
GettyImagesより
特別養子縁組で親となった著者は、娘・ アンちゃんに幼い頃から養子であることを伝える「真実告知」 をしながら普通の幸せな家庭を築き、 そうして無事に子育てを終えました。最終回は、 書籍のあとがきに加え、 連載のあとがきとして最近のことを教えてもらいました。 うさぎママ一家の近況は……!?
書籍のあとがき
「うまれてきてよかったとおもうこになってね」
アンが幼いころ、絵本に入れるメッセージを20文字以内で書くことがありました。必死に知恵をしぼって、もっとも伝えたかった気持ちを集約したのが、この言葉です。
今でもこの思いは変わっていません。アンのみならず、あらゆる状況にあるすべての子どもたちに、そうあってほしいと願っています。わがままな私がそう思えるようになったのも、子育てを通して少しは成長することができたからかもしれません。
充実した悲喜こもごもの子育てが一段落し、娘が手元から離れたあと、心の隙間を埋めるかのように、ブログを始めることになりました。知らなかった世界に足を踏み入れたことで、寂しさの幾分かをまぎらわすことができました。新しきを知ることは、何歳になっても新しい自分を知ることができる素晴らしい経験ですね。
ブログにはどんなことを書こうか迷いましたが、平凡に生きてきた私の人生の中で、ちょっと変わった経験は特別養子縁組くらいだったので、娘へのラブレターとして、特に深い考えもなく、思いつくままに書いてみることにしました。
ですから、ある日、急に書籍化の話をもらって、びっくりしたのは言うまでもありません。「まさか!」という気持ちでした。
いちばんの読者である娘に早速報告したところ、大賛成してくれました。
「わぁ〜すごいじゃない! 養親と養子だって、うちみたいな普通の家族なんだってこと、ひとりでも多くの人に知ってもらえたらいいな。ただ本にするには、うちはあんまりにも普通すぎるかもね」
そう、私たちはごく普通の家族です。でも、娘がこの世に生を受けなかったら、家族の絆を結ぶことはできませんでした。
ですから、この本によって、予期せぬ妊娠に悩んでいる若い方の、たとえおひとりだけでも、できたら小さな命を摘み取ってしまうことを考え直してもらえたらと願っています。また、同時に私と同じように産めない立場で特別養子縁組を考えている方の不安を、ほんの少しでも軽くするお手伝いができたなら、これほどうれしいことはありません。
安易に養子縁組をおすすめするつもりはないですが、少なくとも私はアンの母になれたことが、夫との結婚と同じくらい、生涯で最高の幸運だったと思っています。懸命な母でも、完璧な母でもなかったけれど、アンにとっては真摯な母であったこと、それをアンが認めてくれたことが、私のささやかな誇りです。
2012年11月10日 うさぎママ
特別養子縁組について
特別養子縁組は、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、親子になりました。
※厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html
(この連載は、書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです)
連載をお読みくださったみなさまへ
手すさびに娘へのラブレターのようなブログ記事を書いていたものが思いがけず書籍化されて驚いたのも、もう10年前のことになりました。
そして昨年よりこちらで連載の形で再び取り上げていただくことになったとき、再び娘に許可をとるため問い合わせました。すると、書籍化の時と同じ返事が返ってきました。
「養子縁組でもごく普通の家族だということをたくさんの人に知ってもらいたいから、大賛成! 1人でも多くの子供が私のように普通の家庭で普通に育てられるといいな」
書籍化した時から10年たって家族の形も変わりました。娘の結婚、夫の退職があり、そして4年前に娘夫婦はカナダに渡り、現在永住権取得の申請をしています。そして今も変わらず娘は養子縁組で家族になったことを「最高にラッキーだった」と言ってくれます。もちろん、私たち夫婦も同じ気持ちです。
カナダに行く前に、「お母さんが反対ならキッパリ諦める」と相談してきた娘の背中を押したことを後悔していません。娘が大きく羽ばたくチャンスを、誰よりも私が強く望んだのは、子育ての目標が「親から自立させること」だったから。
この5月上旬にコロナ規制がゆるみ、やっと2年ぶり・3度目の里帰りをしましたが、仕事にプライベートに充実した生活を送る様子をつぶさに報告してくれる娘の明るい笑顔が何よりの親孝行。共に過ごす日々のあれこれを忘れたくなくて、せっせと同名のタイトルのブログを更新しました。
これまでの(手を焼いた反抗期を含めての)数知れぬ思い出に加えて、これからも大切な思い出を与え続けてくれる娘と、彼女を支えてくれる素晴らしいパートナーや多くの友人達、共に娘を慈しみ見守ってくれる夫、今回の連載の機会をくださった方々に心からの感謝を……。
そして平凡な家族の話にお付き合いくださった読者のみなさま、本当にありがとうございました。
2022年5月30日 うさぎママ