『夜もヒッパレ』『あちこちオードリー』…“ヤンチャ”な時代とはなんだったのか ぼちぼちテレビ日記

文=西森路代
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3月23日

 『お笑い実力刃』(テレビ朝日)は「芸人ものまねスペシャル」。ただ、ものまね芸人のネタをつなげていき、合間にインタビューをする構成ではなく、今のものまねの歴史を掘りながらすすめていた。

 今のものまねは、歌ネタから始まったものなのだが、いつからお笑い芸人を真似るようになったのかということを、コージー冨田、原口あきまさをスタジオゲストに探っていくという流れは、なかなかほかの番組では見られなかったものではないか。

 なぜなら、ワンテーマで深堀りをしていくバラエティは、現在ではほとんどなく、特集をしたとしても、別のコーナーも入れて……と、いろんなものが詰め込まれた番組がほとんどだからだ。その理由は、ワンテーマで視聴者の関心がもつのかなあ? という心配があったりするのだろう。たくさんの話題をザッピングするようなもののほうが、飽きさせないと制作側が考えているのではないかと思う。

 この番組も、いろいろ試行錯誤はしているが、構成の力を感じさせ、番組の終わりに近づくにつれて、なにかしらの到達点があるような作りになっていることは、評価すべきだと思う。合間に語るものまね芸人のコメントの分析力、批評の力も感じられる。

 原口あきまさとコージ―富田のかけあいのネタも披露されていたが、芸人をものまねするということで、その人がいいそうなことを想像しつくしていないといけないのだという。昔は、こうしたかけあいに、微妙なところがあったように思うが、今はお笑いのネタとしても完成されていると思うし、昔は原口あきまさの関西弁にも微妙なイントネーションもあったように思うが、今では技術があがると同時に、関西弁のイントネーションもどんどん完璧になっているように思う。

3月27日

 『いたって真剣です』(朝日放送テレビ)は、「東京NSC15期大集合SP」で鬼越トマホーク(坂井良多、金ちゃん)とマテンロウ(アントニー、大トニー)、デニス(植野行雄、松下宣夫)、おかずクラブ(オカリナ、ゆいP)が出演。

 スタジオに来ていないニューヨークも同期のことをVTRでコメントしていた。最初は、現在売れているニューヨークだから、あたりさわりのないことを言うのかと思っていたら、すごい芯食った話というか、同期の現状を把握して、今、本人たちが懸念しているであろうことなんかも分析してきちんと話していたのが意外だった。これで適当に同期のことを、ただ茶化すだけだったら、鬼越トマホークになんやかんや言われる流れになるのだろうけれど、そういう流れにはできない感じになっていた。もしかしたら編集もあるのかもしれないけれど。

 鬼越の酒井がけっこう同期思いで、ゆいPがテレビの企画がきっかけでつきあうことになった男性が単に目立ちたいだけだったと憤っていた。

 『なるみ・岡村の過ぎるTV』(朝日放送テレビ)もTVerで。今週は麻婆豆腐特集。なんかわからんけど(勝手な思い込みかもしれないけれど)、大阪のご飯はおいしそう。麻婆もカレーとあわせたり、焼きそば、親子丼とかけ合わせたり、欲望に忠実な感じがするからおいしそうに見えるのか。スパイスカレーだって大阪が早かったが、その後、やっと東京に来た感じ。最近、関西の編集部から仕事を依頼されることがあって、けっこううれしく思っている。

3月30日

 日テレで『夜もヒッパレ』の復活を。1990年代後半の女性たちのファッションが懐かしすぎる。みんなキャミソールにタイトのひざ丈スカートをはいてた。私が新卒で会社に行っていたときもまさにそんな恰好をみんなしていた。バブル時代の肩パッドの入ったジャケットとワンレンボディコンのことは憶えているけれど、このころのファッション、梨花がTOCCAとかのワンピースを着ている感じは忘れているのかもしれないなと思った。ピタTとかも同じ頃だと思う。私も忘れていたのだが。このときを象徴してたのは、『ハッピーマニア』(祥伝社)のシゲタカヨコとかかなあと思う。気の強そうな女の子がけっこういたイメージ。眉毛とかも眉山が強調されていたし。

 『あちこちオードリー』(テレビ東京)は、勝俣州和と菊地亜美がゲスト。勝俣州和が最初に自分がアイドルだった時の話をしていて、ライバルは光GENJIのかーくん(諸星和己)だとも言っていた。最初はたくさんのファンがいたが、かーくんのことを考えて、裏で張り合い近寄りがたくなっていたら、どんどんファンが離れ、解散コンサートで自分を応援してる人はいなくなってたと。今では、ファンが一人もいないと揶揄されているが、それでも「ファンゼロでこんだけテレビ出るのすごくない?」とめちゃくちゃポジティブなことを言っていて「強っ」って思った。

 いや、実はテレビっていうのは、ファンが多い人で成り立っているわけではない。プライムタイムのドラマの主演をする人が人気があると思って、雑誌で表紙をやったって売れるわけではない。プライムタイムのドラマの主演をする直前の人に熱心なファンが多いものなのだ。

 勝俣州和という人は、『ダウンタウンDX』(読売テレビ)で、長年、大トリでトークを決めるなとずっと思っていたが、『あちこちオードリー』でもきっちり面白かった。

 勝俣州和がアイドルをしていた時代は、アイドルグループのいない時代だったのは本当で、人気がどこにいっていたかというと、チェッカーズと吉川晃司などのアーティストにアイドル的な人気が移行していた。そのため、これまでのアイドルは、やり方を模索をしないといけなくて、アイドルがロックバンドをはじめたり、アーティストっぽい歌を歌ったりしないといけなかった。

 実は、そんな真っ最中に、斜陽になったアイドルを半ば批評的に歌ったのが小泉今日子の『なんてったってアイドル』だったのだと思っている。だからこそ、キョンキョンはこの曲を1985年の紅白で歌うときに、心臓や脳みそをイメージさせるドギツイ衣装で歌ったのだ。ちょっとアバンギャルドで、それがアーティスト的でもあった。

 先々週『MUSIC SPECIAL 小泉今日子』を見たときにキョンキョンのことは書いたけれど、その番組に友人として出ていた本木雅弘は、シブがき隊というアイドルの出身であった。1980年代の終わりに、時代がアーティストの方に傾いていったときに、本木雅弘というのは、その頃に事務所を辞め、キョンキョンと同じくらいの嗅覚と速さで脱アイドル化に成功した人であった。

 本木雅弘もまた、1992年の紅白歌合戦にソロで出演したとき、コンドームで作ったネックレスを首からかけてパフォーマンスをしていた。吉川晃司も1985年の紅白でギターを燃やした。そういうイキった時代だったのである。キョンキョンもこの間のNHKの番組で、「やんちゃな時代がちょっと演じてたかも」と言っていたが、まさにそんな時代だったのである。

 勝俣の話に戻る。今では短パンのイメージの強い彼だが、アイドルであった後半くらいには、けっこうバブルっぽいスーツを着ていた気がする。だいたい、欽ちゃんの番組に出る若手は、劇男一世風靡出身であった(風見慎吾や柳葉敏郎もそうである)ので、お茶の間のアイドル的ではあるけれど、実は硬派というかヤンキーマインドがある、みたいな感じはあったのだ。

4月1日

 『ザ・ベストワン』(TBS)には「必殺仕事人」のテーマをつかってショートで笑わせるというコーナーがあった。スクールゾーンは、お笑い芸人の出待ちのシチュエーションで笑わせていた。そのネタでは、お笑いファンの女性がふたり登場して、ひとりは的を射ない感想をダラダラと伝えたりあんまりおいしそうではないが主張の強いお菓子の差し入れをしたりしていたのに対して、もうひとりの女性は、「今日もおもしろかったです」と簡潔に感想を伝え、差し入れはクオカードで、写真をさささと撮って去る姿が「仕事人」のテーマにあわさって、けっこう笑ってしまった。

 スタジオでそれを見ているみちょぱも、自分の出待ちの女性も、差し入れだけそっと渡してバイバイと去って行く人がいるので、もっと話したいのに! と自分が追いかけるような気持ちになると言っていて、そういう心理はあるだろうなと思った。

 しかし、ファンってそんなにスターに気を遣うもんなんだ、いやまあ遣うか。有益な感想を伝え、自己主張のない差し入れをいれて、そそくさと去る。人の自己主張って邪魔なんだな、人に印象を残すのに、逆に自己主張のなさが効くのだなって思うと、よくわからないが悲しくもなってしまった。これは、そのときのネタとは関係ない話で、そのネタを機転に思っただけなのだが、他人の自己主張が邪魔っていう感覚、けっこう傲慢ではないか?

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