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あけましておめでとうございます。気づけば今年で8年目に突入する本連載「スピリチュアル百鬼夜行」、今年もどうぞよろしくお願いします(我ながら、いつまでやるんだろ)。正月の風物詩といえば、門松もそのひとつ。神様が宿る縁起のいい植物として使われる松は、比較的どこでも見られる植物ですが、これほどまでに目にする機会はそうありません。
さてこの松ですが、コロナ禍では局地で妙な盛り上がりを見せています。私が「野良発酵」と呼んでいるジャンルでも、「松を入れた水を使えばさらに最強!」とされていました。預言書「日月神示」に「松を食せば病も治る」とあることも、一部の層の心をくすぐるようです。
2021年9月のYahoo!知恵袋にはこんな質問が投下されています。
「松ジュースを飲んでいれば、コロナにもかからないし、ワクチン打たなくても良いのは本当ですか? Facebookグループ 松を飲んだり食べたりしてマツ会というグループでは、そのような内容が沢山あります。」
本当かどうかと聞かれれば、普通に考えて答えは「NO」ではないでしょうか。しかし松は、漢方や民間療法でも使われてきた歴史のある植物。そうした迷信が出てきても不思議はなく、昭和初期に登場した「日月神示」で松を食えと出てきたのも、当時はそんなに驚くものではなかったのかも。そもそも医療が発達していなかった時代は、栄養価が高い食べ物やめずらしい食べ物を「不老不死」「万病に効く」と謳うのもよくある話(※)。好奇心や遊び心、昔ながらのものを尊ぶライフスタイルなどから、そうした考えを現代も取り入れている人たちがいるということでしょう。
※例・イチジクやハチノコ、ジュゴンは不老長寿の食物と言われ、江戸末期にコレラが流行したときは治療薬として虎の頭蓋骨が配られた。
……と穏やかに終わらせたいところですが、ここ数カ月、松愛好家たちのグループページを眺めていたところ、なかなかにディープな世界が広がっていましたので、やはりこの場でご報告させていただきましょう。
Yahoo!知恵袋で触れられたグループの中心人物は、『野草を宝物に』(ヒカルランド)なる本の著者である小釣はるよ氏。

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同書によると、父の癌をきっかけに野草に親しむようになり、そこから「松の底力」を実感するようになったのだとか。同書を発行するヒカルランド、数々のぶっ飛んだ本を量産しつづける出版社。スピリチュアル系の話題を嗜む方ならピンと来るハズ。そうです、だいぶ向こう岸のお話でした。
同書で紹介され、巷に広まっている松の楽しみ方は「松ジュース」です。私も作って飲んでみましたが、わずかな酸味がりんごを思わせ、とても爽やかでした。ケールの青汁よりも、飲みやすいかも。こした後の松葉も積極的に嗅ぎたくなるような清涼感があり、「浄化」と言われたら納得してしまいそう。飲用時のわずかな違和感は、飲んだ後に口の中に残る後味です。

カットした松葉と水をミキサーにかけると、松葉の青汁的なドリンクが完成
しかし自作の松ぼっくりジャム(なんだそれ)を食べたときに発生したゴワゴワイガイガほどではありません。同書には「ヤニがつくので専用のミキサーを使ったほうがいい」とありましたが、今のところ葉先を使うぶんにはこびりついた様子はありませんでした(わざわざ買っちゃったよ! ちなみに松ぼっくりは、煮ると鍋が大変なことになるのでご注意を)。
このジュースのほか、松の葉を酒に漬けるのは民間療法の世界でもど定番です。砂糖と水を加えて作る「松葉サイダー」も古くから存在しています。しかしFacebookのグループではそれら基本形も楽しまれつつ、メンバー各自が独自アレンジを展開していました。
ご飯に入れて炊いたり、健康にいいからとペットの犬に食べさせたり。食用以外ではこんなチャレンジや感想、情報も報告されています。
・ヘナに松葉を加えて使う
・電磁波対策として部屋の中に枝をぶら下げる
・痛みのある所に巻いたり貼ったりする
・松葉を加えたクリームをアトピーの子どもに使用する
・「松葉の還元水」なるものを赤ちゃんに塗る
・束ねた葉で頭頂部をトントン刺激すると、片頭痛やイライラが緩和する
・葉を敷いて寝ると体の末端がスッキリ
・松葉水で頭皮マッサージをしたら髪質が変わった
・癌にいいと聞いた
・松葉ジュースを飲んでたら暴食しても太らなくなった etc……
創意工夫と迷信が入り乱れた、怒涛の松ワールド。
グループ内の投稿にリンクされている小釣氏のHPには、松にハマったきっかけがサラリと書かれていますが、同書にはもう少し詳しく書かれています。
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