仁藤夢乃さんが指摘する買春者に都合の良い日本社会の現状 「JKビジネス」「パパ活」性搾取を不透明化する言葉

文=雪代すみれ
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Gettyimagesより

 「成人男性が現金を渡し18歳未満の少女にわいせつ行為を行い逮捕」——こういった報道は残念ながら珍しくない。さらに暗雲とした気持ちになるのが、「売った側も悪い」「お金を受け取ったのに」と少女へのバッシングが多数噴出することだ。

 だが、冷静に考えてほしい。成人男性と18歳未満の少女の関係性は本当に対等だろうか。貧困、家出などから体を売ろうとする少女がいるとき、果たして買うことが大人として適切な行動なのか。少女にはケアや支援が必要ではないのか。

 虐待や性暴力被害など、さまざまな事情で家に帰れない10代女性を支える活動を行っている一般社団法人Colabo。夜間巡回にて路上にいる少女へのアウトリーチ(声かけ)、移動バスによる10代女性限定の無料カフェ「Tsubomi Cafe」、シェルター、生活支援などさまざまなサポートを行っている。

 同団体代表の仁藤夢乃さんに新型コロナによる若年女性への影響や、性搾取を目的として少女に近寄る大人の実態などについて話を伺った。

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仁藤夢乃(にとう・ゆめの)
1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供などを行っている。Colaboでは、10代の少女たちと支援する/される関係ではなく「共に考え、行動する」ことを大切にしており、虐待や性暴力被害を経験した10代の女性たちとともにアウトリーチや、虐待や性搾取の実態を伝える活動や提言を行っている。 明治学院大学国際平和研究所研究員。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中

■Colaboホームページ:https://colabo-official.net/

■Colabo Twitter:https://twitter.com/colabo_official

■Colabo Facebook:https://www.facebook.com/colabo.official/

性搾取を“自己責任”だと思わされている

——夜の繁華街に家に帰れない少女がいるのにはどのような背景があるのでしょうか。

 共通して言えることは、安心して家で過ごせないからです。私たちからすると虐待や性暴力被害、精神的虐待と思うことでも、本人は暴力や被害だと認識できない場合が多いですね。

 またColaboに繋がる10代の女の子たちの多くは、学校や警察にSOSを出した経験があるのですが、その際の対応が不適切で、大人への不信感が蓄積され、「誰にも頼れない」と思っている子が少なくありません。

 こうした経験からか、「諦め感が強い」という特徴もあります。性搾取をされても「自分のせいだ」「どうせ選択肢がない」と自己責任だと思い込まされ、無力感に苛まれている子が多いです。

——新型コロナにより、家庭内暴力の増加や女性の貧困が問題視されています。仁藤さんが活動される中でも、若年女性への影響は感じますか。

 はい、コロナ前よりも広い層まで状況が深刻になっています。今まではギリギリ家にいることに耐えられていた少女たちが、親がリモートワーク等で家にいる時間が長くなったり、親のストレスが大きくなったりし、虐待されるようになっています。経済的困窮も深刻です。大人も非正規雇用を中心に苦しい状況となっていますが、10代の若者たちもアルバイトが大幅にカットされ、全然稼げなくなったという子も少なくありません。

 2020年4月の最初の緊急事態宣言の際には、お店が閉まってしまったことで、ネットカフェやカラオケで夜を過ごしていた女性も路上に出てきており、女性の孤立・困窮につけ込む性搾取の斡旋業者や買春者たちが声かけをしている姿も見ました。コロナ前から路上にいる若年女性に対し、性搾取の斡旋業者や買春者たちが住むところや仕事を提示し、性搾取を行うことが常態化していましたが、新型コロナの影響で、今まで路上にいなかった若年女性にまで性搾取が近づいています。

 Colaboへの相談も2020年は前年より1,000人近く増え、日々対応に追われていました。元々Colaboでは、相談窓口で待っているだけでは出会えない子を支える活動をしてきたのですが、2020年に至っては自分から助けを求められるような、元々家に帰れず新宿や渋谷をさまよっていたわけではない子が1,000人増えた状況です。

 もちろん自分で助けを求められる子たちも困っているので、できることはやりたいのですが、自分から助けを求められる子は、周知されていれば行政の支援を利用できるはず。本来、行政で対応できる子たちまでColaboで対応をすると、私たちから声をかけないと繋がれないような子たちへの支援がますます遠のいてしまうんです。

 Colaboが元々出会ってきた“諦め感”の強い子たちは、私たちが忙しそうだと遠慮したり、我慢してしまう傾向があります。例えば生理が来なくて妊娠不安を抱えている子でも、私たちが暇そうにしていると打ち明けてくれるのですが、ここ1年近くそういった余裕も持てず、妊娠8カ月で中絶できないことを知り、追い詰められた状況になってから初めて話してくれたり、臨月で初めて病院に行く少女もいました。

 「助けて」と言える子たちも、Colaboが支援しなければ性搾取や買春者に取り込まれていたかもしれないので、やむを得ない部分はあったと思いつつも、路上にいる子たちへの声かけや、相談したいけれどもなかなか言い出せない子への対応ができなかったという反省があります。

 改めてColaboの活動の根幹である「自分から助けを求められない状況にある子」と繋がっていけるよう、2021年8月より、バスカフェの時間を18~22時から24~5時の深夜の時間帯に変更しました。家にいられず繁華街をさまよっている子たちが、知らない男性のところへ行くのではなく、バスカフェに立ち寄ってもらえればという思いです。

——なぜ自分から助けを求められる子も行政ではなく、Colaboに助けを求めるのだと思いますか。

 Colaboは、私も当事者の一人として、当事者である少女たち自身が必要だと感じたものを一緒に作ってきたからだと思います。たとえば、少女たちと意見を出し合いながら、家に帰れなくても知らない男性のところへ行かずに済むようにと一時シェルターを作りました。その後、「一時的な場所だけでなく住む場所が必要」で、公的な支援がそこにもないことから、シェアハウスを開設、現在はステップハウスとしてアパートタイプの住まいの建設準備もしています。

 支援する大人たちが上から目線で「こうあるべき」と押し付けるのではなく、当事者が自分たちで必要だと思ったものを形にしてきたのがColaboの活動です。そのため、自分から助けを求められる子たちにとってもColaboは居心地が良いのだと思います。

 自分からColaboに助けを求めて繋がった少女たちには、現在でもLINE相談で他の団体を紹介したり、食料を送ったりなど夜間以外の時間で対応していますが、これらは本来Colaboが背負うべきことではありません。行政において困っている若年女性向けの利用しやすい支援がない、もしくは周知が不十分なため、Colaboに集まってしまうのだと思います。

「援助交際」「JKビジネス」「パパ活」買う側を透明化する言葉の数々

——少女を性搾取しようとする大人の手口・実態はどのようなものでしょうか。

 主に性搾取を目的として居場所や仕事を提示し、女性に近づきます。たとえばSNSで10代の女の子が「泊めてほしい」「行くところがない」といった投稿をすれば、10分程度で20人ほどの男性から「サポートするよ」といったメッセージが届くんです。

 性搾取を目的とした男性たちは経験を積み、どうしたら少女たちの信頼を獲得できるかを熟知しています。女の子たちが“マシな人”を選ぼうとするほど、結果的により手口が匠な人を選んでしまう構造があるんです。

 また、10代でもホスト通いで借金を作らせ、風俗に飛ばして働かせるといったことは何年も前から、私が15歳くらいの時にはすでに起きていました。斡旋業者も女の子たちが15、16歳頃からSNSでターゲットを探し、「いいね」したり、DMでやり取りをするなど関係性を築き、18歳になったら風俗で働かせようとするなど、性搾取をしようとする人々の連帯や執念はすさまじいものです。

——売る少女たちにはそうせざるを得ない背景や斡旋業者の仕掛けがあるわけですが、社会には「援助交際」「JKビジネス」「パパ活」など、あくまでも少女たちが能動的に行っているものとする、搾取する側の大人を透明化するような言葉で溢れていますよね。

 かつて東南アジアへの買春ツアーが一般的に行われていたり、「売る側にも問題がある」といった主張がまかり通ったり、「コロナの影響で風俗に可愛い人が増える」といった発言をした芸能人がテレビに出演し続けられるなど、日本は買春者に甘く、買春を容認する風潮が浸透している社会です。当たり前のように女性が抑圧されているので、多くの女性が疑問を持てなくなっており、声をあげる人がいても耳を傾けてもらえないため、違和感を表明することのハードルの高さがあります。

 私たちの活動に対し、「少女たちは好きでやっているのでしょう」と言ってくる人も珍しくありません。少女たちがその選択をせざるを得ない背景を見ず、都合の良いときだけ少女たちの“主体性”を押し出してくるのは、少女の“主体性”の話にしてしまえば、大人としての責任に向き合わずに済むからですよね。

 買春を容認し、大人の加害者性に向き合えない日本社会のしわ寄せは、全て子どもにいきます。買春者や斡旋業者の存在が不透明化されることは、搾取する側にとって都合が良く、“自己責任”と批判することで、ますます少女たちは大人に相談しなくなっていきます。

——一昔前と比較すると、SNS上などでこうした状況に異議を唱える人も増えた印象ですが、一部メディアでは依然として、「お小遣い目当て」「欲しいものを買うため」など“少女側の問題”を強調する記事が生産されています。そうした記事に読者が流されないためにはどうしたらよいでしょうか。

 買う側でも買われる側でもない、「傍観者」となっている多くの非当事者の市民が、一部のメディアが創り出す搾取側にとって都合の良い言説を信じてしまうことの問題を感じています。

 認識の誤りに気づくためにはまず、構造的な問題を理解することが第一歩です。買う側の成人男性と買われる側の未成年少女はどう考えても対等な関係ではありません。金銭的なやり取りがあることにつき「需要と供給の一致」「winwinの関係」「お金をもらったのだから」と言い出す人もいますが、そこに対等な関係性はなく、金銭を対価に性関係を要求すること自体が性暴力であって性搾取です。

 たとえば「お金を渡すから殴らせて」と言う人がいて、それに応じて殴ったら、殴った人がしたことは暴力だと多くの人が認識すると思うのですが、これが性搾取になり男性が逮捕されると「お金を受け取ったのに」「男性がかわいそう」と言い出す人が少なくない。現状、売る側の問題にしておけば福祉も社会も反省せずに済むため、少女たちが切り捨てられているのだと思います。

 また、買春者や斡旋業者は、あくまで性搾取の手段として寝床や仕事を提供しているだけで、「性売買や性搾取の現場がセーフティーネットになる」といった考えも改めていただきたいです。

 Colaboの活動をお話すると「自分は孤立や貧困、虐待といった困難に直面している少女に会ったことがない」という反応も多いのですが、「いない」のではなく、相談相手として選ばれていないのが現実だと思います。話してもらえるように、気づけるようになるために、普段から性暴力や性搾取に関心をもって発信したり、身近な性差別に抵抗を示してほしいです。

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