
かつて養蚕を営んでいた農家からもらった「まぶし」(サナギがまゆをつくる際の足場)にびっしり作られたマユを、標本にしたりもするカエルーランド。
私が過去に飼育したカイコのいくつかは、カエルーランドのそうした活動のおすそ分けです(「カイコくださーい!」と、一方的に突撃しているのですが)。さらにカイコの飼育で大量に出る糞を、お茶にするためにいただくこともあります。「ポストに糞入れておきました!」なるカエルーランドからのDMは、字面だけ見るとバイオテロであるものの、私にとっては昆虫食活動を支えてくれるありがたい物資。不審者扱いの副産物……でなく、横のつながりってありがたいですね。

小学校で昆虫観察の授業を行うカエルーランド浜野さん。
浜野:小学校だけでなく、幼稚園などにも出張展示に行くことがあるのですが、子供よりも保護者からのほうがおもしろい質問が飛び出すんですよね。「マユを作ったあと、カイコのサナギはどこに行くんですか?」とか。「ええと……哲学的な話でしょうか?」って思いました。養蚕の現場では、糸をとるために繭を煮るので中のサナギは死にます。他には虫がマユを体の外にいくつも作ると思っている人。虫が卵から産まれること、幼虫が脱皮することに驚く人。子供は基本先入観がありませんし、小学生は授業でひととおり知識を入れてから観察という流れですので、そこまで突拍子もない質問は飛び出しませんが、保護者の視点はなかなかに新鮮です。生き物に興味がない方々は、こういう感覚なのかということを教えてもらえましたね。
不審者扱いされたトラウマを払拭するため、まだまだ虫で人前に出ていきたいと語る浜野さん。虫活動にも、いろいろな入り口、モチベーションがあるものです。虫で生まれたデマ・誤解を、虫で打ち消しに行く。「だから何だ?」と聞かれれば、特に何の教訓もありません。ただ、こんな入り口もあるんだなあと、度々反芻してしまう私のお気に入りエピソードなのです。
続く後編では、同じく小学校で虫授業をしている女性に聞いたお話をお届けしていきましょう。
後編「大人になってから「虫沼」にハマり、仕事で昆虫教室を主宰するまでになった加藤さんの話」に続く(11月27日更新予定)

『むしくいノート びっくり!たのしい!おいしい!昆虫食のせかい』(カンゼン)
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