自民党政権では、選択的夫婦別姓も同性婚も実現しない

文=平河エリ
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写真:代表撮影/ロイター/アフロ

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連載「議会は踊る」

 自民党総裁選が佳境となっている。

 最終盤で野田聖子自民党幹事長代行が推薦人確保に成功し、河野太郎ワクチン担当大臣、岸田文雄元外務大臣、高市早苗元総務大臣を含めた四人の選挙戦がメディアで盛んに報じられているのは、みなさんもご存知のとおりだ。

 自民党内の選挙とはいえ、自民党総裁はすぐに菅義偉総理大臣の後任となり、日本国の総理大臣になる。

 日本の行政のトップを決める選挙である以上、メディアが注目するのは当然のことだし、自民党総裁選において有権者ではないいち国民として、私自身も注目している。

 この総裁選において、話題のひとつになっているのは「選択的夫婦別姓」と「同性婚」である。

 日本では遅々として進まないジェンダー関連の施策の一つとして、総裁選においてもやれ河野さんは賛成だ、野田さんは推進派だ、と取り上げられている。

 しかし、重要なことは、個人として自由民主党総裁が○○の政策に賛成かどうか、ではなく、自由民主党の政権公約としてこの2つの政策が取り上げられるかどうかだ。

 そして、制度推進を狙う方々にとって残念ながら、公約として自由民主党がこれらの政策を掲げることはほとんどないと言ってもいいだろう。

 自民党は実は「決められない政党」である。その名残はそもそも、自民党が小選挙区制を前提にしている政党ではなく、中選挙区制を前提にした政党だからだ。

 小選挙区制の議院内閣制(ウエストミンスター型モデルと言ってもいいが)においては、マニフェスト(政権公約)が重要視される。「我々は有権者から付託を受ければこの政策を実現しますよ」ということを約束し、それを党議拘束で縛ることによって、確実なものにする。

 ところが、中選挙区制は、一つの選挙区に同一政党から複数人が立候補する。すなわち、政党がどのような公約を掲げるかではなく、その人がどのような意見を持っているかを重視する。

 そうして自民党は、世にも奇怪な「政策なき政党」となった。

 総裁選を見ればわかるが、野田聖子氏と高市早苗氏は、およそ諸外国の議会制民主主義を取る政党であれば、同一政党にいることがおかしいほど、政策は離れている。

 それは結局のところ、自民党がどのようなスタンスの政治家も受け入れる、「政策なき政党」であったからこそであり、とりわけジェンダーや価値観に関わることは党内の隔たりが大きい。

 懐が深いといえば聞こえはいいかもしれないが、実態としては単に決められずに放置しているだけであり、党議拘束というものだけが中途半端に存在する以上、党内で意見の一致を見なかったものは単に店晒しにされるだけだ。

 どんなに「個人の考え」として選択的夫婦別姓や同性婚の実現を訴えたとしても、最終的に党内を説得し、公約にこぎつけなくては、「言うだけ番長」のそしりを免れないのである。

 小選挙区のシステムを取った議院内閣制というのは、過半数を取った政党が有権者に約束したことを実現することを前提に機能している。

 逆に言えば、その発言が本当に拘束力を持ちうるのかを慎重に有権者は、見なくてはいけない。

 重ねていうが、これは日本の総理大臣を決める選挙である以上、しっかりと国民は注視する必要がある。

 同時に、発言の一つ一つがしっかりと公約に組み込まれるかについて、我々がしっかり監視する必要があるだろう。

 自民党政権で選択的夫婦別姓や同性婚は実現するのか。

 政治生命をかけ、総選挙の公約に掲げ、公約に賛成しない人は公認から外す、という小泉純一郎総理大臣ばりの決断ができれば別だが、そんな人が今の自民党にいるとは考えづらい。

 つまりは、またぞろ「店晒し」になる公算が高いと言えるだろう。

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