中学時代に友達の目の前で親戚から養子だと知らされてしまった女性のつらい話

文=うさぎママ
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GettyImagesより

前回までのあらすじ

 うさぎママ夫婦とアンちゃんは特別養子縁組の申し立てをし、正式な親子に。当時は養子縁組の事実を隠すことをすすめる人がいましたが、家庭内に秘密を作って嘘をつけば、かえって子どもを傷つけることになるので、必ず真実告知をしようと考えていました。

第3章 アンの子ども時代:乳幼児のアン

 真実告知については、こんな話を聞いたことがありました。

 私のおしゃべり仲間のKさんと同じ団地に住んでいたママの体験談です。「私は、うさぎさんがお手伝いにいっていた乳児院に2歳までいたの」とのこと。「え? 赤ちゃんハウスに?」と驚きました。子だくさんな家から貧しさゆえに手放されたらしいと、本人談。アンを膝に抱きながら、Kさんの家の居間ですっかり打ち解けて話をする仲になり、真実告知が話題になったときのことでした。

 「やっぱり、ちゃんと話しておいたほうがいいと思うよ。私もね……」

 そこそこ豊かな農家に迎えられて大切に育てられた彼女も、成長するにしたがって「なんだか変。もしかして私は養子なんじゃないの?」と感じていたとか。でも、大好きなやさしい両親は何も言わないし、薄々わかっていただけに自分からは何も聞けなかったそうです。とても賢くてやさしい人でしたから、両親の気持ちを思いやったんでしょうね。

 ところが、やはり困った大人はここにも! 彼女が多感な中学生の頃、いつものように仲よしの友達と下校途、遠縁のうるさ型のおばちゃんとばったり。まったく初対面の、彼女の同級生がいるのも完全に無視して、いきなりお説教が始まったそう。

「こんな時間に帰るなんて遅すぎる。どこで道草くいよったの? あんたは親と血もつながってないのに育ててもらった恩があるから、ちっとでもはよう帰って家の手伝いをするべきじゃないかね? だいたいどこの馬の骨ともわからん子を跡取りにする話は、親戚じゅう、だ〜れも相談を受け取らんかったんや。ブツブツブツブツ……」

 それから友達と黙って歩く帰り道。大人なら「ごめんね、びっくりさせたね」と言いつくろうすべもあるけど、中学生の彼女は自分の胸のうちを鎮めることさえできない状態。

 「よそのおばちゃんから言われたのもショックだったし、友達の前でそんな話をされたのはなおさらショックだった」とのことでした。

 進学や結婚も自由にさせてくれたし、元気な孫ふたりをかわいがってくれるしと、両親への感謝の気持ちでいっぱいの彼女でしたが、それでも「両親から先に話を聞いていたら、あんなに嫌な思いをしないですんだのに」という気持ちが心の奥底にはずっとあると話していました。

 「黙っていればわからない」なんて、絶対にそんなことはないんです。この親戚のおばちゃんは特別だとしても、子どもにはわからないつもりで、世間様はいろいろな地雷を踏んでくれるもの。

「似てきたねぇ、不思議なものじゃねぇ。心配ない、ない」 

「こんな良い子に育つなんて(もらって)よかったねぇ」

 悪気はなくても、こういったセリフを子どもの前で言うことなんて、かなりの高確率であるでしょう。

 だから、私はアンには他人の口から伝わる前に、自分の口で、自分の言葉で真実をしっっかりと伝えようと決心していました。(続く)

次回更新は11月15日(月)です。

【特別養子縁組について】

特別養子縁組は、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、親子になりました。

厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html

※この連載は、書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです。

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