
GettyImagesより
「図鑑」じゃなくて、びっくりした! では、何なのかーー。著者は否定するでしょうが、子どもたちの語りを継ぎはぎして作り上げた「僕たちの考えた胎内記憶ストーリー」だと感じました。
いまや図鑑といっても、精度も内容も多種多様。生き物や乗り物などを分類し、正確な写真や図とともに解説されるスタンダートなものから、中年男性などといったカテゴリーの人物レポートをズラリと並べる読みもの的なもの、または解説は最小限に写真が中心となったものもあり、いろいろな「図鑑」が出回っています。
しかし絵本作家のぶみ氏の新作『胎内記憶図鑑』(東京ニュース通信社)は、子どもたちの語りを“いい話ふう”に組み立てた、悩める母たちをターゲットにしたファンタジーストーリー。図鑑の要素をドコに見出せばいいのか、よくわかりませんでした。
と、しょっぱなから失礼しました。
音声SNSであるclubhouseで「胎内記憶教育協会の人より僕のほうが聞いている(※子どもたちが語る胎内記憶を)」と豪語していた著者の新刊というから、どれだけの数・種類の記憶が分類されてズラリと見られるのかと思っていたら、いつもと変わらずの絵本だったので肩透かしをくらい、ついついぼやいてしまいました。
同書のテーマである「胎内記憶」とは、赤ちゃんが母親のお腹の中にいたときの記憶のこと。海外でもさまざまな研究があるようですが、日本においては産婦人科医の池川明氏の発信を中心に、空の上に神さまがいて、そこで母親を選んでお腹に入るという、スピリチュアルエッセンスの濃い世界観となっています。
巷では2014年のドキュメンタリー作品『かみさまとのやくそく』が公開されたり、そこに出演していた胎内記憶キッズ「すみれちゃん」の書籍が2018年に大ヒットした出来事などがあり、認知度が高まっていったと見受けられます。そうした経緯を経て、子どもたちが語る不思議な記憶という話から、子育てに悩む母親たちへ癒しを施す方向へと爆走しているよう。
そこへいっちょかみしてきたのが、お騒がせ絵本作家であるのぶみ氏。胎内記憶をテーマにした絵本は今回で3冊目となっています。逮捕歴や暴走族といった嘘まみれの経歴に加え、母親の自己犠牲を美化したり、親の死で子どもを脅し親のありがたさを植え付けたりする著作でたびたび炎上してきましたが、やはり極めつけはイベントを通じて知り合った複数の女性と不倫をしていたなる「文春砲」がさく裂したことでしょうか。結果、2021年のオリパラ文化プログラムを辞任したなる出来事がありますが、持ち前のフットワークの軽さやSNS常駐状態の営業活動により、現在もいまだ一定数の母親たちからは支持されているよう。と、くれば母親をターゲットにした胎内記憶界とは好相性なわけですね。
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