搾取、孤独、ハラスメント…フリーランスという「都合の良い」働き方。ライター業の場合

文=ヒオカ
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GettyImagesより

※編集部注/当記事で指す「ライター」は、プラットフォームなどへの投稿ではなく、商業メディアから有償の仕事を受け、文責をもって書く職業を指します。

フリーライターという働き方

 近年、フリーランスという働き方が定着し、副業を始める人も増えるなど、働き方の多様化に拍車がかかっている。その一方で、フリーランスの立場の弱さ、リスクが問題になっている。

 たとえば、契約書を交わさないことが多いため、賃金の未払いが発生する場合もある。

 発注側との立場の差が大きく、不当な条件を突きつけられても、代わりはいくらでもいると思うと飲まざるを得ず、泣き寝入りする場合もある。会社員と違って、自分を守ってくれ、間に入ってくれる人がいない。そんななか、さまざまなハラスメントに遭う事例もある。

 私は2020年の春から本業の傍ら、副業としてフリーランスのライタ―活動を行っている。

 ライターという職業は、正規雇用ではなくフリーランスという働き方が多い。そして、多くの媒体において、ライターは決まった人を雇用するのではなく、“外注”するのが通例だ。したがってライターになる場合、フリーランスとして複数の媒体に寄稿する、という働き方が一般的である。

「入り口」の多様化

 ライターと呼ばれる仕事内容は多岐にわたる。取材ライティングから、PR(広告)記事、SEOライティング(検索エンジンの検索結果に上位表示されやすくするように文章を書くこと)、専門誌(業界紙など)、オウンドメディア(企業や組織みずからが所有し、消費者に向けて発信する媒体)、エッセイやコラム……こうしたものを書く仕事が、ひとまとめに「ライター」と言われている。

 記名・無記名のもの、個人の主張を色濃くだすもの、クライアントの意向を汲み取る裏方的なものがごちゃまぜになっている、という感じだ。どれも求められる能力はそれぞれで、優劣はないと思う。クラウドソーシング(インターネット上で企業が不特定多数の群衆に業務を発注すること)での募集も活発に行われている。

 仕事内容が多様なぶん、ライターの入口もまた多様化している。特に近年、その傾向は強まっている。出版社や新聞社を経て独立する、媒体の募集から応募する、という王道のルートだけでなく、ブログが話題になって依頼が来たり、まったく違う職種から転向したりといった選択肢もでてきた。

 “書くことで食べていく”を夢見るワナビーは多いが、こうすれば目指すライターに一直線で向かえる、という方法があるわけではなく、また、当然人気の分野は競争が激しい。そんな状況下で、”書き手になりたい欲”を利用され、安く買い叩かれたり、まったくキャリアにつながらない仕事を振られたりするなど、落とし穴もある。

 私が目指していたのは、社会問題についてのルポを書く、ノンフィクションライターだった。

 その分野のライターはジャーナリズム色の強いニュース媒体で記者として所属しているのだが、3~5年の記者経験がある即戦力でなければ入れず、断念した。人気の募集要綱はどれも実務経験が必須だったのだが、では新人は一体どこでその実績を作ればいいというのか、非常に疑問だった。

ライターへの足がかりが見えない

 結果的に現在はノンフィクションライターになり、社会問題についての取材記事、コラムを寄稿できているのだが、そこに至るまではかなりの紆余曲折があった。その道には、若手ライターが直面する問題が大きな岩や小石として数多く転がっていた。ここからはしばらく私個人の体験談にお付き合いいただきたい。

 ライターの仕事を求人サイトで検索しても、未経験者でも応募できるのはコスメのレビュー記事やペットブログといった、自分の指向とは違うものばかりだった。ダメ元で媒体の求人に応募するも、書類でほぼ全落ちで、通ったのは口コミで離職者が多いという悪評だらけの小さな会社か、かなりマイナーな業界紙といったところだけだった。

 就活のエージェントには、「クラウドソーシングでなんでもいいから1年やりつづければ実績になる」「自分の指向とは違う専門誌やレビュー記事でも、求人が出ているものに応募すべき」「そもそもライターはあきらめ、エンジニアやSE、営業といった、求人が多く未経験でも採用されやすい仕事に就き、そこからライターに転職すべきだ」といったアドバイスを受け、ますます混乱した。紹介される求人も、医療関係、商品のPRといった、私の志望にかすりもしないものばかりだった。ノンフィクションライターになったいま、どのアドバイスもあまりに的外れで、疑問に思わず従っていたらどれだけ時間を無駄にしていただろうと思うと、正直ぞっとする。

 知り合いにライターになりたいと相談するも、ある起業家を紹介され、「俺の事業に対する思いを書いて宣伝してくれ」と言われるなど、目指すノンフィクションライターへの足がかりは見えないままだった。

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