“普通”の生活を送っている経験談が希望
乳がんに限らず「当事者にならないと知らないこと」は多々ある。「知らないがゆえに、『良かれと思って』言ってくれたアドバイスで、当事者を傷つけてしまうことがあります」と渡辺さんは打ち明ける。
「神様は乗り越えられない困難は与えない」という類の励ましには「あなたがなってみなよ」と思いましたし、医師でもないのに食生活や生活習慣へのアドバイスをするのも、遠回しに当事者の生き方を否定しているようなものです。アドバイスではなく、黙って話を聴いてくれたり「落ち着いたらご飯行こうね」など「待っていてくれる人がいる」と思える言葉の方が私は嬉しかったです(渡辺さん)
Reborn.Rの乳がん経験談アンケートには「自分も誰かのために何かしたいと思った」「ひとりじゃないと感じる」といった声が届いている。現在もアンケートは募集中で、「あなたが『つまらない』と思ってる話ほど聞かせてほしいです」と渡辺さんは思いを語る。
私自身、「乳がん経験後に孫ができた」「スポーツクラブに行っている」など、普通の生活を送っている先輩方のエピソードに励まされました。多くの乳がん経験者さんは何かを成し遂げたいのではなく、「社会に戻りたい」「元のような日常を送りたい」——そんな思いを持っているため、当たり前のような生活を送っている先輩方の姿はヒーローのようなんです(渡辺さん)
渡辺さんは「コロナ禍だったからこそ、オンラインでのコミュニケーションがメインとなり、地元以外の人ともつながれました。日本中の人とつながりたいという思いを持っています」と積極的だ。最後に今後のReborn.Rの展望についてお話いただいた。
私はReborn.Rの活動をなるべく医療・福祉・人権の色を出さないようにしています。堅苦しく感じてしまう人も少なくないですし、興味のある人にしか届きにくくなってしまうからです。Reborn.Rの活動は乳がん以外の方にも共感していただける部分はあると思うので、ネットや雑誌、ラジオ、テレビなど様々なツールを通して、乳がんを経験した人のことを発信していければと思います。
乳がんは毎年約9万人が罹患するのですから、楽しい場があった方がいい。乳がんを罹患した方には「安心できる場所を作っておくのでおいで!」といった思いでいます。乳がんの告知を受けたときに「Reborn.Rがある」と思い浮かべていただけるような場所にしていきたいです(渡辺さん)
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