
(C)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
ディズニーの最新作『ミラベルと魔法だらけの家』が公開された昨年、日本では主人公ミラベルのメガネをめぐり、「多様性」「ポリティカル・コレクトネス」、さらに「日本のアニメにははるか以前からメガネのキャラクターがいた」といった議論が巻き起こった。
実のところ、同作にはメガネの他にも重要な多様性が盛り込まれている。いや、多様性を前面に押し出した作品とすら言える。
まずはこの動画を見て欲しい。
Another young child is going viral for seeing themselves in the new Disney film ‘Encanto.’ Take a look at the reaction of young Manu as she points out the character Mirabel to her mom Hannary ❤️
(via manubaby03) pic.twitter.com/3RSDCylvCL
— NowThis (@nowthisnews) January 19, 2022
ブラジルに住む2歳の女の子、マヌがミラベルを指差して、「あれはわたし、ママ! わたし!」と、まだたどたどしいポルトガル語で訴えている。この動画はSNSで広く拡散された。
マヌの動画に先駆け、ミラベルのイトコ、アントニオにそっくりな2歳の男の子、ケンゾーの写真もSNSを駆け巡っていた。両親は朝のニュース番組でインタビューされ、父親はケンゾーが画面をじっと見つめ、手を叩いて観ていたと語っている。母親は、自分が子供の頃にこんな体験はできなかった、ディズニー初の黒人プリンセス、ティアナが主人公の『プリンセスと魔法のキス』が公開された時、自分はすでに年長だったから、と答えている。
母親はケンゾーとアントニオの写真に #RepresentationMatters (リプレゼンテーション・マターズ)のハッシュタグを付けてポストしたのだった。Representationは「表す」「描写する」といった意味を持つ単語。近年は、マイノリティも自身の姿を堂々と前面に押し出す必要がある、分けても映画やアニメなどに主要キャラクターとして登場させようという意味で使われる。その効果、結果がまだ幼いマヌやケンゾーのリアクションなのだ。
この投稿をInstagramで見る
人種混合ファミリー
『ミラベルと魔法だらけの家』に登場するのは、南米コロンビアの山間の街に暮らすマドリガル一家だ。親族ではあるが、人種的外観(肌の色、髪の質)がバラバラだ。ミラベルとアントニオも母親同士が姉妹のイトコだが、ミラベルは典型的なラティーナ、アントニオは黒人に見える。ラティーノの一族ではまま見掛けられることだ。
一家の長であるアルマおばあちゃんは50年前に三つ子を生んだ。アルマは肌の色が薄く、まっすぐな黒髪だが、三つ子のうち2人はウエービーな黒髪で、1人はカールの強い赤毛だ。黒髪のフリエッタは結婚して3人の娘、イサベル、ルイーサ、ミラベルが誕生した。この3人も外観が異なる。赤毛のペパはアフロ・ラティーノの夫との間に、やはり3人の子をもうけた。ドロレス、カミロ、そしてアントニオ。3人の外観はやはりバラエティに富んでおり、末っ子のアントニオが父親似だ。
ラテン系(ラティーノ、もしくはヒスパニック)の人種的外観がさまざまな理由は、コロンブスに由来する歴史だ。ヨーロッパ人がカリブ海諸島と中南米を植民地化し、アフリカから黒人を奴隷として連行した。この経緯があり、先住民・欧州白人(主にスペイン人)・アフリカ黒人が混血していったのだった。
現在、中南米/カリブ海の人種・民族の比率は国や地域によってばらつきがある。『ミラベルと〜』の舞台となっているコロンビアでは、白人もしくはメスティーソ(白人と先住民のミックス)が大多数を占め、アフロ・コロンビアン(アフリカ系)7%、アメリインディアン(先住民)4%となっている。マドリガル一家が同国の国勢調査に答えるとすれば、アントニオと父親が「アフロ・コロンビアン」を、他のメンバーは「白人もしくはメスティーソ」を選ぶことになるだろう。
1 2