
写真:ZUMA Press/アフロ
連載「議会は踊る」
立憲民主党の代表選挙が始まっている。
泉健太衆院議員、逢坂誠二衆院議員、小川淳也衆院議員、西村智奈美衆院議員の四人が立候補し、連日激論が繰り広げられている。
今回の選挙の特徴は、良い意味でも悪い意味でも四人の候補者の差がメディアで取り上げられない点である。これまでの民主党、民進党の代表選挙においては、路線対立が常に強調されてきた。前原誠司衆院議員や細野豪志衆院議員などの「党内保守派」と呼ばれる議員が出馬し、共産党との協力関係の是非が争われていた。
今回の代表選挙においても、共産党との協力関係は4候補とも一定の見直しは必要としている。少なくとも、政権選択である衆議院総選挙と、参議院選挙はまた別の前提が置かれることになるだろう。しかし、基本的に4候補とも共産党との選挙協力には意味があったとしており、大きな選挙協力の枠組みが変わることはないだろう。
このような「静かな代表選」について、メディアでは様々は意見が見られる。
違いが見えない、盛り上がらないとの意見もある。事実、4候補の中で最も保守色の強い泉健太候補ですら、立憲民主党結党時の代表選において、枝野幸男前代表との差は大きく見られなかった。泉健太候補は、最もリベラル色の強い逢坂誠二候補とも共同で新党の政策を作ってきたことから、気脈を通じている。
自由民主党総裁選との比較を考えてほしい。総裁候補四人の主張は、大きく異なっていた。極めて保守色の強い高市早苗候補とジェンダー政策を全面に出して戦う野田聖子候補、あるいは再分配を訴える岸田文雄候補の間に、共通点はあっただろうか。
この連載でもつねづね述べてきたとおり、諸外国の政党の党首選挙で、ここまで大きな政策の方向性が論ぜられることは普通はありえない。
本来、政党は政策を掲げて、その政策に沿った候補者を擁立するものだ。その意味では、立憲民主党の代表選挙において大きな違いが見られないことがある意味当然と言える。
メディアの意義は、「違いが見られない」などと報ずることではなく、4候補の方向性の違いについてしっかりと取り上げ、有権者に提示することだろう。
例えば、泉健太候補は執行部の半数を(可能な限り)女性にすることを提案し、逢坂誠二候補は、衆院選の各ブロックの単独比例候補の一位を女性候補にすることを提案している。
こういったジェンダー政策の違いなどは興味深い論点ではないか。
違いが大きければ「バラバラ」、違いが小さければ「詰まらない」と揶揄されるのが野党の代表選の常ではあるが、波少なく静かな論戦こそ、しっかりとした党運営の前提になるのではないか。