その2★マルチ商法ドラマで子宮セラピー
お次にご紹介するのは、ネットワークビジネスで成り上がるシンママの奮闘を描くドラマ『ビカミング・ア・ゴッド』です。残念ながら本作は、Netflixでは現在配信終了。さらにシーズン2はコロナ禍により製作中止されていて、悲しすぎ~。くっそ面白かったのにな!
同作品は、巷で「ブラックコメディ」と紹介されているだけあり、笑いごとじゃないと思いつつ、各エピソードで確実にコーヒーを噴き出します。「苦労でなく試練なの!」といったセリフまわしや、トップの人物を神格化するような演出など、「マルチあるある」のカルチャー描写が五臓六腑にしみわたります。
大きな目標を掲げて自己実現! いい商品を広めて社会貢献! みんなが幸せになれる、素晴らしい仕事! ネットワークビジネスは本来、ごく一部しか派手には稼げないシステムになっていますが、それに疑問を持たせず、資金をつっこみ強気で爆走するタフさを維持させるためでしょうか。常にポジティブ&ハイテンションに攻めていくメンタルが必要になるので、自己啓発やセラピーといった類のものを取り入れるのも定番です。同作では、そこに「子宮セラピー」が登場です。さすが、製作陣が「カルト」について徹底的にリサーチしたというだけあります。
組織のツートップとして君臨するオビ―の妻が、特別に目をかけた人だけを通してくれたのは「宇宙で最も安全で安心できる部屋」。ドームのような空間は子宮をイメージしているのか、どギツイピンク一色で、足元には白いボールが敷き詰められています。何も知らずに見たら「ポップなボールプールかいな?」と思ってしまいそう。そんな場所でオビ―の妻はヒロインにこうささやきます。
「敵意に満ちた世界を忘れて、自分と向き合うの」
世界が敵意に満ちているんではなくって、お前らが敵意を向けられるようなことをやってるんだろーがよ~。フィクションとはいえ90年代のネットワークビジネスシーンに、こんな胡散臭い子宮セラピーが出てきて、謎物件ウォッチャーとしては感無量です。
ちなみにこのセラピーは、ここ10年ほど日本で見られる「子宮を温活」系の、子宮に直接アプローチするものではないようです。帝王切開で生まれたトラウマが~とか、産まれたときの記憶が~とか言っているので、「胎内記憶セラピー」あたりが近いのかな。それにしても、このセラピー。なんやかんやと理由をつけ、ネットワークビジネスから産まれたであろう不安を、別のものになすりつけようとしている感がハンパありませんでした。
同じネットワークビジネスを扱った作品に、レギンス詐欺と呼ばれるマルチを追ったドキュメンタリー『ルラ・リッチ ~LuLaRoeの光と』があり、そちらは現在もAmazonプライム・ビデオで配信中です。ネットワークビジネス界隈特有のギラつきが、梅雨のジメジメを吹き飛ばしてくれるでしょう。
その3★アジア系セレブが肛門日光浴
物質的なあらゆる欲望を金でほぼ解決できてしまうと、お次は自分ではどうにもならない運やエネルギーといった部分も、なんとかコントロールせんと躍起になるのでしょうか。セレブたちのライフスタイルに散見される、スピリチュアルや謎健康法。その光景に圧巻されたのは、Netflixで配信中のリアリティーショー『きらめく帝国〜超リッチなアジア系セレブ達』です。
登場メンバーは、ロサンゼルスのアジア系スーパー富裕層たち。濃厚なコミュニティでマウント合戦やゴシップ騒ぎ、一部ロマンスが展開されつつ、彼らの暮らしにアジア系アメリカ人の文化を感じられる点が見どころです。アジア系であるという特徴を強調して演出したい製作サイドの意図もあるでしょうが、なじみ深いものからそうでないものまで、ぞーろぞろと姿を現します。
仲間との相性を干支の組み合わせで答え合わせし、特別な贈り物は漢方薬局へ探しに行く。結婚を先延ばししたい言い訳に「風水」を持ち出し、母の死が受け入れられなければハリウッドの霊媒師にセッションを依頼しています。「カルマ」という単語も頻繁に登場し、仏教徒であるシンガポール出身の超おぼっちゃま・ケインは「前世で善行をして良いカルマがあるから、今の仲間に出会えた」と語ります。親ガチャをカルマと解釈して感謝するのは、いいことなのか……な? 当連載の担当編集三浦が「声出して笑った」というエピソードは、ケインが部屋の風水鑑定に「孟子の子孫」を呼ぶところだそう。私は「悪霊を吸収すると黒くなる」という剣を操るパフォーマンスに、懐かしのキョンシー映画『幽幻道士』を思い出し、手を前に出すポーズで飛び跳ねたくなりました。
さて、彼らはアジア系であることを大切にしているので、こうしたアミニズム系の思想・文化が出てくるのはある程度は当然なのですが、「まさかそこも!?」とのけぞったのは、肛門日光浴です。
トンデモ健康法の極北「肛門日光浴」を検証する
肛門に日光を当てると、健康になる! 2019年後半にInstagram発で話題となり、テレビでもとり上げられ、トンデモウォッチャーとして名を馳せる五本…
DV気質な彼氏と別れて傷心な実業家のケリーが「性的な自信とエネルギーのコーチング」を謳う女性を頼るのです。元々別の心理カウンセラーから「激しい感情は解き放つの。すべてをさらけだして。自信をつけてもっと体を感じて意識を向けて」とは言われていたけど、肛門さらさなくても、よくないか!?
「会陰日光浴は古代のチベット東部で行われていた」「これがプラーナをもたらし太陽からのエネルギー吸収を調整する」と説明をうけながら、ケリーとセクシャルトレーナーのふたりで芝に寝ころび下半身スッポンポンになり、ヨガでいうところの「ハッピーベイビー」ポーズをとるすごい絵面! ケリーの「穴に虫が入ったら?」というツッコミはナイスでした。
「太陽を感じる? エネルギーが沸いてきた?」
「子宮やヴァギナから発するの。フェミニンの中心からね!」
フェミニンってなんだろう。少なくとも太陽に向かって股をおっぴろげることではないよな。配信エピソード内では、これをいつまで続けたのか効果はどうだったのか不明ですが、下ネタ大好きコミュニティっぽいので、ネタづくりとしてはバッチリかも。
過去にはコーヒー浣腸やコンブチャなど、数えきれないほどの健康&美容法が「あのセレブもやっている!」と話題になりました。そうした発信元はかつては雑誌が中心でしたが、今はSNSやこうしたリアリティショーで経由される時代なんですかね。より生々しく、その実態をチラ見したい人は、週末のお供にぜひ。
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