森戸やすみ先生に聞く「授乳中です。クリスマスやお正月も、お餅やケーキなどは食べないほうがいいって本当?」

文=森戸やすみ
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GettyImagesより

Q.授乳中です。クリスマスやお正月も、お餅やケーキなどは食べないほうがいいって本当?

A.お餅やケーキを食べても乳腺炎にはなりません。普通に食べて大丈夫。

 毎年クリスマスや年末年始が近づくと、授乳中のお母さんたちから「たまにはケーキを食べてもいいですか?」「お餅を食べたらいけないんでしょうか?」「ご馳走はよくないと言われましたが、本当ですか?」などと聞かれます。そのため、私は毎年、年末になるとSNSなどでも、「常識的な範囲なら何を食べても大丈夫です」と言い続けています。授乳中に食べてはいけない食品はありません。

 なぜ、こんなふうにあまりにも当たり前のことを言うかというと、一部ではありますが、助産師や保健師などの医療職、一般の人たちが根拠なく「授乳中にお餅や油っこいもの、ケーキなどを食べると、乳腺が詰まって乳腺炎になる」などと言っているから。そういった間違った情報が広まることで不安を感じたお母さんたちから毎年同じ質問されるため、繰り返し情報発信しているのです。根拠のないことを言って、他人の生活に無意味な制限を設け、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を低下させるのは明らかによくないことでしょう。

 たとえば、ケーキなどに含まれる脂肪分を多く摂っても、母乳中の脂肪の量は増えません。さらに乳管の太さ(直径)は表層近くで2mm程度、一番細いところでも毛細血管よりも太いことがわかっているため、赤血球よりも小さく、それぞれが合体して巨大化することのない脂肪が詰まるとは考えられません。つまり、高脂肪の食品のせいで乳管が詰まり、乳腺炎になるということはないのです。同じように、お餅を食べたからといって乳腺炎にはなりません。

 では、乳腺炎の本当のリスクは何かというと、以下の①〜⑤によって、乳房に大量の母乳がとどまってしまうことです。

①赤ちゃんが飲む量よりも母乳の分泌量が多くなること
②抱っこ紐や下着などによる締め付け
③授乳のリズムが乱れること
④授乳姿勢がよくないこと
⑤疲れや肩こりがあること

 特に年末年始の忙しい時期は、来客などもあって、いつもの授乳リズムが乱れて間隔が空きすぎてしまったり、疲れたりすることが原因かもしれません。ですから、忙しい時期こそ、 なるべく体を締め付けないような服を着て、 正しい姿勢でこまめに授乳して飲み切らせることを意識し、 疲れすぎないよう気をつけてみてください。

 せっかくの楽しいシーズンですから、ご自身の健康に差し支えない範囲で、いろいろな美味しいもの食べ、イベントなどを楽しんでくださいね!

<今回のポイント>

○授乳中に食べてはいけない食品はありません
○乳腺炎の原因は食品ではなく、母乳がたまること
○健康に悪くない範囲でいろいろなものを食べて

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