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■産婦人科医・宋美玄先生の妊娠・出産Q&A
Q.難産だったのは努力不足のせいだと言われました。 どうしたら安産になるの?
A.出産はコントロールできないので、安産のコツはありません。
そもそも安産って何でしょうか。医学的な定義はありませんが、短い時間でスルッと産むことを指すのでしょう。一方、難産(遷延分娩)には目安があり、初産で30時間以上、経産婦で15時間以上です。
多くの人はもちろんラクに産みたいでしょうから、「妊娠中にたくさん運動すると安産、しないと難産」「体がやわらかいと安産、かたいと難産」「痩せていると安産、太っていると難産」「体を温めると安産、冷やすと難産」などと聞くと気になると思います。安産と難産については、驚くほど様々な迷信がありますが、当然ながら、 どれにも根拠はありません。
本当のところ、安産になるかどうかには、分娩の3要素「産道」「赤ちゃん」「娩出力」が大きくかかわっています。「産道」の状態、「赤ちゃん」の頭や体の形や大きさ、回旋(赤ちゃんは回りながら出てくる)の状況、「娩出力」つまり陣痛の強さやいきみの力と方向がうまく合えば、スムーズなお産になりやすいでしょう。けれども、これらの要素を努力で変えることはできません。
もうひとつ、大事なのが助産師の技術です。子宮口の開き具合、陣痛の状況、赤ちゃんの下がり方などを見ながら、いきむタイミングや姿勢などを、うまく産婦さんに伝えられる助産師がいれば、少しはラクになるはずです。ただし、産婦さんのほうも、助産師の指示通りのタイミングでいきんだり、呼吸したりすることができるかどうかにかかっていますし、こればっかりは実際の出産時にやってみないとわからないでしょう。
しかも実際の出産では、何が起こるかわかりません。子宮口が開かず出産が進まないことなどもあれば、陣痛が強くならないこともあり、様々な予想もできないことが起こりうるからです。つまり、確実に言えることは「誰も出産をコントロールすることはできない」ということ。ですから、たとえ難産になっても、決して自分の努力が足りなかったなどと思わないようにしてください。また、誰かに「○○をしなかったから難産になった」などと言われても相手にしないようにしましょう。
<今回のポイント>
○安産というのは医学的な定義がない
○妊娠や出産はコントロールできないもの
○安産のコツは根拠のないものばかり

宋美玄『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK-プレ妊娠編から産後編まで! 』(内外出版社)
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