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ここのところ「18歳」についてよく考える。理由は5月にニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで起こった乱射と、その10日後にテキサス州ユヴァルディの小学校で起こった乱射の犯人がどちらも18歳だったこと。そして、私の息子も、もうすぐ18歳の誕生日を迎えるから。
アメリカでは1971年に投票年齢が21歳から18歳に引き下げられ、その時点で18歳=成人となった。刑法上ももちろん成人扱いとなり、2人の乱射犯のうち無傷で逮捕されたバッファローの犯人は無期懲役、または死刑もあり得る。
彼らの犯した罪の重さは償っても償い切れないことは確か。けれど人によってはまだ高校生であり、中退者はいるにせよ高校入学が義務のアメリカでは社会経験もほとんどなく、加えて脳が発達し切っていないとされる18歳は果たして大人なのか、まだ子供なのか……。前日まで未成年の17歳だった人物が18歳の誕生日にいきなり大人のメンタリティと行動規範を身に付けるわけではない。本人の性格や特質に加え、子供の頃からの、わけてもティーンエイジャーになってからの生活環境や体験によって成熟度は大きく変わる。
18歳になれば先に書いたように選挙での投票以外にアパートの賃貸契約、親の承諾無しの結婚、軍に入隊して戦地で闘うこともできる。その一方、アルコールは21歳から。タバコも数年前に全米規模で21歳に引き上げられた。マリファナは合法となった州、今も違法なままの州があるけれど、ニューヨーク州の場合は酒/タバコと同じく21歳から。つまり体内に取り込み、身体に影響を与えるものは18歳ではまだ早い、害を及ぼすと考えられている。そうそう、ギャンブルも21歳から。
そして銃の購入可能年齢。これも州により異なるけれど(アメリカ、ややこし過ぎる)、ニューヨーク州とテキサス州、どちらも犯人はセミオートマチック・ライフル(半自動小銃)を合法に購入していた。両州が購入年齢を18歳以上と定めていたため。
ニューヨーク州はバッファローでの乱射のあと大急ぎで銃法を改正し、事件から1カ月も経たない6月10日に「セミオートマチック・ライフルの購入は21歳から」とした。これはキャシー・ホーカル州知事がバッファローの出身であること、なにより今年は州知事選があり、ホーカル知事が再選を狙って立候補していることが理由とされている。
ちなみにニューヨーク市内は以前よりセミオートマチック・ライフルを含む全ての銃の購入年齢が21歳以上なので、新法の恩恵は特にない。同じ州内であっても犯罪の多い過密都市と、広大な土地に少ない人口が暮らす郊外や田舎では銃を扱う年齢に対する考え方も大きく異なることの好例と言える。
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18歳が10歳児を殺す理由
バッファローの黒人地区にあるスーパーマーケットで10人を射殺した犯人は、明らかに白人至上主義者だった。高校在学中にコロナ禍によるロックダウンとなり、その時期にインターネットから白人至上主義の思想を知り、急激に傾倒していったと報じられている。ユヴァルディの犯人については背景がそれほど詳しく報じられておらず、乱射の場を小学校とした理由も不明のまま。
私が不思議に思うのは、まだ18歳の犯人が10歳児たちに向かって「お前ら、全員死ぬんだ」と言って大型銃を発砲したこと。ある男児が「ボク、撃たれた」と声に出したがために、犯人はその男児に戻って止めを刺したと、死んだふりをして生き残った女児が証言している。
一般的に18歳ともなれば10歳児を子供と見做して同等に遊ぶことはないものの、わずか8年前の自分であり、エンパシー(共感)、シンパシー(同情)を感じる者が多いはず。弟妹や年下のイトコなどがいればなおさらそうなる。守ってやるべき幼い者で、本人が認めるかは別にして子供同士としての共感性もまだ残っている。そう考えると犯人の子供たちへの冷酷さ、残酷さは一体どこから来たのだろうか。犯人は教室に踏み込んだ国境警備隊員に射殺されてしまい、それを確かめる術はない。
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