『MUSIC SPECIAL 小泉今日子』『ボクらの時代』今の時代の「気持ちいい」とは ぼちぼちテレビ日記

文=西森路代
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3月10日

 『NHK MUSIC SPECIAL 小泉今日子』(NHK)は、キョンキョンの40年の軌跡として、過去のVTR、本木雅弘や黒柳徹子、YOUのコメント、そして今のキョンキョンの歌などで構成されていた。もちろん全編興味深く見たんだけど、キョンキョン本人のコメント部分で、辞書をひいてアイドルは偶像と知って「今まで見たことがなかった女の子像っていうのをみんなで作ってみようとか、こういう女の子だったら気持ちいいだろうなってことを自分自身が具現化していったような感覚でした」と言っていて、自分がキョンキョンを40年ずっと気にかけながら(もっと言い方はあるかもしれないがあえてこの距離感で)生きてきたことも肯定できるなって思った。

 あとは昔のことを語るときに、「やんちゃな時代がちょっと演じてたかもっていう感じはあります。少し意識的にそういうふるまいをしてたんじゃないかなっていう」と言っていて面白かった。のちのち「それも私になっていた」のだそう。確かに1980年代後半は、そういう空気があった。

 キョンキョンは、この番組で「気持ちいい」という言葉をよく使っていたのが印象的だった。大人になって「気持ちいい」のは「自分が感じたことと言葉がすごくシンクロしてくれる」ことだという。

3月13日

 『ボクらの時代』(フジテレビ)、オズワルド・伊藤俊介×蛙亭・イワクラ×森本サイダー×ママタルト・大鶴肥満が出演。

 恋愛の話になったとき、森本サイダーが、「あんま(恋人を)ほしいとは思わない」と言ったあと、昔マッチングアプリで女性と会って一緒にラジオを聞いたことがあると答えた。そこで伊藤に「(そのときに)何も思わなかった?」と聞かれ、「今思うと、なんとなく世間体でちょっと作ろうかなと思ってたのかなと、付き合ったほうがいいと」と言っていた。質問した伊藤も、「おれもよくわかんないからな」と言っていた。「わかんない」というのが森本サイダーと同じニュアンスでないにしろ、それぞれの考え方をとりあえず尊重してる感じは受けた。

 かつての芸人なら、女性にいって(アプローチして)なんぼ、そうじゃないのは恥という感じだった。芸人でなくとも、そういうのはあったはずだ。会社の男性ばかりの部署で、つきあいで風俗などにいくことをノリで(ノリだからっていいものではない)強要しているというのは聞いたことがあるし、行かないやつはヘタレ扱いにされていたのを10年前くらいなら聞いたことがある。そういうことが、少しではあるけれどなくなったり、そういうのやめましょうよとなったり、そういうものに乗っからない人を、ヘタレと押し付けたりしないことになってるとしたらいいのではないかと思った。

3月17日

 『ダウンタウンDX』(読売テレビ)は「地下芸人の実態SP」。地下芸人の個々のエピソードももちろん面白かったけれど、地下芸人って、既存の考え方とかにどうにもはまれない人たちなんだなということがわかって面白かった。

 端的にいえばアウトローなんだけど、大きな組織に属するとか、なんとなくみんなにあわせるとか、そういうことから距離を置いている感じがある。

 それが昔だったら、ポーズやイキリだったりしたこともあるかもしれないけれど、そういう感じでもなく自由にやりたいという感覚なのかなと。かといって、テレビに出ても、ぎりぎりテレビのルールには合わせている感じもある。むしろ、地下芸人のほうにルールを引き寄せているところもあるのかもしれない。

 地下芸人を見ていると、ふたたびお笑いにはひょうひょうとふざけたりするモードがきてるのかなって思ったり。冷笑とかとは違う感じがあるので、それが悪いという感覚もない。ふざけることができない世の中はいよいよやばいし。むしろ、伝統的お笑い観に縛られている人のほうが、ルールにうるさいイメージがある。挨拶をしない人を恫喝したり、ひょうひょうとふざけた人を楽屋で怒ったり。

 『アメトーーク』(テレビ朝日系)の「第七世代、その後…」。全体を通して見えたのは、第七世代とおだてて木に登らせておいて、今ではその言葉も使わないなんて酷いんじゃない?という感じと、せっかくあったものなんだから、それを否定することなく肯定していこうよっていう感じの二つが存在していた。

 私は去年、『「テレビは見ない」というけれど エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む』(青弓社)という本に参加しているのだが、その中で、6.5世代が、第七世代を目の敵のように、おもしろく扱っているが、経験豊かで盤石なのは、むしろやっかんでいるふりをしている6.5世代じゃないかと書いた。そのようなことを番組内でも言っていた。

3月20日

 『にけつッ!』(読売テレビ)は、ぼる塾がゲスト。千原ジュニアが、誕生日だからということで『千原ジュニアの座王』(関西テレビ)を休んだあんりさんを素晴らしいと思うと、そして「誕生日で仕事を休んでけえへんかった人はふたりめ。一人目はローラ」と言っていた。ぼる塾というのは、こういう働き方とかにしても、ちゃんと自分たちで心地良い方向に改善している感じがある。あ、ぼる塾のあんりさんに、『PHP2022年3月号:ホッとする考え方』(PHP研究所)で、そういう話をインタビューしています。

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