再出馬?それとも刑務所行き? 再びアメリカを騒がせているトランプのいま

文=堂本かおる
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写真:ロイター/アフロ

 アメリカ合衆国大統領として4年間暴れ続けた挙句に2020年大統領選での敗北を認めず、「不正投票」騒動を巻き起こしたドナルド・トランプだが、ジョー・バイデン現大統領の就任後はその影を潜めていた。

 しかし11月に中間選挙を控えた今、トランプの2024大統領選への再出馬宣言は秒読み状態だとささやかれている。加えて今、トランプは以下の3件で有罪となる可能性が問われており、メディアを連日賑わせている。

【最近話題になっているトランプニュース】
・ホワイトハウスから自宅への機密書類の持ち出し
・1月6日米国議事堂襲撃クーデター未遂事件への関与
・トランプ・オーガニゼーションの脱税

FBIによる家宅捜査、機密書類押収

 8月8日、トランプの現在の本宅であるフロリダ州のマーラーゴにFBIの家宅捜査が入った。目的はトランプが大統領引退時にホワイトハウスから持ち出した大量の機密書類の押収だ。書類は15箱程度あり、11組のトップ・シークレット書類が含まれていた。

 大統領の任期中に作成された書類は大統領個人のものではなく、アメリカ国立公文書記録管理局が管理する。一般市民が機密書類を閲覧することはもちろん許されないが、法的には納税者のものであり、元大統領の個人所有は許されない。

 トランプの書類持ち出しについて、司法省は3つの連邦犯罪(諜報活動取締法、司法妨害、公文書の違法な扱い)を念頭に捜査を行なっている。

怒り狂うトランプ一派、「内戦」の可能性

 FBIはトランプがニューヨークを訪れるために本宅を留守にしている隙を突いての電撃作戦を行った。直後に事態を知らされたトランプは「(マーラーゴの地下にある)金庫を壊された!」「パスポート3冊も盗まれた!」と怒った。パスポートについてはトランプ自身が「1冊は期限切れ」と言い、他の2冊の詳細は不明ながら、司法省はすでに返還済みと発表している。

 数日後、トランプはSNSに「バラク・フセイン・オバマが持ち出した3,000万枚の書類はどうなった?」と、まったく根拠のないデマを挙げている。オバマ元大統領のミドルネーム「フセイン」を出しているのは、自身の支持者に「オバマはイスラム教徒」の誤った印象を与えるためであり、これは何年も前から延々と続けているオバマ氏への嫌がらせだ。なお、トランプはツイッターから永久追放された後、自身で立ち上げた同タイプのSNS「Truth Social」 を使って支持者にメッセージを送っている。

 FBIによる書類押収に怒ったトランプ支持者も暴挙に出ている。家宅捜査の4日後、あるトランプ支持者がアサルト・ライフルを抱えてオハイオ州にあるFBIオフィスへの侵入を試み、警官との銃撃戦の末に射殺されている。その前日、犯人は前述の Truth Social に「愛国者はフロリダに行ってFBI捜査官を殺せ」「俺は内戦を提案している」などとポストしていた。マーラーゴ家宅捜索の様子は録画されているが、FBI捜査官の身元が割れ、本人と家族が標的になる可能性があるとして公開されていない。

 そもそも、先鋭化するトランプ支持者の様相から第二の「南北戦争(内戦)」勃発を憂う声は以前より出ていた。

議事堂襲撃クーデター未遂事件

 トランプは2020年11月の大統領選でバイデン現大統領に敗れたことを認めなかった。全米各州で不正投票があったと言い張り、複数の州で訴訟を起こしたが、すべて敗訴または却下された。

 年が明けてバイデン大統領の就任式(2021年1月20日)が迫り、トランプがホワイトハウスに居残れる可能性はなくなってしまった。そのため、1月6日に大量のトランプ支持者が米国議事堂を襲撃し、前代未聞のクーデター未遂事件が起こした。襲撃のターゲットはトランプ政権下の副大統領であったマイク・ペンスだった。トランプ自身が、次期大統領の勝利を最終的に承認するのは副大統領であり、ペンスがそれを拒否すれば自分が大統領でいられると勘違いしていたのだった。

 トランプ支持者の暴徒たちは議事堂前に絞首台を作ったが、ペンスおよび議事堂内にいた議員たちは全員が逃げおおせた。だが、トランプ支持者と警官の双方に死者が出た。司法省は当日の映像などから暴動参加者の割り出しを続けており、現在、約900人が逮捕されている。

 司法省による捜査と並行して、米国議会が発足した「1月6日委員会(下院特別委員会)」による公聴会が6月に開始された。公聴会の目的は、暴動の最中のトランプの動向、選挙で敗北を認めなかったことと暴動の関連などを証言によって明らかにすることだ。

 元ホワイトハウスの職員キャシディ・ハッチンソンは、暴徒が武装していることをトランプが知っていた。そして暴動の最中にトランプがシークレットサービスに自分を議事堂に連れて行けと命令し、捜査官が拒否すると怒って自分で車のハンドルを掴み、さらに捜査官の鎖骨を鷲掴みしたと証言した。トランプに不利な証言をしたハッチンソンはトランプ支持者からの報復を考え、証言の後は身を隠していると伝えられている。

 脅迫を受けているのは証人だけではない。共和党の政治家の多くが議事堂襲撃事件を腫れ物のように扱う中、リズ・チェイニー下院議員(ブッシュ政権の副大統領だったディック・チェイニーの娘)は共和党員でありながらトランプ批判の急先鋒となり、1月6日委員会(下院特別委員会)の副委員長を務めている。そのチェイニー議員が、8月16日のワイオミング州下院議員選の共和党予備選で大敗したのだった。議事堂を襲撃した過激で暴力的なトランプ支持者たちだけでなく、他の共和党支持者たちも未だにトランプを支持、もしくは「反トランプ」への強い反発心を抱いていることを証明した。

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