SDGs・D&Iを軸にした「エシカル就活」は産業界にムーブメントを起こす 学生が企業を選ぶ時代に

文=雪代すみれ
【この記事のキーワード】

男性10人に声をかけたら、女性10人にも声をかける

——貴社の社員は2021年9月現在、勝見さん含め9名で、そのうち3名が女性ですよね。社内のジェンダーバランスは意識されていますか。

 「絶対に30%以上女性を入れよう」と意識したわけではないのですが、最初は男性に偏っており、「このままではマズい」とは思っていました。実際、女性が増えて意見が多様になり、生産性も高くなったと感じます。

 フェムテックのように女性がターゲットのビジネスを除き、スタートアップは依然として男性が多く男性中心社会です。私自身も周囲には男性が多いため、新しくメンバーを探そうと思ったとき、何も考えなければ声をかける母数は自然と男性が多くなります。ですので、今は10人男性に声をかけたら、友人に紹介をお願いしてでも女性10人に声をかけるよう意識しています。

——素晴らしい意識ですね。1998年生まれの勝見さんからそのようなお言葉が聞けるのは、日本のこれからに希望が持てます。

 私も最初は「男の方が仕事ができる」といったバイアスや体育会系マインドを持っていましたが、少しずつ考え方が変わりました。でもまだアンコンシャス・バイアスはあると思っています。

 また同世代でも「女性は感情的で、スタートアップは意思決定をしなければならないことが多いから、女性がいると遅くなる」と差別的なことを言ってる人はいますし、私は「男女比50:50がファーストステップ」と考えているのですが、男性だけでなく女性から「女性に下駄を履かせるな」と言われたこともあります。

 でも男女の格差において、女性はマイナスの状態からスタートしており、下駄以前にスタート地点が平等ではありません。事実、「実力で判断する」と言い続けた日本社会が30年間D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が進まなく、「202030(※)」も達成できず、「2020年代の可能な限り早期」と曖昧な形で先延ばしになりました。まず、50:50にしてから実力の話をすべきだと考えています。

※政府が掲げていた「2020年までに指導的地位の女性を30%にする」という目標。

 スタートアップ企業ですと、男女比が9:1のような企業も珍しくないですが、すぐに改善できなくとも、違和感を覚えないのはマズいと思います。弊社の6:3でもヤバいと思っているんです。特に、エンジニア職に男性しかいないことは課題と捉えています。「エシカル就活」の利用者は7割が女性ですが、プロダクトの作り手に男性しかいないのは偏っていますよね。

 一方で、そもそも日本は女性のエンジニアが少ないので、探すのに苦労しているという事情もあります。採用自体に工数がかかるうえ、先ほどお話したように分母を揃える方法では、男性のエンジニアが目の前に5人いるのに、そこから女性のエンジニアを5人探すとなると、さらに工数がかかる。でもそれをせずに、目の前にいる男性だけを採用し続けていると、いつまで経っても組織は強くなりません。

「エシカル就活」で変革を

——現在の就活システムに思うことはありますか。

 全員が社会課題を軸に就活すべきとは言いませんが、就活シーズンになったときに「とりあえず大企業に行けばいい」といった考えには賛同できません。転職は悪いことではありませんが、ミスマッチは起きやすくなりますし、就活以前に「やりたいこと」について考える機会が必要です。

 現在、早稲田・慶応・ICUと業務連携しているのですが、早稲田大学からは「1・2年生がキャリアを考えられるようにしてください」とのミッションをいただいています。大学側からも今のキャリア教育を変えなくてはいけない、という意識を感じます。

 また新卒一括採用のシステムにも変革を起こしたいです。新卒一括採用は企業側にとって都合の良い制度であって、学生のためのシステムではありません。

 私自身、髪を染めていますし、髭を生やしていますが、古いしきたりに縛られない企業にエシカル就活に参入していただきたいです。「リクルートスーツ禁止」くらいのムーブメントを作っていきたいですね。

——最後に、今後の展望についてお伺いします。

 短期的にはまだまだリーチできていない企業がたくさんあるので、「エシカル就活」に参加する企業をもっと増やしたいです。

 また、企業の意識改革も課題に感じています。外資系企業は「変わらないとヤバい」という感覚の人が多く、商談の一言目が「ありがとうございます。ぜひ教えてください」と始まります。

 一方で、日本企業はSDGsやD&Iを「オプション」のように捉えているところも多く、「優秀な人はどれくらい取れるのか」「費用対効果はどれくらいか」と聞かれることが珍しくありません。企業側が価値観のトレンドやパラダイムシフトをキャッチアップできておらず、「自分たちが変わらないといけない」という危機感がなく、今後さらに訴求する必要があると感じています。

 もちろん、「エシカル就活」は優秀な学生の採用につながるプラットフォームではあるのですが、「企業が変わるきっかけ」とも捉えていただきたいです。「社会課題の解決を軸にした就職活動」は5年後には間違いなくニューノーマルになっていると思います。

 既にグローバルでは変化が起きていて、ドイツでは「エシカル就活」のようなサービスがいくつもあるんです。「エシカル就活の価値観を取り入れていない企業は淘汰される」「人材をとれない」そういった改革を起こしたいですね。

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