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■小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A
Q.いったい「免疫」ってなんなの? 何かで高めることができるなら教えてください。
A.免疫を高める方法や食べ物はありません。おかしな噂に騙されないようにしましょう。
よく「薄着でいて免疫を高めよう」「○○(食べ物)で免疫を高めるといい」「感染症にかかると免疫が高まる(だから感染したほうがいい)」などという説を耳にします。本当に免疫を高めることはできるのでしょうか? そうしたほうがいいでしょうか?
そもそも免疫とは何かとというと、身体に入ってきた自分以外のものーーつまりウイルスや細菌といった病原菌などの「異物」を認識して排除する働きのことを言います。この免疫には、簡単に言うと、赤ちゃんがお母さんの胎盤や母乳からわけてもらう「受動免疫」、もともと身体にそなわっている「自然免疫」、様々な病気になりながら備えていく「獲得免疫」があります。
このうち、お母さんからもらう受動免疫は、生後6か月頃にはなくなります。だから、生後6か月以降は様々な感染症などにかかる赤ちゃんが増えるのです。
一方の獲得免疫は、様々な病気になりながら獲得していくものですが、あくまでも病気になった際に結果的に「再び同じ病気にかかりにくくなる」という仕組みであり、免疫をつけるために「病気になる」必要はありません。目的は「病気にかからないこと」であって、「免疫を獲得すること」ではないからです。多くの病気は年齢が小さいほど重症化しやすいことを考えると、小さいうちにかからないほうがいいといえます。
新型コロナウイルスの流行によって風邪をひく子どもが減り、この獲得免疫ができないのではと心配される親御さんもいますが、以下にも書いたように気にしなくても大丈夫です。
感染対策で“普通の風邪”が激減。子どものうちに風邪をひかないと「免疫力が育たない」は本当?
https://www.askdoctors.jp/articles/201318
また、薄着で過ごしたからといって、免疫が高まるということもありません。同様に何かを食べても、免疫を高くすることはできないのです。今のところ「免疫を高める」と証明されている方法や食品はありませんから、そういったことを宣伝している場合は眉唾だと思ったほうがいいでしょう。それよりも手洗い(消毒)やマスクなどの感染対策をし、きちんと適切なワクチンを接種することが大切です。
<今回のポイント>
○「受動免疫」「自然免疫」「獲得免疫」がある
○免疫を高めるために風邪を引く必要はない
○免疫を高める方法や食べ物などは眉唾

森戸やすみ『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK ~いつものケアから不調のときの対処法まで』(内外出版社)