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エセスピリチュアルや疑似科学、謎の健康法などに身近な人がハマったら? そんな体験にまつわる戸惑いや苦しみ、悩みを語ってもらう当連載の「身内がトンデモになりまして」シリーズ。本年はじめとなる今回は、ママ友が「性スピリチュアル」にハマった現在進行形の出来事です。
私の元に連絡をくれたのは、東京都在住の主婦S子さん(以下、S子)。親しくしていたママ友が性に特化したスピリチュアル活動を始めるようになり、その家庭の子どもが苦しんでいるのを、仲間内で何年ものあいだ心配しつづけていると話します。
S子:彼女とママ友として親しくなったのは、お互いの長女の習い事で知り合ったのがきっかけです。彼女は現在エナエル(仮名)と名乗り、ブログで情報発信しながら「子宮」を謳ったセッションや講座、セラピーなどで日銭を稼いでいるようです。仲良くしていた子どもの幼児園時代はそういった活動を始める前で、当時は麻の地味な服を好む自然派ママという雰囲気でしたね。エナエルの自宅にママ友たちで集まり、お菓子づくりやアロマクラフトなどを教えてもらったりしていました。彼女はかなりおっちょこちょいではありますがセンスがよく手先が器用、マッサージなども上手でそれを仕事にしていないのが不思議なくらい。見た目はかわいらしくほんわかしていて、私は彼女に憧れの気持ちすら抱いていました。
手仕事は好きなようだけど育児にはあまり熱意を注がず、その当時からセミナーに通いまくりだったというエナエルさん。セミナーに行くからと子どもたちをS子さんやママ友宅に預けっぱなしという状況がつづき、少しずつママ友たちに戸惑いや違和感が発生してきます。エナエル本人の話からも子どもにあまり関心を寄せない暮らしぶりが垣間見られ、ママ友たちの間でチラホラと、エナエル家の子どもたちを心配する声が上がるように。
S子:「仕事につながる資格を取るための教室に通いたい」と聞き、ママ友一同かなり頻繁にエナエル家の姉妹を預かっていました。うちの子どもたちもエナエル宅で遊ばせてもらうことがあったので、最初はお互い様だと思っていたんですよね。でも夕飯の時間を過ぎてもお迎えに来ないこともあったり、姉妹の習い事の送迎まで強引に押し付けられたり、時には夜迎えに来られないからとおばあちゃんの家に連れていくようお願いされたこともありました。有料託児所へのお迎えを突然頼まれたママ友もいます。「〇時過ぎると料金高くなるから、すぐ引き取りに行って!」とメッセージが来るんですって。エナエルは基本、新しいものが大好き。夫婦で素敵な食事を楽しむ様子などもSNSに投稿されるのですが、その一方で子どもたちはいつもいつも納豆ご飯ばかりです。「子どもたちはどうせ食べないし」と言い、あまり手をかけていない……というよりネグレクト気味でした。
子守を押し付けられる。それはママ友付き合いにおいてレッドカード寸前の要注意フラグであるものの、当時のS子さんたちは「何か難しい資格の勉強が大変なんだ」と解釈し、できる範囲で預かるようにしていたと言います。しかしそれも、今となっては後悔の種に。
S子:あとから知ったのは、エナエルが通っていたのは真っ当な資格の勉強ではなく、スピリチュアル系のお茶会だのホテルでのランチ会だの、怪しいセミナーだったんですよね。その結果、現在の彼女は立派な子宮系女子に仕上がりました。何でもかんでも「子宮からのメッセージ」「マスターベーションで解決」です。自分を満たし女性性を開花させて宇宙や女神と繋がれば、家族皆が幸せになるという謎の発信をしています。しかもセミヌードの自撮り付き。それを見ていると、自分たちもおかしな活動に加担してしまったようで、暗い気持ちになるんです。
S子さんとエナエルさん家の長女は今、ともに高校2年生。エナエル家の姉妹と道で偶然会うと、誰もがショックを受けたと話すほどに小さく細く、明らかに顔色も悪いので、皆が健康状態を心配すると言います。
S子:子どもたちが小さいころ、一緒に大きい公園などに連れていくと、エナエル家の子どもたちはすぐにお腹が痛い……と座り込んでしまっていたのも思い出されます。食生活や健康状態については小学校でもずっと先生から言われていたようなんですが、結局そのままだったようですね。あくまで憶測ですが、食べないことでSOSを出していたのではなんてことまで考えてしまいます。また、エナエルはマルチ系のアロマを飲むことにハマっていた時期もあり、その当時は顔がパンパンに腫れ、子どもたちは湿疹だらけ。エナエル本人は「ストレスが体に出た」「デトックス」と言っていましたが、ママ友たちと「この前飲んでいたアロマのせいじゃない?」と震えましたね。そんな具合に子どもが巻き込まれているので、かわいそうで仕方がありません。
S子さんから送られてきたエナエルのブログを見ると、「性のお話会」などを主催し、ヒーリングや自己啓発講座、マッサージ講座といったサービスも行っている活動が報告されています。ネットショップも開設され、そこには腟に入れて使うヨニエッグやセックストイなど、下半身中心のスピリチュアル系グッズがズラ~リ(こういうの、どこで仕入れるんでしょ)。そしてブログには腟や子宮に想いをめぐらせる日常がつづられ「婦人科検診の前にはグッズで腟のマッサージをしてから」「自分と対話するには、マスターベーションが最適!」という攻めた内容が満載。
これを子持ちの母親が顔出し(しかも下着姿の写真付き)で書いているという事実に、衝撃を覚えます。子持ちが性的な発信をしてはいけない法はありませんが、内容の支離滅裂さは、読んでる側の不安をかきたてます。
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