
自然大好き! という感じでもないうちの娘は、自然な生体を描く虫絵本よりも、プロレス風に展開されるエンタメ演出な虫絵本に食いついています。
かつて日本の夏の風物詩には「カブトムシ×クワガタ相撲」があったようです(今もあるのか?)。自分自身は全く経験がなかったけれど、実際に見てみると、なるほど虫バトルというのは子供の食いつきがハンパないよう。親子で改めて、エンタメとして虫を楽しんでみました。
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虫の楽しみ方は、いろいろです。観察する人たちはウォッチャー、育て増やす人たちはブリーダー、標本の人たちはコレクター、食べる我々はイーター(ちなみにこれらのカテゴライズは、ムシキングとして名を馳せる日本昆虫協会会長・ 長畑直和さんの寄稿文で知りました)。それのどこに位置するのかわからないけど、エンタメ的に楽しむジャンルに「昆虫相撲」という遊びが存在しています。古くは中国のコオロギ相撲、日本の無形民俗文化財ではクモ合戦。最近の虫バトル系オモチャはきっと、夏の風物詩であったカブトムシやクワガタ相撲の延長線にあるのでしょう。いろいろな生き物が出没するゲーム「あつまれ動物の森」でも、虫バトルが見られるイベントがあるようですね。
私はイーターなので、虫イコール食べものという認識で、それらにはあまり興味がありませんでした。ところが大量の虫を飼育してみると、虫カゴの中で発生する虫バトルにも、イーター的に新たな発見が。夜な夜なバトルをして暴れまわる若く元気なオスは、体格も立派で色ツヤもよく、実際食べてもジューシーでおいしい。一方、喧嘩に参加すらしない老体は、みるからにしょぼくれていてツヤもなく、食べると実際味もイマイチ。そう、強い=健康=おいしい!
うちの子供はそこまで虫好きではないものの、エンタメ要素が入るとググっと食いつきがよくなります(食べるという意味ではない)。昆虫ショップに連れていっても入り口のガチャガチャガチャにしか興味を示さない塩反応な6歳児ですが、虫相撲的な絵本はそこそこ気に入って繰り返し読んでいるのです。
さてそうなると、実物を見せ、もっと虫の沼に引きずりこみたくなり……。しかし今どきは、どこの家庭も当たり前に虫を飼っているという感じでもありません。どうしたものか? というタイミングで、渡りに船。「クワレス」の招待状が届いたのです。しかも、昆虫ヒーロー、ミヤマ仮面から。
説明しよう! ミヤマ仮面とは、プロレスラー・垣原賢人(かきはらまさひと)さん扮する、昆虫ヒーローのこと。怪我によってプロレスラーを引退した後、自身の体験と、幼少期から大好きだったクワガタを合体させた「クワレス」なる昆虫の格闘ショーを作りだしたのです。そして夏休みなど、長い休みの時はキャンピングカー「ミヤマ仮面号」で全国各地を周り、子供向けの昆虫ショーを開催しています。クワレスは、現代風に演出されているものの、基本は「昆虫相撲」そのもの。昔の遊びを未来に継承していく試みでもあるのです。以前から噂は聞いていたので、これはぜひ参加したい! しかし親の趣味の押し付けになってはいかん……という点に気をつけながら、さりげな~く娘に「虫のお相撲あるんだって。行ってみる?」ときいてみると、「行きたい!」と即答。あー、よかった。
私がこれまで見たことのある昆虫バトルといえば、『虫皇帝』(詳しくは後ほど説明しましょう)などややショッキングなコンテンツ。それが頭にあったもので、実際に初めて見るクワレスのさまざまな配慮には、嬉しい驚きだらけでした。人の楽しみのために仕掛ける以上、虫に負担をかけすぎないよう、ほどよい見極めで勝敗を決めるバトルルール。あえて国産と外国産を戦わせることで教える、外来種という概念。そして、ペットとして持ち込まれたものを野生に放したらどうなるか?という子供たちへの呼びかけ。意外と……どころじゃない教育的なエンタメじゃないですか。「虫すげー」だけに終わらない点に虫愛も溢れ、親目線で見ても至れり尽くせりなのです。

今回のクワレスは「東京キャンピングカーショー2021」での、「おもしろ昆虫ショー」にて。
ステージの構成は、昆虫バトルの前に「昆虫体操」や「むしクイズ」などのお楽しみも盛りだくさんで、ミヤマ仮面のリアル息子さんである垣原つくしさん扮する「クワガタ忍者」との掛け合いにも、子供たちは大盛り上がり。
今回のイベントでは、我が家と同じような年頃の女の子も発見。親御さんに話を聞いてみると、初めは親に付き合ってしぶしぶ来たという感じだったが、あっという間にハマって今ではかぶりつきの常連状態。カブトムシやクワガタも上手につかめるようになったとのお話でした。そういう娘も、今でも定期的に「虫のお相撲、また行こうね!」と言い、イベントでもらったミヤマ仮面×クワガタ忍者のカンバッジを大切に眺めているほどです。虫というより、子供を全力で楽しませてくれる覆面ヒーローに会いたいという雰囲気がなくもないですが、楽しみが増えて何より。このクワレスは、過去には昆虫好きなら知らぬ人はいない、高円寺の「むし社」でも「むし社杯」が行われていたこともあるようで、そちらはさらにさぞ熱い展開があっただろうと想像できます。
実際に飼っているおうちなら、段ボールで土俵やリングを作って、おうちクワレスをやってみても盛り上がりそう。すべてのカブトムシ、クワガタが昆虫相撲ができるわけではなく、個体差や、コンディション、種類によっても向き不向きもあります。そうした実感からも、生き物への理解が深まるのではないでしょうか。
今回、虫に過度な負担がかからないように配慮されているクワレスを見ていたら、10年以上前に劇場で観た、『虫皇帝』という映画を思い出してしまいました。それは時間帯のせいもあったのか、劇場には自分を含めて2名しかいないという貸し切り状態(要は閑古鳥)。いやあ、これが実にひどかったですね(一応誉めてます)。タランチュラやオオムカデ、サソリなど自然界では絶対に出会わない異種を「昆虫軍VS蟲毒軍の全面戦争」としてとことん戦わせ、最強はどれだ!? を決めるというドキュメンタリー(?)です。虫皇帝はクワレスのように虫と観客に優しいルールは存在しないので、結構なゴア路線。確かクワガタだったか、激しいダメージを受けて目玉が落ちかけるようなシーンもあったものです。私のほかにもわざわざ劇場に足を運んだ友人が数名いて、「あの映画、ポロリがあったわよねえ……」と震えながら観賞報告しあったものです。
と、ついろくでもない思い出が蘇ってしまいましたが、いずれも自然のパワーに触れられる昆虫エンタメには違いありません(ちょっと無理やり感)。また昆虫相撲のほかにも、マイバッタやイナゴの飛距離を競う遊びなどもあり、どれも季節が感じられるものばかり。虫を捕まえて楽しむもう1歩先を! という方は、ぜひこれら虫のエンタメを楽しんでみてはどうでしょうか?
クワレス公式HP
https://www.kakiharafamily.com/
おまけ

昆虫タンパク配合 BEETLES BEER (ビートルズ ビア Alc.5.9%)330ml¥1078/バグズファーム
ちなみに日本のカブトムシ、クワガタは食べてもあまりおいしくはないのですが、昨今は「ビートルビール」なるものも販売されているます(輸入物)。カブトムシ入ってるの!? と期待に胸膨らませたものの、何の虫が配合されているのかは「企業秘密」なんだとか(残念)。味はコクのある甘めのクラフト系で、ヒューガルデンに似ている!? てな印象もありました。