アジア系の多様性を語るアメリカの絵本8選~子供たちのハピネスのために

文=堂本かおる
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Beautifully Me(美しく私であること)バングラデシュ系

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Beautifully Me』(Simon & Schuster Books for Young Readers)著:Nabela Noor 画:Nabi H. Ali

 コスメ&ファッション/ライフスタイルの人気YouTuber、ナベル・ノールが自身の子供時代を元に描いた絵本。初めて学校に行く日の朝、幼いズビはワクワクしながら思いっきりのおしゃれをする。ところが姉はおろか両親まで「最近、太った」「ダイエットしなくては」などと話し出す。ぽっちゃりしたズビはそれまで自分や他者の体型をネガティブに捉えたことがなく、ショックを受ける。それを知った家族は……。プラスサイズ体型のナベルが「ボディ・ポジティブ」を訴える作品。現代アメリカに暮らすバングラデシュ系一家の光景(言語、食事、母親はヘッドスカーフ+サリー、10代の姉は今時のファッションなど)がごく自然に織り込まれており、非南アジア系の子供たちへの良い情報源とも言える。

Asian Adventures(アジアの冒険)

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Asian Adventures』著:Yobe Qiu 画:Jade Le

 アジア各国の国名や特徴的な風物をアルファベット順に綴った絵本。アジアは広義ではサウジアラビアなど西アジア、カザフスタンなど中央アジアを含む48カ国とされるが、一般的には東アジア、東南アジア、南アジアを指すことが多い。この絵本もその3つのエリアに位置する20の国と地域を取り上げている。「C」はカンボジア。アンコールワットの前で民族衣装の女性が踊っている。「K」はインドネシアのコモドドラゴン。「P」はフィリピン。ビーチにヤシの木とボート。「R」はライス(米)。「X」はxie xie(謝謝)、中国語の「ありがとう」。「Z」は禅寺の庭園。幼児向けであり、アジアの全体像を教えることが目的ではないものの、地理的に広く、文化的に多様なアジアを理解するのは大人にとっても難しいのだと改めて知らされる。

Blue Sky White Stars(青い空、白い星)

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Blue Sky White Stars』(Dial Books)著:Sarvinder Naberhaus 画:Kadir Nelson

 アメリカ合衆国の国旗、星条旗をテーマとした絵本。西部開拓の幌馬車、移民受入の象徴である自由の女神、グランドキャニオン、独立記念日の花火、南北戦争、公民権運動、人類初の月面着陸など、アメリカをアメリカたらしめる歴史的風景が描かれている。そこに現われる「アメリカ人」たちは白人、黒人、ネイティヴ・アメリカン、イスラム教徒、高齢者、幼児、若者など様々。そこにはアジア系の顔も、もちろんある。アジア系もまた、アメリカを構成する要員なのだ。作者はインドで生まれ、アメリカで育ったサーヴィンダー・ネイバーハウス。

アジア系の子供たちの健やかな未来のために

 アジア系アメリカ人を描く絵本にはいくつかの目的と価値がある。いつまでたっても移民、少数派、地味な存在と軽視され、かつ「どこかミステリアス」、つまり「我々 “アメリカ人” にはよくわからない人々だ」と思われている。かつ、「つり目」など外観を揶揄され、挙句にアジアがコロナ・ウイルスの発生源と喧伝されて殺人まで含むヘイトクライムの対象となってしまった。「何を言っても構わない、言い返さない、社会的に弱い相手」とステレオタイプ化されているのだ。だからこそアジア系の子供たちにはこうした絵本が必要となる。アメリカ社会で活き活きと生きる主人公を見ることによって、自分を肯定できるのだ。

 アジア系を描く絵本は、非アジア系の子供たちにとっても重要だ。親や周囲の大人から無意識に受け取ったアジア系への偏見を、絵本を通して上書きできる。自分と同じなんだ、でも自分とはちょっと違う文化を持ってるんだ、それは楽しい文化なんだ、と理解できる。

 こうした目的のためにはアジア系を描く絵本は1冊や2冊では足りない。アジアのあらゆる国、あらゆる文化、そして個々の人によるユニークさ。さらに、アジア系だけどアメリカ人だという、当たり前なのに忘れられがちな事実……。

 全米のアジア系人口が6%なのであれば、出版される絵本の少なくとも6%はアジア系にまつわる物語でいいのかもしれない。

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