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特別養子縁組によって母になった著者。娘のアンちゃんが小さなうちから養子であることを伝える「真実告知」をしながら信頼関係を築きました。ところが、魔の反抗期は高校になっても続き、とうとうお祭りの日に補導され、停学になってしまうことに。
第3章 アンの子ども時代:高校生のアン
高校生になったアンは、大人っぽくなりたくて、いつの間にかたくさんのメイク道具をそろえ、派手なファッションに身を包んでいました。そんな背伸びをしていた頃に大事件が!
アンが、毎年楽しみにしていた夏祭りに出かけると、いつもの仲良し4人組のうちの3人と学校をやめて働いていた友達が待ち合わせ場所の路上で缶チューハイを飲んでいたそう。アンは内心ギョッとしながらも、お祭りで浮かれているみんなと一緒に立ち話をして盛り上がったようです。この時点では、全員がつけまつげもバッチリのお姉さんファッションだったので高校生には見えず、若い女性のグループだと思われていたことでしょう。
ところが、アンが合流した直後、「あっアンちゃんたちだ〜。来てたんだ〜」と真面目なクラスメイトたちも声をかけてきて集まったのです。その子たちはアンたちと違って、おとなしい服装に黒髪で、どう見ても高校生……いえ中学生に見える子もいました。少人数の学校だからか、うちの子の様な困ったちゃんも真面目な子たちも仲がよくて、それは大変いいことなのですが、グループがふくれあがって目立ったのでしょう。
当然のごとく補導されました。一網打尽です。見かけは大人っぽくても、中身はまだ子ども。警察に事情聴取されたら誤魔化すことも、しらばっくれることもできません。翌日、自分で学校に申告するよう約束させられたそうです。
その夜、アンは友だちの家に泊まる予定だったので、翌朝早くに私が車で迎えにいき、何も気づかないまま、それぞれの家に送り届けました。そういえば、車中が妙に静かでした。制服に着替えたアンに朝食を食べさせ、学校へ送り出すと、間もなく恒例のお呼び出しの電話が!
案外に小心なアンたちは、校長先生に飲酒したことなどを赤裸々に告白したようです。正直なところは褒めてもらったようですが、未成年の飲酒ということで、居合わせた全員が3日間の停学処分に。アンは飲酒をしていなくて、買ったときにもいなかったので、担任の先生が気の毒がってくれましたが、学校の規定だということで停学は受け入れました。
自分の娘を褒めるのもなんですが、男前な性格のアンはいさぎよく処分を受けました。既に起こってしまったことに、くよくよしない点は素晴らしい長所だと思います。曰く「缶チューハイを買うときに一緒だったとしても、とめたかどうかはわかんないしね。まあ仕方ないよ」とのこと。
それよりも真面目な友だちのほうを心配していました。「大丈夫かなあ、私と違って叱られてるかなあ」。私は叱るポイントが見つけられなくて、笑うしかなくて。そしてアンが困ったのは、反省文の宿題でした。
「ねえ、お母さん。私は何を反省したらいいの? 私が待ち合わせ場所に着いたときには、もうみんな飲んじゃっていたんだけど」
さて、この話を大甘の夫にすると、だれかを傷つけるとか、窃盗などの深刻な理由による停学ではなかったので、愉快なエピソードになってしまいました。私たちは、いわゆる優等生になることをアンに求めていなかったので、のんきなものです。
そもそも停学は、夫も経験済み。アンの停学中、たまたま自宅からの通勤だったから、自慢げにしゃべるわ、しゃべるわ。パチンコに通ってお小遣い稼ぎしたとか、あんまり腕がいいのでパチンコ屋さんに「今日はこれくらいで勘弁してくれ」と頭を下げられて数千円を渡されて帰らされたとか、それで儲けたお金でバイクを買って事故って停学になったとか。最後には「一度は停学くらったヤツじゃないと信頼できん」などと暴言を吐く始末。我が家の困ったちゃんは、娘だけじゃなかったんです。
夫にとっては、娘がずるく立ちまわってひとりだけ停学を免れていたら、そっちのほうが許せなかったかも。飲んでもいないお酒で停学処分という不条理さも「世の中とは、納得いかんことで成り立ってるんだから、アンにとっていい勉強になったな」だって。
よそから見たら大変そうだったろう我が家も、その波に揉まれていると、それはそれで結構楽しいのでした。
次回更新は1月24日(月)です。
【特別養子縁組について】
特別養子縁組は、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、親子になりました。
厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html
※この連載は、書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです。