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特別養子縁組で親となった著者は、娘・アンちゃんに幼い頃から養子であることを伝える「真実告知」をし、確かな関係を築きました。そうして大人になったからこそ、なんでも話せる関係に。そこで今回は、カミングアウトと偏見についてのトークです。
第4章 花ざかりのアン
うちの子の場合、周囲に自分が養子であることをカミングアウトするかしないかも、またカミングアウトの方法も、いろいろと使い分けているようです。
私「これまでにアンが養子だってことを友達や知人にカミングアウトして、気まずくなったことはない?」
娘「当然、あるよ。私が養子だと話すと、やっぱり“かわいそうに”、“苦労したんだ”、“大変だったね”的なムードになることが多いかなあ。“ちがうよ。私はかわいそうではないし、苦労もしていないし、大変でもなかったよ。実の子でも大変な人もいるだろうし、人それぞれだよ”って言いたいんだけど、あんまり必死で強調するのも変だしね」
私「そうだね。あんまり言うのもおかしいね」
娘「私の性格を知っていても、そんな風に思う人が結構いるのは、やっぱり養子への偏見があるからかな。だけど、それで普段の付き合いが変わるわけじゃないし、“まぁいっか〜”って思ってるよ」
私「うん、それしかないかも!」
娘「最近では、本当に親しい人以外には、カミングアウトすることで気を遣わせてしまうのも申し訳ないから話さないの。みんなで集まっているときにね、私が養子だと知らない友だちが養子の話をすると、知ってる友だちがかたまるのね。ありありと、私を気遣っているのがわかるの。そんなときは気まずい。私は平気だけど、“気を遣わせるのがイヤだな〜“って思うの」
また少し前に、アンの親友・Mちゃんのお母さんが今頃になって養子だったことが判明したという話を聞いたのですが、そのことについては次のように話していました。
娘「Mちゃんに自分のお母さんが養子だわかったという話を聞いたとき、“私も養子なんだよ”って軽く伝えたんだけど、やっぱり場の空気が重くなっちゃった」
私「そっか〜。Mちゃんのお母さんは大人になってから知ったの?」
娘「うん。だから初めて自分が養子だと知ったときは大変だっただろうな〜って思って。“私は小さい頃から知らされていたからラクだったよ”って言ったら、“そ、そう……。それは大変だったね”って引き気味に言われちゃって」
私「温度差がすごいね〜」
娘「深読みしたらね、“小さな頃に養子だと知らせるなんて、とても残酷な話。とんでもない。アンちゃん、ものすご〜くかわいそう。どんなつらい毎日だったんだろう”ってことだよね。全然そうじゃないのに〜」
私「それで詳しく説明してみたの?」
娘「親友だし、できたらわかってほしいから言葉を尽くして説明したんだけど、どうしてもMちゃんの“養子はかわいそう”っていう考えはくずせなかったんだよね。友達と比べても、恵まれているほうだと思うんだけどなあ。残念なことに、お母さんとお父さんの養子になってよかったって気持ち、全然伝わらないのよ〜」
それはアンが生きてゆくうえで、永遠の課題かもしれません。ちゃんと理解してくれる人や考えが交わる人もあれば、平行線で理不尽な同情を寄せてくるだけの人もいる。それはそのまま受け流して、変にこだわらずにアンらしく生きていけばいいと思います。
私だって、同じような立場です。「血を分けた子どもを産めなくてかわいそう。仕方なく養子を育てたんだろう」ーーそんな風にみる人もいないわけじゃないでしょう。でも「私たちは幸せな家族なんですよ!」って宣伝するつもりもないし、放っておこうと思います。
そして、こういうときは、この呪文がいちばんです。
「よそはよそ、うちはうち!」。
次回更新は4月25日(月)です。
特別養子縁組について
特別養子縁組は、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、親子になりました。
厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html
※この連載は、書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです。