利用されないようにチェックする。これはテレビ画面の中でも、ビジネスや政治の世界でも同じことですね。(小島さん)

男性アナウンサーの“女子アナ”化

 「容姿」「若さ」「人気」——これらは“女子アナ”に求められてきたものであったが、「次第に、男性アナウンサーにも同じ傾向が見られるようになってきたようです」と小島さんは注視する。

 かつて男性アナウンサーは、若手時代は女性アナウンサーほど注目されず、入社直後から様々な番組に出演できる同世代の女性アナウンサーとの違いに悩む人も少なくありませんでした。ですが、最近は男性アナウンサーもルックスで人気がとれる人を積極的に採用する動きがあると聞きます。“女子アナ”と同じように、若い頃からバラエティ番組を中心に出演し、専門性を身につける機会がないまま使い捨てられてしまうのではと危惧する男性アナウンサーもいるそうです。(小島さん)

 テレビ業界に限らず、女性に対しては差別やハラスメントとして認識されつつあることが、「男性にはOK」となっている構造が様々な場面で散見される。私たちはどのようなことに注意すべきなのだろうか。

 容姿の整った若い男性ばかり持て囃す“イケメン消費”は、ジェンダーに関するイシューに敏感な女性でも無自覚にやってしまいがちです。中高年男性を「ハゲ」「デブ」「臭い」などとけなす風潮もありますね。男同士の非モテや童貞いじり、ブサイクいじりも。男性は強者だから雑に扱ってもいい、男のくせにからかわれたぐらいで怒るなというのは、男らしさの押し付けに当たります。私もかつてはそういう風潮に染まっていました。

 男性が主流を占める社会では、女性を容姿や年齢で品定めし、性的なモノのように扱うことが常態化してきました。女性差別にNOと声を上げる人がそれを少しずつ変えてきましたが、当然ながら、それは女性だけを特別扱いしろということではなく、全ての人は人として平等に扱われるべきであるという人権尊重の観点から差別に抗議したのです。どのようなジェンダーの人でも、容姿や年齢でジャッジするべきではないという認識を共有することが大事ですね。(小島さん)

 容姿への言及について批判すると、「ならファッションモデルもなくした方がいいのか」といった極端な意見が飛んでくることもある。この点、小島さんは「容姿が重視される職業を否定するわけではありません」と強調する。

 メディアなどを通じて美の基準が画一化されると、人間の“あるべき容姿”が規定され、そこから外れた人を劣っているとみなすようになりかねません。それが差別や偏見を生んできました。だから今、多様な美を讃えようという動きが、ファッションの世界でも主流化していますよね。

 様々な職業がある中で、モデルやタレントのように容姿の美しさが求められる職業もあります。大事なのはその「美」が画一的な価値観の押し付けにならないようにすることです。メディアは文化を作ると言われます。多くの人の目に触れる映像メディアで、この社会に生きるさまざまな属性の人たちの存在が肯定的に可視化されることが大事です。

 洋の東西を問わず、メディアは長らく圧倒的な男性優位の業界でした。コンテンツにはその価値観が色濃く反映されています。メディアに登場する女性は若く美しくセクシーで、鑑賞物として消費される傾向がありました。メディアを通じて「女性の価値は、若さと容姿」という社会通念が強化されたと言えるでしょう。先述したような男性に対する思い込みも同様です。(小島さん)

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