面倒で大変な家事が、生活の不在を埋めてくれた 清田隆之さんの場合

文=太田明日香
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GettyImagesより

 さまざまな男性に家事の体験談を伺うことで、家事の歴史や社会状況を考えるこの連載。第一回目にご登場いただくのは文筆家の清田隆之さんです。

男性の皆さんに聞いてみたい「あなたにとって家事ってどういうものですか?」

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面倒で大変な家事が、生活の不在を埋めてくれた 清田隆之さんの場合の画像2 ウェジー 2022.07.31

 恋バナ収集ユニット「桃山商事」の代表として活動する傍ら、恋愛とジェンダーをテーマにした執筆や講演活動で活躍中。現在は配偶者とお子さんたちとの4人暮らし。在宅ワークをしながら双子育児をしています。

 清田さんは1980年、東京の下町生まれ。ご両親と6歳下の妹さんの4人家族。実家は北千住の商店街で電器店を営んでいました。幼少期はバブル全盛期で商店街には活気があり、お店にはメーカーの営業の方がしょっちゅう訪れ、ボーナスの時期には人が押し寄せるほど繁盛していたといいます。濃密なご近所付き合いがあり、ご近所さんと頻繁に行き来するなど、商店街がもう一つの家のような雰囲気の中で子ども時代を過ごしたそうです。ところが、肝心の家事については記憶が薄いといいます。そんな清田さんの家事にまつわるお話。

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清田隆之
文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信。朝日新聞beの人生相談「悩みのるつぼ」では回答者を務める。桃山商事としての著書に『生き抜くための恋愛相談』『どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか』(ともにイースト・プレス)、単著に『よかれと思ってやったのに──男たちの「失敗学」入門』(晶文社)『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)、編著に『どうして男はそうなんだろうか会議』(筑摩書房)がある。

母がやっていたんだろうけど……

 子どもの頃は誰が家事を担っていたのかというと、正直その意識すら……。振り返ると、ルールとか習慣とか、生活まわりの規範みたいなものがあまりないうちでした。両親は朝からお店に出ているし、僕や妹は朝から学校であまり生活時間帯が重ならないので、ご飯は大抵バラバラ。うちの隣が薬局で、なぜか毎日そこで朝ごはんを食べたりもしていました。

 母はお店に立っていたし忙しかったはずなんですけど、だからといって父が積極的に家事をやっていたような記憶もなくて。僕は小3からサッカーをやっていて、「他の洗濯物が汚れるから」と母にさんざん怒られ、高学年になってからはソックスやユニフォームを自分でコインランドリーに行って洗濯するようになったのですが、家事っぽいことはそれくらいで……あとは母にやってもらっていたと思います。妹は6歳も下でまだ幼く、手伝いなどについて男女差を感じることはありませんでした。

 家庭科の授業では調理実習や、キットで縫い物などをした記憶があります。でもイベントっぽいというか。やっぱりどこかで「女子がやるもの」という感覚があったように思います。中学からは私立の男子校で、「技術・家庭」という名の授業はあったけど、もっぱら技術の時間だったような気がします。てか、そもそも家庭科の先生っていたのかな……。そんな意識だから、家庭科で人生に必要な生活能力が身についたというような感覚は全然ありませんでした。

やり方を知らないくせにできると思っていた

 料理なんてまったくしたことがないくせに、小学校高学年の頃、校庭の棚になっていたひょうたんの実を見て、なぜか「食えるんじゃないか?」と思って勝手に収穫し、家に持ち帰って包丁で切って食べたことがありました。

 料理は大人(特に母親)がやることというイメージがあったのか、それまで包丁すら使ったことがなかったのに、「俺でもできる」といきがってそんなことをしちゃったんです。でも、ひとくち食べたらもうめちゃくちゃまずくて。それ以来きゅうりが食べられなくなっちゃったんです。

 掃除は学校で当番のときにやる程度で、基本的にさぼりたいし、つまらないものだと思って真面目にやろうとしませんでした。ほうきで野球をしたり、使った雑巾をロッカーに突っ込んでそのままにしていたこともあったりで、どうしようもない生徒でした。

 裁縫の授業も適当に受けていたように思いますが、ズボンやジャージが破れたときに自分で直そうとし、めちゃくちゃに縫って変な形になってしまったり、破れたところを無理やり安全ピンで止めて謎にパンクな感じになってしまったこともありました。裁縫でも料理でも掃除でも、ろくに身についてもいないのに、「俺にもできる」という根拠のない思い込みがありました。どうしたらきれいになるか、放置するとどうなるかというプロセスがわからないまま、見様見真似で表面的にやって取り返しのつかないことになってしまう、そんなことを繰り返していたように思います。

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