「だれから生まれたの?」「本当のママは?」子どもの疑問に答えた2度目の告知

文=うさぎママ
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Gettyimagesより

<前回までのあらすじ>

 特別養子縁組で母になった著者。自身の経験や他の人の経験談から、家庭内に秘密を作って嘘をついたりすれば、かえって子どもを傷つけることになると知っていたので、真実告知をしようと考えていました。初めての告知は無事に終えましたが、次の機会が……。

第3章 アンの子ども時代:乳幼児のアン

 毎朝、掃除や洗濯をすませると、近くの公園へ集合。気のおけない公園仲間が、親子でわいわいがやがや。たまには申し合わせて桜を見にいったり、川辺へ出かけたり。雨が続くと地域の小さな公民館を借りて集まり、子どもたちを思いっきり遊ばせたこともありました。もちろん、母親たちは一大おしゃべり大会で、子育ての悩み相談をし合ったり。

 そんなのんびりとしたタイムスケジュールが一変。オリーブグリーンのおそろいのスモックに名札をつけて、アンの幼稚園生活がスタートしました。手元から離すのは初めての経験で、ドキドキの毎日。入学式の会場へ列になって入ってきたとき、ちらっと保護者席をうかがったアン。なんとかお友達と同じように席について、名前を呼ばれたら「はい!」とお返事して……。

 あのとき、うさぎが涙ぐんだのは、アンの成長をうれしく思うのと同時に、その何倍もの強さでアンが親離れする日が近づいてきたことを悲しんだから。振り返ると、私は極度のアン依存症だったみたいです。寂しくて泣きそうな毎日が始まったのでした。

 3人目の男の子を同時に入園させたKさんは「あーっ、やれやれ。この日を指折り数えて待ってたんだ」ととても嬉しそうで、早速ママ友だけのランチ会を計画していましたが、私はただぼんやり。ママ友とのランチ会にはいきましたが、幼稚園のお迎えが待ち遠しい日々が続いたのでした。

 そんなある日、来ましたよ、戦慄の2回目が! 「聞きたいことができたら、何でもママに聞いてね」と初めての告知のときにアンに念押ししておいたのですが、あれから1年もたたない頃、めずらしく歯切れの悪い口調で、言いにくそうに聞いてきました。

「あのね、ママ……。聞きたいんだけど、アンは病院で生まれた赤ちゃんだよね。誰のおなかから生まれたの?」

 よく聞いてくれたね、アン。幼いながらに、どれだけ聞きづらくて迷っていたことか。ママがいちばんよくわかっているよ。そのアンの勇気と信頼が何よりうれしい。ママも勇気をもって真正面から質問に答えるよ。

 せっかくかわいいアンが生まれたのに、どうしても育てられないので「アンのママとパパを探してください」って一生懸命にお願いした女の人がいたこと。アンを大切に思っていたから、お腹の中で大事に育てて、アンが元気に生まれてきたこと。その人にとっても大事な子どもだから、捨てたり、置き去りにしたりはしなかったこと。

 「その人が本当のママなの?」と小さな声で問うアンに、私は自信たっぷりにはっきり答えました。

「ちがうよ。その人はアンを産んでくれた人。でも、ママにはなれなかった人だよ。アンの本当のママは私。絶対に本当にママになります、って病院の人に約束したんだよ」

 「そうか! ああ、よかったあ!」というのがアンの返事でした。

 「こんなかわいいアンのママになれて、ママはすごーく得しちゃったよ」と私が本音を言うと、アンはうれしそうに照れていました。

 このとき、暗黙のうちに、どんな質問でもごまかさずに答えるというアンとの約束が成立したように思います。(続く)

次回更新は11月29日(月)です。

【特別養子縁組について】

 特別養子縁組は、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、親子になりました。

厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html

※この連載は、書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです。

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