宋美玄先生に聞く「妊娠中に薬を飲んではダメ? 近くの内科で風邪薬を出してもらえませんでした」

文=宋美玄
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Gettyimagesより

Q.妊娠中に薬を飲んではダメ? 近くの内科で風邪薬を出してもらえませんでした。

A.妊娠中の薬の摂取は慎重にすべきですが、 何もかもダメなわけではありません。

 確かに、妊娠中に飲んだり貼ったりしてはいけない薬はあります。また可能なら、あまり薬を多用しないほうがいいでしょう。ただし、持病の薬を自己判断でやめるのは危険なので絶対にやめてください。

 たとえば、糖尿病や高血圧の薬などを勝手にやめるなどすると、命にかかわる場合もあるのは想像に難くないでしょう。また、たとえば、てんかんを抑える「バルブロ酸」という薬は胎児に奇形が出る恐れがあります。でも薬を飲まないことで、低酸素状態になるてんかんの発作がたくさん起こると、赤ちゃんの脳に悪影響を及ぼることがあるのです。ですから、持病がある場合は必ず専門医に相談してメリットとデメリットを比較してもらい、薬を「変更する」「やめる」「続ける」のどれかを選ぶ必要があります。疑問点があれば、ぜひ聞いてみてください。

 ところが、残念ながら病院や医師によっては、妊婦さんや授乳中の人には薬を出さないという方針のところもあります。本来、妊婦さんにとって理想的なのは、持病の主治医と産婦人科の主治医が連携して治療することです。持病の主治医に、医師同士で相談してもらえるようにお願いしてみましょう。難しいようなら、かかりつけの産婦人科で相談してみてください。決して放置はしないようにしましょう。

 市販薬については、風邪薬やアレルギーの薬などはだいたい問題ありません。また吸入薬や塗り薬、湿布などの貼り薬は、飲み薬に比べれば体内に吸収される量が少ないので、だいたいは使えます。ただし、解熱鎮痛薬はアセトアミノフェン配合のもの、湿布はサルチル酸メチル配合のものにしてください。一部の解熱鎮痛薬や湿布に含まれている非ステロイド性抗炎症薬には、量にもよりますが、胎児の動脈管を閉塞させ、突然死を引き起こすリスクがあるためです。市販薬に関しては薬剤師に、処方薬については医師と薬剤師に相談してくださいね。

 また、妊娠・授乳期の服薬に関しては、国立成育医療研究センターの情報機関『妊娠と薬情報センター』のサイトを参考にしましょう。私の書いた『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』(内外出版社)にも少し詳しく掲載しています。ぜひ読んでみてください。

国立成育医療研究センター『妊娠と薬情報センター』
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/

<今回のポイント>

○妊娠中に飲んではいけない薬はある
○持病の薬を勝手にやめてはいけない
○市販薬にも注意が必要なものもある

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