右派論壇誌がぶちまけた眞子さん・小室圭さんへの大きなお世話・地獄の光景を観察してみよう

文=早川タダノリ
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 象徴天皇制は権力に正統性をあたえるための階級国家の「国民統合」装置だが、その非人間的な制度に組み込まれた担い手であったとしても、それは「皇族」という規定を帯びた一人の人間にほかならない。「皇族」カテゴリーから離脱しようとする人物に「自由恋愛はだめだ」などと自由や諸権利を制限し、それのみならずそのパートナーの男性の母親まで執拗に叩くのは、あくまでも象徴天皇制を神聖化する障害を排除したいがために見えてくる。非人間的な制度の担い手に、さらに非人間的な統制をかけようとするこの熱情は、一体どこからほとばしりでるのだろうか。

 敗戦前までの「家族国家」観以来、天皇を国家の家長(=国父)とするヒエラルキーは、同時にピラミッドの頂点から末端へと、神がかり権威と権力とが「トリクルダウン」(死語)し、その下位を支配していく仕組みだった。そして男性家長を頂点とする国民統合システムは、同時に皇后(=国母)の「慈愛」による包摂をサブシステムとして備えていた。当時、全国の公立学校に配布された「御真影」が天皇・皇后の肖像のワンセットであったように、神聖家族の象徴は日本的(近代)家族のモデルとして、その男女別の役割を位置づけられていたのである。明治以降に創造された国家/家族の家父長制的規範が、「国民」を形成するヒエラルキーのすみずみにまで浸透し、多くの人びとを苦しめてきた。

 ヒエラルキーの頂点が高ければ高いほど、中間で分配される権威も増大する。そのおこぼれにあずかろうとする者たちは、戦後も残存した。赤の他人の結婚にここまで必死になるのも、権威の中心に一ミリでも近づこうと執拗に「国体護持」ぶりを争う非人間的レースだからかもしれない。

 けれどもそれ以上に、「身元調査」や「家柄」といった現代日本においても根強く残存する「結婚」制度にまつわる謬見もまた、当然の顔をして再生産されていることも見落とされるべきではない。

 例えば「月刊Hanada」2021年3月号に掲載された一般読者からの投書「小室圭さん、婚約を辞退しなさい」を見てみよう。あらゆる大きなお世話感が、この15文字のタイトルに凝縮されている。

 投書にはつぎのようにあった。

〔……〕昔から、結婚に際して様々な警句がある。
「結婚するときは本人のみならず、その親兄弟も見ろ」「結婚は家と家との結びつき」など。
 当人同士の問題では済まされないのが結婚だ。ましてや皇室との縁組。このまま結婚が強行されれば、のちのち天皇家にとって不名誉な事態が起こりうることは考えられる。皇室、皇族が私たち一般人と同じであっていいはずがない。(茨城県・古神早苗・61歳)

 「皇室、皇族が私たち一般人と同じであっていいはずがない」と書きながら、一般的に流布している「結婚」像をあてはめているところが転倒していることが見てとれる。しかしそれ以上に「結婚するときは本人のみならず、その親兄弟も見ろ」「結婚は家と家との結びつき」と、憲法第24条の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有する」をやすやすとふみじにる・しかしいまだに社会的には残存している謬見が、さも常識であるかのように開陳されている。

 結婚前の「身元調査」が数多くの結婚差別事件を引き起こし、また「家と家との結びつき」思想が多くの人々を「家」に呪縛してきた歴史は、あらためてふりかえるまでもないだろう。

 今回の「結婚」をめぐる膨大な量のスキャンダラスな報道が、「伝統的な日本的結婚」観(もちろん、それが「伝統」と呼びうるのかどうかについては大いに疑問だが)を再び活性化させたことを見落とすことはできない。もはや皇籍から離脱した一人の女性だけの問題ではない。知り合いでも親戚でもない人物の結婚にあれやこれやと口をはさまれることで、首を絞められているのはあのカップルだけではないのだ。

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