『シジュウカラ』の、ふんわりしたモラハラ夫が斬新 ぼちぼちテレビ日記

文=西森路代
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1月24日

 『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ)は、一話はけっこういいドラマと思ったのに、二話、三話と見ていくと、BGMが気になって仕方がない。前半に何度も何度も「エンディング?」と思う場面があったし、「この場面はすごく重要な意味があるの?」と思わせる箇所がいっぱいで、どこが重要な山場かがわからなくなってしまう。Twitterを検索しても同様の意見が多かった(次の週にはそこらへんは多少気にならなくなっていた)。

 『逆転人生「日本初のセクハラ裁判が教えてくれる15のコト」』(NHK)。まだ日本でセクハラという言葉が使われていなかったバブル時代に、初めてセクハラの裁判を行ったライターの方の話。あの時代、声をあげられたこと自体に敬服する。

 性的な噂を流す上司の編集長の動機が「自分の沽券を守るため」のように見え、最初はライターの女性に理解のあった専務が、その編集長を「男にするため」に仕事のできた女性を解雇したのが許せない。裁判でセカンドレイプをされているシーンを見てドラマと映画の『ファースト・ラヴ』を思い出した。

 また、実際に裁判に関わった、もともと女性蔑視のあった裁判長が、法廷で「女性が飲み歩くのはふしだらだ」と指摘した同僚男性の言葉を聞いて疑問を持ち、海外のセクハラの資料を勉強して女性を勝訴に至らすことができてよかったとコメントしていたが、こうやって考えを改める姿がすがすがしくて、見ていて泣けてきてしまった。ゲストのマヂカルラブリー・野田クリスタルが裁判長の言葉を受け、「今までこびりついていた偏見を指摘されてハッとなるのは恥ずかしいことだと思っていたが」「もっとハッとなろうと思った」と言っていたのもよかった。

1月27日

 『となりのチカラ』(テレビ朝日)を一週目と二週目を続けて見る。主人公のチカラは、最近よく記事などで見かける、繊細で他人の痛みを自分のことのように感じる人なのか。そんな人が個人主義が当たり前となったマンション内にいれば、面食らう人もいるのだろうけれど、彼のような人の存在が、何か突破口みたいになるのかならないのか。いやなるんだろう。誤解もされるだろうし難しそうだけど。

 実際、自分自身でも、近所から何か親子喧嘩みたいなものが聞こえてくると、これを単なる喧嘩とみていいのか、あまりにも酷かったらどこかに電話しないといけないのではと考えたこともあった。しかし、今の世の中、人の生活に関与するというのは、難しすぎる。

 今のところドラマの中には、親による虐待、認知症が出てきた。家庭内での見えない問題が、毎回出てくるのだろう。とすると、チカラは現代の問題を視聴者に案内する人の役割もあり、マンション内という設定でなければ、医者とか、弁護士とか、そういうものでも置き換えることも可能だろう。マンションの住人からそうした問題を見つめるということが新鮮だとも感じる。

 チカラの職業がライターなのは、いろんな人の生活に触れる時間があるからなのではないか。ライターは、大人のなりたい職業の上位に選ばれたそうだが、これを機にまた選ばれるのだろうか。と思ったら、チカラの場合はゴーストライターだった。

 私自身は、著名な人の本を聞き取って本を書く仕事はしたことがなくて、かといって今からやることはなさそうなので、一回くらいやっとけばよかったとも思ってる。構成の力がつきそうだし。

1月28日

 『Nスタ』(TBS)を見ていたら、池袋を中心にした「ガチ中華」を紹介していた。「街中華」にも響きが似ていてキャッチーで浸透していくのだろうか。調べたら、1月5日の『グッド!モーニング』(テレビ朝日)でも特集がされていたらしい。私はわりと、ここでいう「ガチ中華」に親しんできたのでちょっと複雑な思いが。しかし、こういう消費の流行も、コロナで海外に行けないことの表れだろう。中国でも日本を模したフードコートがあると言うし。

 『シジュウカラ』(テレビ東京)を4週分一気に見る。漫画家をしている忍(山口紗弥加)の元にやってきた若いアシスタントの千秋(板垣李光人)。この千秋が何を考えているのかわからないけれど、引き込まれるのだが、それ以上に忍の夫のキャラクターにくぎ付けに。

 これまで、妻を傷つける夫というと、冷酷なタイプとか粗暴なタイプとかがほとんどであった。この夫は、ふんわりしていて、とりたてて冷酷でも粗暴でもないのだが、ふんわりした口調に嫌味であったり、妻を決して自由にさせたくないのだなというのがにじみ出ていて、こっちのほうが実際にもよくいるタイプなのではないだろうかと思った。今期、前のめりで見てしまうドラマナンバー1。

1月29日

 『中居正広のダンスな会』(テレビ朝日)。90年代から現代までのダンスが振り返られていて、ああ自分はダンスアイドルが洋楽、邦楽、そしてK-POP含めてずっと好きなんだなと改めて思う。実はダンスアイドルについて10000字くらい書いた原稿があるのに、その本の企画自体がうやむやになっているのがあって、思い出すとちょっと腹立つ(けど、なにかしらで発表したいとも思う)。

 BTSの「ダイナマイト」を踊る動画は多い。私はそれを見てTwitterで「BTSのダンス、難しそうだけど、紐解けばそんな難しくなくて、そして踊れるとそれなりに決まって、軽やかなんだよな」と去年の7月につぶやいていたのだが、この番組でも、劇団ひとりが「一時期はみんながマネできるダンスが多かったけど、最近はハイレベル。そういう発注はなくなってきたんですか?」とコメントしていた。それに対して、ゲストのRIEHATAは、「発注はみんなが真似できるバズるムーブを考えてくれって言われるけど、世間が練習しないとできないくらいのものを求めてる」と言っていて、やっぱりそうなんだ!と思った。

 『そろそろ にちようチャップリン』(テレビ東京)の「ボクらの時代2022年冬の特別編」にはこれから注目の芸人がたくさん出ていた中でも、ハイツ友の会が面白かった。

 ネタは、野球がいかに社会の中で王道として当たり前のように扱われているかを、独特のトーンで語るもので、よく武田砂鉄さんがよく言う、「野球で例えたがる上司」、のことを思い出す。ハイツ友の会のこのネタを見ていると、これは確かに、野球を通して当たり前のようになっているマチズモへのツッコミなのかもしれないとも思えた。

1月30日

 配信で少し前のものだけれど『たりないふたり』を。きっかけは、『あちこちオードリー』での若林さんの発言を見て気になったので。

 若林さんは、山ちゃんが、事前に考えてきたことを披露することにつっこんでいたんだけど、やはり若林さんって『あちこちオードリー』をやっている人の発言だなと思う。今のテレビは、考えてきたこと、準備してきたことを披露するモードではなくなってるのかもしれない。最終的にはボロ泣きしてしまったので、改めてどっかで書きたい。

2月4日

 『妻、小学生になる。』(TBSテレビ)は、亡くなったはずの妻が小学生となって、かつての夫と娘の前に現れるという話で、一話を見たときには、小学生が家族のケア役割をやってる? とか小学生に50代の男が元妻だとしても、もう一度結婚しようというところなどに、え……と思っていた。ただ3話を見たところ、生まれ変わったとはいえ、この小学生の妻には小学生の人生があるということが描かれてたので、もうちょっと見てみようと思えた。それと、この元妻の性質として、なんでもエネルギッシュにやってしまうために、周りがダメになっていくところがあること、それを小学生の本人が知って、自分も弱いところを見せてもいいんじゃないかと気づくようなところは、わりといい方向なのかなとも思えてきてる。

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