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Q.母乳で育てたいと思っています。妊娠中からできることはあるでしょうか?
A.妊娠中にできることはありませんが、産後すぐからできることはあります。
母乳育児をするために、妊娠中にしたほうがいいことは特にありません。乳房や乳頭のマッサージをしたほうがいいという説がありますが、根拠は薄いようです。ただ、出産後、母乳育児をスムーズにするためのポイントはあります。それは産後すぐから、正しい姿勢で1日8回程度の授乳をすること。
母乳を作るために必要な「プロラクチン」というホルモンの分泌量は、残念ながら、産後すぐから急激に減っていきます。このプロラクチンの分泌量が下がり切らないようにするためには、出産後24時間のあいだに頻繁に乳首を刺激する(授乳する)こと、夜中も授乳することが効果的なのです。
ところが問題は、産後すぐのお母さんは、もちろん個人差もありますが、大変疲れてきっていることです。たとえば経膣分娩だとしても遷延分娩(いわゆる難産)で一昼夜寝ていないというお母さんもいるでしょうし、帝王切開のダメージで身動きもとれないお母さんもいます。そういった状態で、夜中も含めて、何度も自力で起き上がって赤ちゃんを連れてきて授乳するのは困難でしょう。また最初は、適切な授乳姿勢をとるのは難しいと思います。
ですから、本当なら医療者が、母乳育児を希望するお母さんの乳房のところに赤ちゃんを連れてきて、正しい授乳姿勢がとれるようサポートできるといいのですが、なかなかそれだけの人員的な余裕のある医療機関はないと思います。せめてお母さんがラクで赤ちゃんがいっかり飲める授乳姿勢を教えておいてもらう、授乳クッションを使うなどするといいでしょう。
また、できるだけ授乳をする、といったふうに完璧を目指さないことも大切です。授乳だけが育児ではありませんし、乳児期が終わっても子育ては続きます。母乳はいいものですが、粉ミルクを使ってはいけないということはありません。無理をしすぎない範囲でやってみてくださいね。
<今回のポイント>
○妊娠中の授乳の準備は不要
○産後すぐから1日8回程度の授乳を
○ラクで飲ませやすい授乳姿勢を聞いて
○完璧を目指さず、できる範囲で!

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