特別養子縁組でも、普通の母と同様に母性愛が炸裂! でも、ひとつ違うところも。

文=うさぎママ
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Gettyimagesより

前回までのあらすじ

 特別養子縁組により、運命の我が子に出会うことができた著者夫婦。産みの母、1か月養育してくれた方、児童相談所の方に感謝しますが、育児は思った以上に大変。しかし、それ以上の幸せを感じ、周囲の人にも隠すことなく報告しました。

第2章 ようこそ!アン

 特別養子縁組によって、出産することなく母親になった私ですが、普通のお母さんと同じように母性愛もしっかりと芽生えていました。

 最初に気づいたのは、アンの3か月健診の日でした。アンは1か月健診をすませてから我が家に来たので、おおやけの場につれていくのは初めて。健診会場には30人ほどの赤ちゃんがいました。「アンの未来のお友だちだ〜」と思いながら、私は一人ひとりを観察して本気でこう思ったんです。しかも、ほぼ一瞬で。

「この中で、うちのアンがいちばんかわいい!!!」

 いえ、どこかで理性はささやいていました。「そんなはずがない」「みんなかわいい」「比べるのはおかしい」って。でも、私の感情はあくまでも恥じることなく、ためらうことなく「アンがいちばん!」と言い張って、一歩もひくことがないんです。そして実感しました。「これこそが母性愛だ!」と。そして、次の瞬間、震え上がりました。こわい……この感情に身を委ねる快感って、最高に幸せ。でもダメだ、このままじゃダメになってしまう。「うちの子に限って症候群」の初期段階? 親バカはいいけど、子どもをスポイルしてしまう愚かな親にはなりたくない。母性愛って怖い。でも必要悪?

 その夜、夫に「困ったことだけど……」と話したところ、「そりゃあアンがいちばんかわいいに決まってる!」と断言。私の心配はふたりぶんになりました。夫にも父性愛が芽生えていたというか、立派な親バカになっていたのです。

 また、これは夫も驚いていましたが、私はアンのためなら生活習慣も変えられました。常夜灯をつけたがる夫と本気でけんかをするほど、部屋の電気は全部消さないと寝られなかった私(これだけは譲れず。他のことは夫のいいなりでした、だぶん)。ところが、アンと寝るときには安全のために枕元にあかりをつけたまま、平気で眠れたんです。小さなことだけど、私には大きな驚きでした。

 また同時に、やはり普通のママとの感じ方の違いにも気がつきました。アンが来て81日目のこと。「今日から、うちに来るまでにアンが過ごした日数よりも、うちで過ごした日数のほうが逆転して多くなるんだ!」と思い、なんだかうれしくなって、空に風に太陽にまで感謝の気持ちがわいてウキウキとした1日を過ごしました。十月十日、我が子をお腹で育み、普通に出産して母になっていたら、こんなふうに思うことはなかったでしょう。同じく養子縁組をした方には共感してもらえるかも? それともこんなにちまちまと考えたのは私だけかも? 

 実母が退院したあとの助産院での日々、母親ではない人からおっぱいを飲ませてもらった1か月……。何も知らない世界で、複雑な事情もわからずにすくすくと育ったアン。

 寂しいとか悲しいとかは感じることもなかったでしょうが、この胸に小さなアンを抱いたとき、「これからは、私たちがきっと守っていくよ」とささやいたものです。「待ちこがれた家族のもとに生まれた赤ちゃんと比べても、決して寂しい思いはさせない! これまでの日々を帳消しにするんだ!」なんて、今思えばかなり感傷的になって、無駄なほど力が入っていた私。アンは赤ちゃんだったけど、何歳かになってから家に迎えた養親さんは特にそれまでのことに思いを馳せるのではと思ったりもしました。

 子どものためならなんでもできるっていう母性愛の現れ自体がすごくうれしいし、そもそもアンが泣くことさえ感無量でした。アンが「遠慮せず泣いてくれる」のですからね。抱っこしていて、ちっちゃなアンの手が私の服の袖をぎゅっと握ったときは、胸がふるえました。

ーーアンが頼ってくれてる! この私を!

 あのときのアンのかわいさ、うれしさは今も忘れられません。産後、子どものあまりのかわいさに「あの大恋愛はなんだったの?」と聞きたくなるほど、「夫より子ども」派、「妻より子ども」派になる人も多いようですね。私はアンに出会うまで「自分より夫」派だったので、夫とあまり言い争いをすることもなく12年を暮らしてきました。ところが、遅く帰宅した夫がアンを起こそうとしたときに怒ってしまい、自分が「夫より子ども」派に宗旨がえしたことにも気づいたのでした。(続く)

うさぎからの手紙

養子を迎えるかどうか迷っている方へ

 私は今まで、迷っている養子縁組プレママたちに縁組をすすめることはしてきませんでした。親子の仲が100%うまくいくことは保証できませんものね。でも、私にとってアンの母親になれたことは、ものすごくラッキーで大きな出来事でした。だから本音をいえば、迷っている人にはこう伝えたいと思っています。

 出産と同じで、養子縁組にだって適齢期はあります。重いつわり(つらい待機期間)も、産みの苦しみ(きつい真実告知)もあります。必ずしも子どもに出会えるとは限らないところも同じ。だからといって、ずっと迷っていて遅くなると、取り返しがつきません。こでも出産と同じですよね。

 もしかしたら、あなたの愛情を待っている赤ちゃんがいるかもしれません。そして、その赤ちゃんは、あなたの人生をふんわりと甘く、しょっぱく、ときに苦く、あるいはまろやかに味わい深くしてくれるはずです。

 いちばんいいのは、自分で産んだ赤ちゃんを育てることかもしれません。

 でも、次にいいのは、誰かが産んだ赤ちゃんを育てることではないでしょうか?

 シンプルですが、私が伝えたいことは、この2行で十分にわかっていただけると思います。子育ての楽しさと苦しさを味わうために、特別養子縁組の希望を出すなど、第一歩を踏み出してみませんか?

次回更新は10月11日(月)です。

特別養子縁組について

 特別養子縁組は、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、親子になりました。

厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html

※この連載は、書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです。

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