
写真:ロイター/アフロ
ロシアによるウクライナ侵攻が世界中を震撼させている。2月24日にロシア軍による攻撃が始まり、3月4日には同国内にあるヨーロッパ最大規模の原発への攻撃があった。首都キーウ(キエフ)をはじめ、攻撃を受ける都市の惨状が連日報道される中、この戦争はこれまでになかった事象をいくつも生んでいる。
まず、NATOや米国が軍事支援すると第三次世界大戦、核戦争を誘発する恐れがあり、手を出せずにいる。代わりにロシアへの厳しい経済制裁が敷かれている。アップル、ナイキ、マクドナルド、スターバックス、H&M、イケア、シャネルといった他国の企業が商品販売を停止、または店舗閉鎖し、ハリウッド映画も作品リリースを中止。Fedex、UPS、DHLが配達業務を差し止め、ビザ、マスターカードもクレジットカード決済停止措置を取っている。それに先駆けてアップルペイ、グーグルペイも決済停止したことから、モスクワ市民などは地下鉄乗車もままならなくなっている。
次に、ウクライナ人の急激な国外脱出が続いている。すでに200万人以上が国境を越え、ポーランドなど近隣諸国に戦争難民として移動済みだ。近年、2週間弱という短期間にこれほど多くの戦争難民が移動した例はないとされている。攻撃元のロシアを含め世界各国で戦争反対のデモが開催され、ニューヨークのエンパイアステート・ビル、ベルリンのブランデンブルク門、東京スカイツリー、パリのエッフェル塔などがウクライナ国旗の青/黄色のネオンで彩られた。地球上の誰もがウクライナの人々の安全を心から願い、祈っているのだ。これまで一貫して難民の受け入れに頑なだった日本でさえ受け入れ表明を行っている(ワシントンポスト紙は「難民を最も歓迎しない国のひとつである日本」も支援を表明したと報道)。
だが、今回のロシア侵攻によってウクライナ国内外に根深くある人種差別が吹き出す現象も起こった。ウクライナの現状をリポートするジャーナリストたちが、あからさまな白人/欧州至上主義の発言を繰り返した。政治家にも同様の発言をする者たちがいた。さらにウクライナ在住のマイノリティ、中でもアフリカ諸国からの移民や留学生たちが国外に逃れようとした際、「黒人はダメだ」と阻止される事態が起こった。
メディアの西欧至上主義
以下はウクライナ侵攻が開始された直後の欧米メディアと政治家の発言だ。
●NBC(米国)ケリー・コビエラ記者
「はっきり言って彼らはシリアからの難民ではなく、隣国ウクライナからの難民です」「キリスト教徒で、白人で、ポーランドに暮らす人々ととてもよく似ています」ウクライナの隣国ポーランドからのリポート
●BBC(英国)によるインタビュー:ウクライナ副主席検事 デヴィッド・サクヴァレリッツェ
「青い眼とブロンドのヨーロッパ人が殺されるのを見て、非常に感情的になります」
●ITV News(英国)ルーシー・ワトソン記者
「今、ウクライナ人に思いもかけないことが起こっています。ここは開発途上の第三世界国ではなく、ここはヨーロッパなのです」
●BFM TV(フランス)フィリペ・コルベ記者
「(シリア難民についてではなく)、命を守るために、私たちのと同じような車で逃げようとしているヨーロッパ人について語っているのです」
●CBS(米国)チャーリー・アガタ記者
「紛争が続いたイラクやシリアと違い、ウクライナは比較的、文明化したヨーロッパなのです」
●テレグラフ紙(英国)ダニエル・ハナン記者
「ウクライナ人は私たちにとても似ている。これが事態をとても衝撃的にしている。戦争はもはや貧しく、遠隔地にいる人々だけに起こるものではない。誰にでも起こり得る」
●アルジャジーラ・イングリッシュ(カタール)ピーター・ドビー記者(英国人)
「説得力があるのは、ウクライナ人を一見しただけでわかる、その服装です。彼らは豊かな中産階級の人々で、明らかに中東の戦争が続いている地域から逃れようとしている難民ではありません。北アフリカから逃れようとする人々でもありません。あなたの隣に住んでいるであろうヨーロッパの家族と同じように見えるのです」
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