月々の生命保険料が高いと感じていませんか? 今回は家計を圧迫しないための生命保険の考え方について解説していきます。
ポイント1:もしもに勝負をかけ過ぎない
生命保険は、病気やケガで主に入院を伴う場合と亡くなった場合に威力を発揮します。それらの事態は「もしも」というくらいで、頻繁に起こることではありません。もちろん、「もしも」が発生すれば支払った保険料よりもはるかに大きなお金が入ってきますが、「もしもが起こっていない」時間の方が圧倒的に多いので、ほとんどお金は入ってこないことになります。少ない確率のところにお金をかけ過ぎれば、出ていくお金がはるかに多くなることは想像できますよね。
とはいえ「もしも」はないとはいえないので、生命保険ゼロで良いとは言いませんが、毎月の支出のうち貯蓄額よりも生命保険料の方が高いというのは、「もしもに勝負をかけ過ぎ」という印象です。
ポイント2:全てを生命保険でカバーしようとしない
もしも今メインの稼ぎ手が重い病気やケガで治療したらいくらかかるのか、亡くなった時はその後の家族の生活にいくらかかるのかなど、を考えて生命保険で備えようとすると、保険料は大変なことになってしまいます。
病院への支払いは貯蓄から払ってもいいわけですし、公的な給付や職場、親、お見舞いなどのもらったお金、その後の自分の収入などいろんな方法でカバーできることも大いにあり得ます。生命保険会社は「もしも」のいろんなパターンをあの手この手で打ち出してきますが、いちいち備えていたらキリがありません。
ポイント3:被りに注意
同じ保障内容で重複して生命保険をかけていませんか? 例えば、既に死亡保険に契約している人が住宅ローンを組んだとします。その際、「団体信用生命保険」(団信)という亡くなった場合に住宅ローンが全て返済される保険に契約するケースが大半です。遺族はローンなし家賃なしで家に住み続けることができるので、元々の死亡保障は下げていいのです。
こどもの教育資金用の保険の類にも被りが頻繁に見られます。子供の教育資金の積立だけでなく親の死亡保障がセットになっている商品があります。元々の死亡保障を下げるなり、こどもの教育資金は保険ではなく貯蓄で積み立てるなどで生命保険料を抑えることが可能になります。
最近では、病気やケガで働くことができなくなった時の給料の役割を果たす保険がありますが、これは完全に医療保険と被ります。
ポイント4:生命保険は公的な保障の「補填」と考える
公的な保障の存在を知らずして民間の保険など検討のしようもないほど重要です。厳密に知るのは難しいですが、次に挙げる最低限の内容は押さえておきましょう。
死亡時の遺族の状況によっては遺族年金が出ます。遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。会社員で子ども(原則18歳の年度末までの子、以下子ども)がいる場合は、両方の遺族年金に該当し、子どもの人数ごとに金額も増えていきます。会社員の配偶者で一定の高収入でなければ、子どもがいない場合でも遺族厚生年金のみ受給可能です。
少し心配なのは、遺族厚生年金のない個人事業主です。子どもがいればかろうじて遺族基礎年金はありますが、配偶者のみの場合はありません。働くことが難しい個人事業主の配偶者は注意が必要です。
病気やケガに関しては、会社員は「傷病手当金」という強力な給付があります。おおよその給料の3分の2ほどが1年半支給されるので、かなり手厚いですね。
1年半後の状況で障害認定となれば、障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受け取れる可能性も出てきます。
個人事業主には傷病手当金と障害厚生年金が原則ありません。
また、会社員でも個人事業主でも「高額療養費」という給付はあります。これは、医療費(保険適用の医療)が高額になった場合でも無限にかかることはない、というものです。一定の高収入以外の大半の方は、9万円程度が上限となり、それ以上払わなくて良いので安心材料になります。
まとめ
かつて保険と言えば、生命保険、損害保険、第3分野保険(カタカナ生保会社のがん保険など)に3つに分かれており、他の分野に入らないよう法律で住み分けされていました。
その規制が解かれ互いの分野に進出できるようになる改正から約20年が経過しました。
この改正により、保険のバリエーションが広がり、また、死亡保険と医療保険のパッケージ商品からバラ売りが進み、例えば死亡保険は要らないけど医療保険だけなど、必要なものだけを契約しやすくなりました。複数の保険会社の商品を扱う窓口販売やファイナンシャルプランナーらの発信する情報も増え、かつてよりも生命保険料を圧縮できている家計は増えています。しかし、まだまだ生命保険料が家計を圧迫しているケースが多く見受けられますので、生命保険料が高いと感じている方はぜひとも確認してみましょう。
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