トランプの不正ビジネス疑惑
機密書類の持ち出しと議事堂襲撃は連邦の管轄だが、トランプの旧本拠地であるニューヨーク州ではトランプのビジネスにおける脱税への追求が行われている。
トランプはニューヨーク市内で生まれ育ち、父親からニューヨークを拠点とする不動産ビジネスを受け継いでいる。現在はトランプ・オーガニゼーションの名の下、幅広いビジネスを展開し、2016年に大統領となった際には3人の子供(イヴァンカ、ドンJr.、エリック)に運営を任せた。トランプは大統領の任期終了後に自宅とビジネス・オフィスをニューヨークから自身が所有するフロリダ州のリゾート・クラブ、マーラーゴに移している。安倍元首相も訪れていた大邸宅で、今回、機密書類を隠匿していたのもここだ。
今月初旬、トランプ・オーガニゼーションの脱税に関してトランプと子供たちの宣誓供述の予定があったが、トランプの最初の妻で3人の子供の母親であるイヴァナ・トランプが自宅の階段で転落死し、いったん延期となった(現在の妻メラニアは3人目の妻で、トランプの末子バロンの母親)。イヴァナの葬儀後、トランプは8月12日に宣誓供述を行なったが、6時間にわたって400以上あった質問のすべてに応答を拒否して終了させている。
8月19日、トランプ・オーガニゼーションの財務責任者、アレン・ウィーゼルバーグが脱税を認めて司法取引し、懲役5カ月、罰金約200万ドルの刑となった。
次々と逮捕されるトランプの取り巻き
トランプの取り巻きで有罪となったのはウィーゼルバーグだけではない。スティーヴ・バノン(トランプ政権の元首席戦略官、極右メディア設立者。日本で講演会も行なっている)、マイケル・フリン(トランプ政権の元国家安全保障問題担当大統領補佐官)、ロジャー・ストーン(トランプの元政治顧問)など、これまでに10人以上が起訴され、数人が懲役刑を受けている。そのうち4人にトランプは大統領引退直前に恩赦を与えている。
トランプの大統領任期の初期に有罪判決を受けたトランプの元個人弁護士マイケル・コーエンはすでに刑期を終え、出所している。コーエンはトランプの不倫相手だったストリッパーへの口止め料の支払いを不正に行ない、有罪となったのだった。現在はメディアに露出して盛んにトランプ批判を続け、自分は愚かだった、トランプに近づく者は皆、凋落するといった趣旨のコメントを繰り返している。
コーエンの後にトランプの個人弁護士となったルディ・ジュリアーニ (元ニューヨーク市長)は、先述した2020大統領選の不正投票訴訟を一手に手掛けていた。そのジュリアーニは8月17日、ジョージア州の大陪審で証言をしなければならなかった。同州で「不正投票」を不正に主張した疑いによる。
ジョージア州の件に関し、トランプ派のベテラン上院議員、リンジー・グラハムも宣誓供述に呼ばれる可能性がある。
すべてはトランプの大統領再選を阻止するため
司法省、ニューヨーク州、1月6日委員会(トランプを起訴する立場にないが、公聴会の結果を元に司法省が動く可能性がある)は、いずれもトランプを有罪にするために最大の努力を続けている。予備選で負けたチェイニー議員も年内は下院議員のままであり、1月6日委員会の副委員長も続け、公聴会は9月に再開される。
トランプを有罪にしなければならない理由は、2024年大統領選再出馬の資格剥奪だ。しかしトランプが実刑を受けて刑務所に収監される事態になると、怒りに身を任せたトランプ支持者が内戦を始める可能性もある。この窮地はアメリカ自身が6年前にトランプを大統領として選んだ結果だ。アメリカは今、あまりにも大きな代償を支払おうとしているのである。
(堂本かおる)
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