「年をとった“女子アナ”は見たくない」女性アナが直面するキャリアの壁について小島慶子さんに聞いた

文=雪代すみれ
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私たちの声を届けることで変わるかもしれない

 なぜ、テレビ番組の出演者にも多様性が必要なのか。「人は、テレビには世の中が映っていると考えます。無意識のうちに、テレビの中の“普通”が、社会の“普通”だと思ってしまう。テレビで見たことを実生活で再現することも。人気芸人の喋り方を真似したりなんて、よくありますよね。また、実生活では身近ではない人や物事にも、テレビで繰り返し目にすることで見慣れていきます」と小島さんは指摘する。

 視聴者は画面で見慣れた光景を、無意識のうちに「あれが普通」と考えるようになります。女らしさ、男らしさなど、メディアには既存の「らしさ」を強化・再生産する働きもあります。放送局のアナウンサーは、いわばテレビに映るサラリーマン。視聴者がタレントよりも身近に感じやすいため、女性アナウンサーは職場や家庭での女性のロールモデルになりやすい。好き嫌いに関わらず、あれが模範的な女性像なのだろうと思ってしまう。女性アナの大半が若く、男性に対して従属的な役割だと、女性はそうあるべきと印象付けられます。

 また視聴者は、自分と同じ属性の人がポジティブな役割で、あるいは当たり前の存在としてテレビに出演しているのを見ると「自分は社会に受け入れられている」と感じます。非主流の人や少数者がテレビで活躍することには、そうした属性を持つ人たちを社会の一員として可視化する意味合いもあります。

 ただ映っていればいいということではありません。ある属性が、映像の中でどういう扱い方をされているかが重要なポイントとなります。テレビやYouTubeなど多くの人が見る映像メディアは、態度のモデルとなるからです。視聴者は、こういう場面ではこんな態度が望ましいのだな! と映像を見て学習し、現実世界で再現します。

 それには弊害もあります。例えば、相手の容姿や属性を揶揄う「いじり」。テレビの世界では気の利いたトーク術や話芸とみなされていますが、視聴者が実生活で再現すると、ハラスメントやいじめになり得ます。画面の中で、容姿や属性を貶された人がおどけて笑いを取ったり、「いじってもらって有り難いです」と発言して周囲から好意的に評価されるのを繰り返し見るうちに、それが実生活でハラスメントやいじめを受けたときの「あるべき態度」だと学習してしまう。いじられて怒るなんて野暮だ、洒落だと思ってむしろ感謝しなくてはと。

 私もかつて「人のことをいじっていいんだ」「いじられたら『おいしい』と思わなくてはいけないんだ」と思っていました。子どもも大人も、「いじり」をコミュニケーションの才能のように思っている人が大半ではないでしょうか。けれど、日本でもここ数年でハラスメントに関する知識が広まり、法整備も進んでいます。人権への配慮を欠いた動画や広告、テレビ番組が「炎上」するのは、人々の意識が変わっていることの表れと言えるでしょう。(小島さん)

 最後に、私たち視聴者ができることについてコメントをいただいた。

 あなたの声をテレビに届けてください! SNSのほか、直接放送局に電話やメールをするのも効果的です。「視聴者の声なんてお客様センター止まりで、制作現場には届かないだろう」と思うかもしれないですが、意外としっかり届いているんですよ。視聴者の声に真面目に耳を傾ける制作者もたくさんいますから、ぜひトライしてみてください。

 ダメ出しも大事ですが、褒めることはさらに効果的です。ジェンダーに関して言えば、女性アナウンサーの“女子アナ”扱いに異を唱えるだけでなく、ジェンダーステレオタイプを強化しないように配慮した表現に「いいね!」を表明したり、セクハラ演出に「NO」を示した出演者への応援コメントを寄せたりして、ディレクターや出演者を励ますことができます。褒められると、番組制作者は「もっとそういう表現を増やそう」と考えるようになります。

 テレビを作っている人の大半は、どうしたら視聴者を楽しませることができるだろうと真面目に考えています。ただ、テレビ黄金時代の成功体験が強すぎて、なかなか時代についていけていないところもあります。視聴者の声によって、テレビ局の人の価値観がアップデートされることは大いにあり得るので、ぜひみなさんの声を届けてください。(小島さん)

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