フェミニズムを知って幸せになった石川優実が考える「早く知っておきたかった」社会のこと

文=三浦ゆえ
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 フェミニズムを「知らなかったころ」と「知ってから」、女性差別があると「気づいていなかったころ」と「気づいてから」ーーその両方が、今冬に発売された『もう空気なんて読まない』(河出書房新社)には詰まっている。同書は、石川優実さん初の全編書き下ろしエッセー集だ。

石川優実さん(以下、石川)「子どものときから20代まで、いま振り返ると『フェミニズムを知っていたかった』ということが本当に多いんです。そこからフェミニズムに出会って、今がある。そんな自分自身のことをエッセーにまとめました」

 自分の脚で踏ん張る術を知らず、違和感を覚えながらも流されるように人生を歩んできたひとりの女性が、あることを機に地に足がつき、足取りもしっかりと力強いものに変わっていく。その過程に、自分のこれまでとこれからを重ねる読者は、きっと多いだろう。

 あること、というのは2017年末、グラビアアイドルとして活動するなかで遭った性被害を「#MeToo 私も」としてつづったブログだった。筆者もそのときのことをよく覚えている。性被害を告発する#MeTooムーブメントは、アメリカのショービズ界からはじまり、世界中に波及した。それがついに日本の芸能界でも、と食い入るようにして読んだ。この女性の言葉を直接聞きたい、と思い、連絡をとった。

 そのとき石川さんは30歳。フェミニズムを知るのに、女性差別があると気づくのに、何歳であれ遅すぎるということはそもそもないが、早いというわけでもなかった。

石川「この年齢で知れてよかったという気持ちと、やっぱり10代のころに知っておきたかったという気持ちとの両方があって、複雑ですね。10代のときはそうした知識や情報に触れる機会がまったくなかったんですよ。フェミニズムには歴史があって、その当時活動していた方もたくさんいたはずですが、学校でも家庭でもそれを受け取る環境がありませんでした」

 石川さんは同書で、高校生のときに遭った性被害を明かしている。それは、その後の人生に長く影響を及ぼしつづけた。

石川「10代ですでに、女性差別を内面化してしまっていたので、嫌だと感じた自分がおかしいと思ったんですよ。そこからずっと自分のことを自分で決められなくなりました。私がフェミニズムと出会ったのは#MeTooしたからではありますが、被害に遭わないと女性差別があることやフェミニズムに気づけないっておかしいですよね。自分より若い人にはそんな想いをしてほしくない。10代のときに内面化するなら、それは女性差別でなくフェミニズムの考えであってほしいと思うし、自分もそうでありたかったです」

 大人として社会を生きていくうえで、「これを早く知っておきたかった」「学校で教わっていたかった」と思うことは実に多い。石川さんにもそんなことがたくさんある。その最たるものが「政治」だと言う。

石川「政治と自分の生活、幸せがつながっているなんて、考えもしなかったですね。10代の私が考える幸せって、恋愛とか結婚とかセックスとか、あとはメイクしたり好きな洋服を買ったりということでした。それは政治ともフェミニズムとも無縁のものだと思っていたけど、そんなことないんですよね。公民の授業にはそんなに時間が割かれなくて、税金のことを聞いてもまだ自分で納めていないからよくわからない。たとえば選挙のことを学ぶなら、模擬選挙をするなどして、実感をともなうような内容だったら、違ったのかもしれません」

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