娘と母の本音トーク:「もうひとりのお母さん(産みの母)」について教え続ける真実告知の方法をどう考える?

文=うさぎママ
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GettyImagesより

 特別養子縁組で親子になった著者とアンちゃん。幼い頃から養子だと伝える「真実告知」をして確かな関係を築き、大人になった今ではよりなんでも話せるようになりました。今回は、産みの母について教え続ける真実告知の方法についてのトークです。

第4章 花ざかりのアン

 近年知った新しい真実告知の方法のひとつが、「迎えた日から、もうひとりのお母さん(産みの母)の存在を教え続ける」というもの。

 毎日のように産みの母の写真を見せたり、熱心な方は日本地図で住んでいる町を教えたり、手紙を受け取ったりするケースもあるそうです。このことを娘のアンに話したところ、思わぬ反応が返ってきて驚きました。

娘「養子であるという真実を知らせることには賛成だよ。でも“もうひとりのお母さんがいる”という言い方は、私はよくないと思う。二度と会ったりしないかもしれない人、一緒に暮らしたりもしない人はお母さんじゃないし、お母さんにはなれない。今は大人になったから“もうひとりのお母さん”とか“本当のお母さん”って言われても平気だけど、小さな頃にそんな言い方されてたら、頭が混乱して困ったと思うな〜」

私「ああ、自分とお母さんの関係がわかりにくくなるんだね」

娘「そう。あとは親に強く叱られたりしたときに、子どもって勝手だから“もうひとりのお母さんのほうが優しいかも”と夢みたり、逃避したりするかも。それは子ども自身にとって、いいことじゃないと思う」

私「うちで、“お母さんは私だけ”って伝えていたのはよかったってこと?」

娘「うん、すごく安心できた。それに生まれたときから“もうひとりのお母さん”の存在を刷り込まれていたら、それが普通の家庭だと思い込むでしょう? 小学校入学くらいになって、よその家とちがいすぎることに気づいてもつらいんだよね。小・中学生は、みんなと一緒なのがいちばん居心地がいいから。少なくとも私はそんな子どもだったよ」

私「確かに、みんなと一緒がいいと思う子は多いかもしれないね」

娘「もちろん、私は自分が養子だということを知っていたから、少しは周囲とちがうと自覚していたけど、うちはごくごく普通の家庭だったし、そんなに養子であることが話題にならないから忘れていられた。正直言って、自分が養子だという事実は受け入れられても、それを喜ぶことはないと思う。私は、いつもは忘れていられることがありがたかったよ」

私「そうか、そういう視点は思いつかなかったよ」

娘「それでもときどき思い出しちゃうし、思い出したときは自分なりに考えたけど。ひとりで考えて疑問に思ったことは、お母さんに聞いたりしてたよね? それは私が自分から質問しないときは放っておいてくれたから、ゆっくり考えられたってことかも。たとえば、毎日“もうひとりのお母さん”の写真にあいさつするという方法もあるみたいだけど、それは物心ついたらしんどいと思う。私だったら絶対にしたくない。毎日、ほかの  人とちがうって思い知らされ続けるのはイヤだなあ」

私「“産みの母”について考えること自体もイヤだった?」

娘「別に考えるのがイヤだということじゃないし、産んでくれたことはよかったと思うけど、結局は手放されたわけだもんね。だから毎日、“産みの母”がいると繰り返されたら、たとえば血液型がRHマイナスだとか自分では変えられないことをしつこく言われ続けるのと同じで、“もう! わかったから! よく知ってるから! うるさい!”って気持ちになると思う。年齢にもよるけど、一度きちんと知らせてくれたら忘れるはずがないのに」

私「う〜ん、それはそうかもしれないね」

娘「そんなに言われたら、会ったこともない産んでくれたお母さんは心配してくれているし、今のお母さんには育ててもらえていて、私は普通じゃない。だから“とてもいい子にならないといけないの?”、“普通の子よりいい子にならないと恩知らずなの?”、そんな風に考えて無理をする子もいるかもしれない。それはかわいそうだよ」

私「お母さんもお説教のときに“産みの母”の話をして、アンにとめられたもんね」

娘「うん。真実告知をして、聞きたいときに遠慮なく聞ける状態にして、子どもが聞いたときに親が答えてくれるのはとてもいいことだよ。でも、毎日毎日っていうのは、親の側も相当無理してるって思うけどね。無理してたら、子どもにだってわかるよ。そうしたら親に対して少し遠慮もするし、それも大変だよね。私だって、ときどきつらいときもあったけど、たいていは忘れていられたからラクなほうだったと思ってる」

 「ほかの子たちと同じが居心地いい」に納得。途中でやめたとはいえ、お説教のたびに産みの母の話をしていた私はとても反省しました。その気持ちに気づかなかったのは、私が驕っていたせいですから、娘に謝りました。

次回更新は4月11日(月)です。

特別養子縁組について

 特別養子縁組は、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、親子になりました。

厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html

※この連載は、書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです。

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