せやろがいおじさんが過去のミソジニーを自省する理由 「間違いを認める方がよっぽど価値がある」

文=ヒオカ
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せやろがいおじさん

 お笑いコンビ「リップサービス」として活動する「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さん。YouTubeやTwitterの動画では政治や社会問題について、掘り下げ、鋭く指摘し、問題提起しています。最近は性的同意についての動画も投稿するなど、ジェンダーの問題にも切り込み話題を呼んでいます。

 そんなせやろがいおじさんに、今回は男性がジェンダーやフェミニズムについて考えることの意義についてお話を伺いました。

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榎森耕助・せやろがいおじさん
2007年にお笑いコンビ「リップサービス」を結成し、ツッコミ担当として沖縄で活動する。2017年より「せやろがいおじさん」としてTwitterやYouTubeでの発信をスタート。著書に『せやろがい! ではおさまらない – 僕が今、伝えたいこと聞いてくれへんか?』(ワニブックス)

Twitter:@emorikousuke

YouTubeチャンネル:ワラしがみ

――お笑いコンビリップサービスとして活動する一方、2017年よりせやろがいおじさんとして活動されていますよね。昨年6月に公開されたYouTube動画の中で、自分の中にミソジニー(女性嫌悪・女性蔑視)な部分があったと振り返っていらっしゃったのが印象的でした。自分の中のミソジニーに気づいたキッカケについて教えてください。

 以前、SNSに写真や動画を上げてる女性が、バキバキに加工していて、実際会ったら全然違うブスが来たーみたいな動画を作ったことがありました。

 その動画に対して、ミソジニー性があるんじゃないかってコメントが来たんです。最初は女性のことを馬鹿にする気持ちはないし、面白いネタとしてやってるから、なんでそんなこと言われなあかんねんって思ってしまって。ミソジニーという言葉すら知らなかったので、最初は知らない言葉で怒られている怖さみたいなものもありました。

 でも、凄く怒られてるから、とにかく火消しをしたかった。「馬鹿にしたり傷つけたりするつもりは無かったけど、あなたがそう感じたなら僕にも悪いところあったかも、この件終わりね」って。そしたらさらに怒らせてしまって……。今考えれば当然のことです。典型的なダメ謝罪でした。自分のどこが悪いか分かって無いのに、幕引きのための謝罪だったので。

 こんなに指摘されるのなんでなんって、なんかあるんだろうなと思って考えてみたんです。そこで改めて自分の言動から、内面を振り返りましたね。

 そこで気づいたことがありました。なんで自分は女性だけをことさらにやり玉にあげてしまうのか。女性に対して、からかったり弄ったりするのがおもしろいという感覚が自分の中にあったんだろうなと。これが自分の中のミソジニー性かあと。女性蔑視が自分の中にもある、と気づかされました。

――ご自身の中のミソジニーに気づいて、どのようなことをされたんですか?

 指摘してくれた人が、こういうものを参考にしてくださいと色々教えてくれたんです。それを見たりしました。あとは、性暴力の当事者団体Springさんにもお話を聞いて、ジェンダーの問題を学んでいます。

 社会の中に男女の不均衡がある。男性は知らず知らずのうちに女性を怖がらせていたり、特権的な立場から女性を踏みつけていることはあるんだなあと。そして自分の中にある問題だと気付くきっかけになり、社会の男女の不均衡からくる抑圧と、自分が抱えている問題とが繋がったんです。

――最近は性的同意や二次被害(セカンドレイプ)についても声を上げていらっしゃいますが、それについても内省する点はあったりしますか?

 同意があやふやなまま性行為にいたってしまった経験のある人って結構いると思うんです。

 性的同意についての動画を出したあと、色々なオンラインイベントに出させていただいたんですけど、そこで自分の経験を話したんです。当時お付き合いしてた彼女に、性的同意をうやむやにしてしまったことがありましたと。本当にダメなことで、良くないことだったと振り返りました。その場にいたのは全員女性だったんですが、自省的に話したときに、追求して断罪する人はいませんでした。むしろ、振り返って話せるのっていいですね、と言ってもらえて。

――自分のこういうところがよくなかった、と自省してそれを公表するのって、誰でもできることではないと思います。

 過去の過ちを無かったことにして認めないよりも、過ちは過ちとして、いけないことをした、あれはよくかったというのを表明していくことの方がよっぽど価値があるし、世の中を良くしていく波が伝播していくんじゃないかなと思います。自分が過去にした加害をなかったことにするのではなく、むしろ反省していくほうがいい。

 セカンドレイプは男性のみならず、女性も結構しているのを見かけます。女性の場合、私は自衛してる。だからしてない人が迂闊なんでしょというロジック。

 印象的だったのが、ある現場でメイクさんが、テレビで流れる女性の性被害のニュースを見ながら「でもさ、男の人と二人で飲みに出かけるのはおかしいよね」と、まるで被害者の行動にも原因があるかのような言い方をしたんです。自分はこれだけ自己防衛をして気を付けているのにやってないこの人が悪い、自己責任だと。

 でも、そもそも何であなたはそんなに自己防衛をしなくちゃいけないんですかって思うんです。あなたはどんな恰好でどんなところに行ってもいいはずなのに、他人の身体を侵害してくる人がいるからそうせざるを得ないわけで。被害者に落ち度はない。そこは、男女問わず広められたらなと思います。

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