18歳は大人? それとも子供?〜乱射事件の犯人と、高校生たち

文=堂本かおる
【この記事のキーワード】

自分の過去と今を見つめる卒業文集

 こうしたことを徒然に考えていた時に、息子が高校の卒業文集を持ち帰ってきた。卒業文集といっても「これから大学に行って、〇〇を専攻して、▲▲な職業に就きたい」といった将来への夢ではなく、「現在の自分に影響を与えた過去の出来事」がテーマとなっている。ホチキス留めではなく、ペーパーバックの体裁に製本してあり、表紙のデザインはアートの先生。

 何気なくパラパラとめくり始めると、思わぬことにグイグイと引き込まれてしまった。いかにも作文が苦手とわかる文体でわずか1ページしか書いていない生徒もいれば、4ページの “長編” もある。さらに、まさか高校生とは思えない文才を見せ、2篇も収録されている生徒もいる。先生はそれぞれの生徒に見合った文章量を認めたのだと思われるけれど、内容はどれもその生徒の内面や、現在の在り様の背景を物語るものになっている。まだ10代の彼らを形作った出来事である以上、圧倒的多数が家族、または友人にまつわるエピソードなのは十分に納得できる。

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高校の卒業文集「名もなき生徒たちの本 Vol. 4」

 以下はそのごく一部。

・自分もまだ幼い時期に妹が生まれ、子守を言い付けられたのに遊びに夢中になって大ケガをさせてしまい、責任感について学んだ

・父親が経営するレストランで働き、父親不在時にまじめに働かない従業員への対応を自分なりに覚えていった

・メキシコからの移民である両親からニューヨークで生まれ、初めて祖国を訪れた時の自分の気持ち、アメリカで成功した両親の誇り

・離婚した両親を諌め、どうすればうまくやっていけるかのアドバイス(本人がどれほど傷付き、悲しみ、怒りを感じているかが行間からにじみ出ている)

・シングルマザーの母親とケンカして家出をし、別居している父親の元恋人の家に転がり込んだ(婚姻関係であれ、恋人同士であれ、解消後も関係が続き、いわば家族の一端となっている)

・カリブ海の島国から母親がニューヨークに働きに出、自分も4歳でニューヨークに。育ててくれた祖父とは別れなければならなかった

・性格の穏やかさから中学では虐められた。高校では自分を確立し、うまくやっている

・父親が強盗に銃を突き付けられた瞬間を目撃してしまった。生と死は紙一重と学んだ

・母親がガンだと告知された。大切な人とは手遅れになる前に多くの時間を過ごさなければならない

・16歳の誕生日を盛大に祝う習慣があり(昔の成人式の名残り)、叔父が主宰してくれた。自分も企画から加わり、一生の思い出となった

 円満な家庭がある一方、10代ともなれば多くの生徒が親の離婚、家族との別居/別離、死別を体験している。どの生徒も驚くほど細密に大人の行動と感情を観察していて、それを自分に反映させている。

 実のところ、このエッセイは2年前、生徒が10年生(15~16歳、高校2年生に相当)の時に書き始められている。こうした内容を文章化することに慣れていない生徒に書かせるには先生側の相当な労力と時間が必要だったと思われる。また、学校の文集であり、親も読むであろうことから書くに書けないこともあったのではないかと思われる。

 逆に言えば、生徒たちは15~16歳の段階ですでにこうした体験を経ていて、特にこの世代はその直後にコロナ禍のロックダウンをも体験している。1年半、登校できずにオンラインのみでお互いにつながっていた彼らが受けた生き方への影響は、今の時点では誰にもわからない。その彼らが今、17~18歳となって高校を卒業しようとしている(米国は日本よりも就学月齢が早く、ニューヨーク市では6月末の卒業時点で18歳と17歳が混在)。

 彼らの大多数は今年11月の中間選挙で投票できる。ニューヨーク市は米国にあって稀な非車社会とあって運転免許を取得する人数は他所に比べると少ないものの、中にはすでに持っている生徒もいるかもしれない。アルコール/タバコ/マリファナは21歳までお預けと言いつつ、それは半ば表向き。

 優秀さゆえに奨学金を得て大学進学が待ち切れない生徒がいる。行先が決まらずに鬱々としている生徒もいるかと思う。米軍に入隊する生徒はいるのだろうか。少なくともここニューヨーク市内では入隊しない限り、21歳まで銃には触れられない、少なくとも合法的には。

 いずれにせよ、どの生徒も願わくば存分に楽しい18歳の夏を過ごし、その後は決して平坦ではないだろうけれど、それぞれの道を歩んで欲しい。
(堂本かおる)

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