農水省タイアップ映画で描かれる「オーガニック=体にいい」の問題点、登場人物が唱える珍説

文=山田ノジル
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影響力は大きくなる一方

 こんな動画をオンライン配信で観ながら菌ちゃん先生を検索してみると、堆肥づくりにEM菌も取り入れてるわ、ワクチンよりも菌ちゃん野菜での健康な体づくり! と主張するわと、さらなる濃厚な発言が見つかり、菌への期待値が無限大であることがうかがい知れました。

 こうした活動をひとりでやっているぶんには「ユニークな生産者」で済む話ですが、感銘を受ける人は少なくないらしく、同映画には「菌ちゃん先生の講演を聞いて、即野菜造りを始めた」という保育園の園長も登場。「食事を変えたら子どもたちが元気になった」「この給食にしてから感染症が激減した」とキラキラ語っていましたが、園児の健康はそんな単純な話じゃないのではと、まったく共感できず。しかし最近では俳優の柴咲コウともタッグを組んでいるようで、菌ちゃん先生の知名度は爆上がり状態です。

 ちなみに栄養価や健康効果について、同映画をタイアップしている農水省も、さすがに「オーガニックは環境にいい、持続可能な生産方法であって、特に安全で体にいいものという認識はない」と言っている模様。ですから上映する団体自治体さまにおきましては、このあたりを鵜呑みにしないようアナウンスしていただきたいものですが……そもそも、そういう思想の映画をタイアップすんなよって話しです。

 菌ちゃん先生のオモシロ発言はまだまだあります。菌は生き物だから人の気持ちも伝わる。だから純粋な子どもたちの方が、美味しい野菜を作れる。同映画では懐かしの「ハンドパワー」的パフォーマンスを子どもたちに行わせ、皆で畑に向かって「おいしくなーれ!」と合唱させていました。子どもが愛情をもって野菜を育てて何が悪い。そういう意見もありそうですが、そうした感動パフォーマンスで美味しく育つのは野菜ではなく、カルトの養分。菌ちゃん先生は農薬と発達障害の増加を結び付けて考えるフォーズフォーチルドレンという団体と親交が深いようですので、『いただきます2』も有機食材のトンデモ宣伝にさぞかし効力を発揮するのでしょう。

 オーガニックそのものは悪くないのに、乗っかろうとする人たちの過剰な演出や語り、思想の偏りにより、一気に胡散臭くなる残念さ。なのに「子どものためのいい話」という建前があることで、教育現場にスルッと入り込ませてしまう、行政への不信感。誠実さと正義あふれるサステナブルなドキュメンタリー作品に、そんな怖さを感じました。

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