子育てのゴールは「ひとりで楽しく暮らせる力」を習得させること 千葉リョウコ×御手洗直子 対談

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勉強が得意不得意じゃなくて、教え方が合っているかどうか

千葉:2号さんはどういう感じ? まだ勉強はしないか……

御手洗:むすめの勉強時間に一緒にやってます。3人座れるベンチで、私の左右にむすめたちが座って。自分から「私もやりたい」って来るんですよ。ただ、4歳に2年生と同じように1時間やらせようと思っているわけではないので、一緒にはじめて好きな時間まで一緒にやってるという感じです。

千葉:いま4歳で、なにをやってるんですか?

御手洗:カタカナ表をうつしたり、ですね。2号は「頭がいいですね」。覚える速さがとても速いです。上に姉がいることも大きいのかな。文字にふれるようになったのが上のむすめより3年早いですし、機会も多い。上のむすめは1年生でカタカナがやっと書けるぐらいで、学校と同じくらいか、むしろ遅いペースで習得しましたが、年中の2号はすでにカタカナ読み書きができて。

千葉:えっ、書きも……?

御手洗:書きもできる! そして、漢字も読めます。

千葉:す、すごい~~!

御手洗:これも2号の個性ですね。絵を描いたり、文字を書くことに興味がある。長女はどちらかというと読み書きには興味がなく、運動が好きでした。

千葉:兄弟で興味の方向が全然違うのっておもしろいですよね。文字の読み書きひとつとっても、フユは「もっと書けるようになりたい」と発達性読み書き障害だとわかった小6から高校3年生までトレーニングを継続したけれど、ナツはあっさりと「私はトレーニングしなくていいかなー。漢字書く必要あるときはスマホ見ればいいし!」と言い放ちましたからね。読み書きは苦手だけど、勉強そのものができないんじゃなくて、家庭教師には「文章問題ふつうに解かせたらできないけれど、文章を読み上げて口頭で答えさせればほぼ全問正解できる」と驚かれました。

御手洗:ですよね~。教え方で覚え方が変わるというのは、むすめで実感したので、学校で成績がいいのも悪いのも勉強が得意不得意なんじゃなくて、学校の教え方にあってるかあってないかというところが大きいと思います。

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(御手洗直子『さらにつっこみが止まらない育児日記』/ベネッセコーポレーション刊 p.80,83より)

子育てのゴールは「人とのかかわりを持ちつつ、ひとりでなんでもできる力」を身に付けさせること

御手洗:私の母が教育ママだっただけじゃなくて、私自身も勉強が好きでした。勉強した先の、たとえばテストで100点をとるとかそういう達成感が好きで。ゲーム要素的にもいい点数をとることが楽しかったんです。中学生までは毎日2時間の勉強が苦じゃなくできていました。

千葉:ところが……

御手洗:高校1年生で、受験が終わった! 自由の身だ! 同人誌はじめよう!! となった結果、高1の終わりには進級会議にかけられるような状態に……

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(御手洗直子『腐女子になると、人生こうなる!~底~』/一迅社刊 p.96より)

千葉:そこまで振りきれるメンタルがすごい!!

御手洗:勉強やっていた2時間が全部原稿の時間になるんですよ。勉強は覚え込み、積み上げだからやってる時間だけ成果が出る……ところが原稿をやっているとその時間がなくなり、なんなら授業中もネームやプロットをやってると、今まで授業時間を合わせて毎日8時間とかあった勉強時間が0になるんですよ。テスト前日に地方の即売会に行って夜行バスで帰ってきて東京駅からそのまま学校へテストを受けに行く……とかね。テストの単元もわかってなくて、テストを受けて知るという感じでした。

千葉:いや~私も同じころに同人活動していましたが、メンタルが弱いのでテスト勉強だけはしていました。思い切りがよすぎる!
御手洗:そのまま専門学校に行って、漫画を描き続け、一度も就職しないまま今に至るので、娘たちが大学行かないとか就活しないって言っても1ミリも反対できないですね……

千葉:ああそれはわかります。私も大学卒業後はぽーんと東京に出てきて、アイドルおっかけしながら漫画家のアシスタントから入ったので、絵を描いてばかりのナツを見ても、自分で手に職をつけるための勉強をしているなら見守って応援しようと思います。

御手洗:自分自身の勉強の知識が中学生で止まっているので、今はこうして勉強を見ていますが、高校以上はサポートできないですね。将来役立ちそうなもので唯一教えられるのはクリスタ(※)の技術くらいですかね。これからの時代、就職できるひとはもちろんそこで生きていくのが安全だろうけど、それが難しければ自分でなにかを立てて個人でやっていくのもアリだと思うんです。うまい背景を描けるプロのアシスタントは需要があるので、そういう道でもいいよな~と思います。

(※)クリップスタジオペイントの略…漫画・イラストなどの作品制作アプリのこと。

千葉:コロナ禍で働き方は大きく変わりましたもんね。職を失ったひとも多い。なかなか外に出られない。となると、手に職を持っているのは強いのかもしれません。ナツはいろんな特性の影響で、社会で生活するのが難しそうなところがあります。もちろんできるなら一度就職して会社勤めもやってみてほしいけれど、親から見ても難しそう。今すでにイラストやライブ2Dなんかは私より上手なので、あとは「こういう道があるよ」と教えてあげたいですね。会社に就職することがすべてじゃない。

御手洗:個人でやっていくことができる、というのは私も子どもたちに教えてあげたいですね。私たちも個人でマンガを描いてるわけですが、今はいろいろ幅広くできますから。

千葉:フユくんもがんばってますよ。家を出て、ひとり暮らしをしていますが、仕送りもなしに生活できています。どうしても困ったら言いなさいと言っているけれど……自分ひとりのほうが楽なんでしょうね。私も学校を出たあとは好きにしていたし、「好きにする時間」って大切ですから。今は見守り中です。と言っても、フユくんが30歳くらいまでですかね。それを超えると私の年齢的にもうサポートできないから、それまでになんとか今のひとりの生活を継続して、したいことができて、楽しい生活が送れたらいいなと思います。

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(千葉リョウコ『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』/ポプラ社刊 p.209より)

御手洗:私も、リョウコさんがおっしゃっているのと同じ結論です。ひとりになったときに楽しく暮らせるだけのお金を得られて、楽しく好きなことができる。ひとりでライフワークを完結できるというか。

千葉:うんうん、楽しく暮らせるって重要ですよね。

御手洗:たったひとりきりで生きていく、というのではなくて、ひとりで友達をつくる、ひとりで楽しいことを見つけてそれを維持していく力、自分の機嫌を自分でとれる力。楽しくなれる力。

千葉:……同人誌かな?(笑)

御手洗:そうなんですよー!! もう完全にそうなんですよね、私たちの場合。

千葉:ナツはひとりで同人誌を出してイベントに出たので、もう生きていけますね!(笑)

御手洗:同人活動ってやること多いですからね! でもほんと、同人に限らず、自分で自分の楽しいことって、なにかを作ることだと思うんですよね。買って楽しむのって限界があるけど、漫画だけじゃなくて、服でも料理でも曲でも……作るのは限界がないから。と言ってもこれもね、子どもの好みによりますが。

千葉:なにを選んでも本当にひとりで生きるってことはないですからね。私だって漫画を描くのはひとりでも、編集さんもいて、印刷・製本してくれる方もいて、こうして対談もしていただいて……御手洗さんのおっしゃるように「人とのかかわりを持ちつつ、ひとりでなんでもできる力」が大切ですね。私も今日、御手洗さんのおかげで考え方がまた広がりました。ありがとうございます。

御手洗:こちらこそ、ありがとうございました。今度またお茶ご一緒してください~!

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