お金に関する記事を読むと平均とは別に中央値も紹介されていることがよくあります。平均はどうしても高めの数値が出やすいのですが、中央値はデータを大きい順に並べた時のちょうど真ん中の値なので、よりリアルに感じやすい、というお話は前回もしました。
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多くの人が、貯蓄をしている理由に「老後のため」をあげると思います。前回は、世代ごとにどのくらい貯蓄をしているのか、データを使って確認をしましたが、今回は、65歳までに中央値まで貯めるにはどうすればいいか、その考え方を紹介していきます。
65歳までに1,000万円は持っていたい?
金融広報中央委員会「知るぽると」が行っている、家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)によると、60代の金融資産保有額(金融資産保有世帯)の中央値は二人以上世帯で1,465万円、単身世帯で860万円です。65歳でざっくり1,000万円前後は持っていたいというところでしょうか。
65歳といえば、健康も少し不安になる頃ですし、今まで通りの収入確保が難しくなる人も多いでしょう。今後、年金の受給開始年齢の大原則も65歳より後ろ倒しになることも考えられます。
たとえば年収が500万円の人ならたったの2年分ですから、「1,000万円くらいは備えておきたい」と考えるのは自然なことでしょう。
漠然と生きていていつの間にか貯まった……なんて人はまずいません。自然に貯まるのではなく意識的に貯める必要があります。
まずは単なる割り算をする
まずは、貯めたい金額を貯めたい期間と月数で割り算をするところから始めましょう。当たり前の話ですが、この割り算をやらない人が多いのです。
10歳刻みで、1,000万円を65歳までの月数で単純に割ってみました(1円未満切り捨て)のでご確認ください。
・現在25歳→月々20,833円
・現在35歳→月々27,777円
・現在45歳→月々41,666円
・現在55歳→月々83,333円
財形貯蓄や積立定期預金など手堅いもので貯めていくのであれば、月々上記の金額を最低限確保して積み立てなければ、絶対に65歳時点に1,000万円は作れないという計算になります。
もしも3%の運用ができたなら
では、投資信託などを活用し、年率3%で複利運用しながら65歳時に1,000万円に達成するには、月々いくら積み立てればいいのでしょうか(税金、手数料、費用等を考慮していません)。
・現在25歳→月々10,799円
・現在35歳→月々17,161円
・現在45歳→月々30,460円
・現在55歳→月々71,561円
最初の計算よりもかなり数字が小さくなったことがわかります。これが複利で運用することの効果です。特に若いうちから積み立てをすれば十分な可能性を感じる数字ではないでしょうか。逆に、55歳からだと毎月7万円以上を捻出する必要が出てきます。
3%という数値は積み立てながら資産運用をする上で、決して高過ぎる目標ではありません。10年以上という単位で積み立て投資をする人にとっては、目指したい数値の最低基準と言っても言い過ぎではないと思います。
まとめ
自分の方針として貯蓄ナシで生きると決めている人はなかなかいないと思います。貯めたい、または、なんとなく貯めなきゃいけない気がするという気持ちになり、なにもしていない状態にストレスを感じる続ける人も多いのです。
まずは、今回のように目標額を月数で割り算し、毎月いくら積み立てるべきかの現実を知りましょう。そして、積み立て投資で増やすことも考えてみましょう。
今は確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)やつみたてNISAといった積み立て投資をしやすい制度が整っており、ネット証券とスマートフォンの組み合わせで手軽にできるようになりました。税制優遇などもあるため上限額が決まっていますが、こうした制度も組み合わせながら、始めてみると良いでしょう。後々、貯めていなかったことを後悔しないためにも、一刻も早く始めることが重要です。
思い立ったらすぐ行動です。なんのために貯蓄や資産運用をするのか、いくらくらいを目指したいのか、そしてその目標額を月数で割り算し、毎月いくら積み立てるべきか、始めてみてください。
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