『シャン・チー』の相棒役! アジア系ハリウッドスター・オークワフィナが最高な理由

文=堂本かおる
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半自伝シットコムで大暴れ『アクアフィーナ・イズ・ノラ・フロム・クイーンズ』

 日本では観られないのが本当に残念なのが、アクアフィーナの半自伝的なシットコム『アクアフィーナ・イズ・ノラ・フロム・クイーンズ Awkwafina Is Nora from Queens』だ。これはもう毎回爆笑に次ぐ爆笑。アクアフィーナの、このコメディの才能はいったいどこから湧いて出るのかと思う。

 アクアフィーナの本名はノラ・ラム。ニューヨークのクイーンズ出身。父親は中国系、母親は韓国系だが、お母さんはアクアフィーナが幼い頃に亡くなり、父方のおばあちゃんに育てられている。

 『アクアフィーナ・イズ・ノラ・フロム・クイーンズ』はこの生い立ちを土台としており、主人公のノラは実家で父、祖母と暮らしている。どんな仕事に就いても長続きせず、マリファナを吸いまくり、(もうすぐ30なのに)他国のティーンエイジャーたちと深夜のネットゲームに熱中……なキャラクターだ。

 さすがに観光バスの中でこっそりマスターベーション(!)までする女性は少ないと思うけれど、アクアフィーナ、実は大学で女性学を学んでいたこともあってかジェンダー規範への挑戦も時々挟まれている。ノラを育てたおばあちゃんも下ネタをガンガン飛ばし、逆にお父さんは影が薄いのも笑える。

 このノラと似たバックグラウンドを持つアジア系アメリカ人女性と祖母の関係を、ドタバタ・コメディではなくしみじみとしたペーソスで綴ったのが映画『フェアウェル』だ。アクアフィーナにこれほど繊細な演技ができるとは!と、嬉しい驚きがあった。ちなみに本作は各映画賞で絶賛され、オバマ元大統領はこの作品を「2019お気に入り映画」の一本としている。

オークワフィナ:新世代のアジア系俳優〜主演傑作『フェアウェル』今春日本公開

 俳優/ラッパーのオークワフィナ(*)が、1月初頭のゴールデン・グローブ賞にて最優秀女優賞(主演作品『フェアウェル』、ミュージカル/コメディ部門)を受賞…

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『シャン・チー』の相棒役! アジア系ハリウッドスター・オークワフィナが最高な理由の画像2 ウェジー 2020.01.16

黒人訛り「ブラックセント」でバッシング

 無敵に見えるアクアフィーナにも、実は脆い部分がある。

 アクアフィーナの名前は「Awkwafina」と綴るため、日本では「オークワフィナ」と表記されるが、発音はミネラルウォーターの「アクアフィーナ」と同じだ。ここ最近は当人が「自分の awkward(不器用さ、ぎこちなさ)に基づく芸名だ」と語っているが、以前のインタビューではそうではなかった。

 すでにラッパーとして活動していた16歳の時、単に面白いと思ってミネラルウォーターのブランド名「アクアフィーナ Aquafina」を名乗り出したが、ビデオ制作時に商標違反で訴えられるのを避けるために綴りを変えたと語っている。以後、綴りは変わったが発音はアクアフィーナのままだ。商標のエピソードをなぜ避けるようになったのかは不明だが、彼女の普段の割り切り振りを考えると、ちょっと不思議に思う。

 アクアフィーナが抱えている、より深刻な問題が「ブラックセント」だ。blaccentとは「黒人 Black」と「訛り accent」による造語で、非黒人が黒人特有の話し方を真似ることを指す。

 アクアフィーナはラッパーゆえに、これをやる。と言うか、コメディ映画でラップ調の喋りをしてしまう。それをアフリカン・アメリカンから批判されるのだ。曰く、「アジア系のステレオタイプを許さないと言いながら黒人のステレオタイプを真似るのか」と。

 先日も『シャン・チー』についてのインタビュー中にこの件を突っ込まれ、アクアフィーナはしどろもどろになってしまった。以前から繰り返し批判されてきたことなのに回答をまったく準備していなかったのかと、そこに驚かされた。

『クレイジー・リッチ!』で、身振りも含めてブラックセントだと批判されたシーン。

 アクアフィーナ演じるペク・リンは、原作の小説では映画とまったく違って有能なビジネスパーソンだ。映画化にあたり、アクアフィーナの個性に合わせた書き換えがなされたのだと思う。

 アメリカの、中でも特に多様性のある都市ニューヨークでブラックカルチャーの洗礼を受けてラッパーとなったアジア系アメリカ人と、それを利用するハリウッド。これ、なかなかに深い問題と言える。

 閑話休題。

 アクアフィーナ、今年12月には『スワン・ソング Swan Song』の公開が控えている。死と家族愛の物語にSFを絶妙に交錯させた作品で、主役はアカデミー賞助演男優賞を2回受賞しているマハーシャラ・アリ(『グリーンブック』『ムーンライト』)だ。アクアフィーナは主人公の友人役らしい。本格的なシリアス・ドラマで黒人男性とアジア系女性が水辺で肩を並べて語り合うシーンは、わたしにとっては静かな衝撃だった。ハリウッドの多様性が次なる段階に進んだのではないか。

 ということで、アクアフィーナ。

 越えるべき問題はあるけれど、道は必ず見つかる。その才能を存分に活かして、まずはわたしにとってのアジア系アメリカ人の星であれ。そして、ゆくゆくは人種を問わない世界的な「アメリカ人」ハリウッド・スターとなれ。

 Go! アクアフィーナ! Go!
(堂本かおる)

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