「大人のカルト&マルチ遠足」前編 入口はわりと開かれている

文=山田ノジル
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 秒でやる気が溶けていく酷暑を乗り切り、ようやく外出を楽しめる陽気になりました。例年どおり、今年も大きな盛り上がりにいまひとつ欠ける夏だった……とウダウダしていた折、常軌を逸した行動力に定評がある友人I氏から、街歩きを呼びかけが。テーマは「カルト&マルチスポットめぐり」。家に閉じこもってないで外に出ようぜという意図もあるようですが、健全と不健全が混ざり合うカオスな1日になる予感でいっぱい。これはもう参加一択で。

※注:当記事で紹介する物件すべてが、カルトと呼ばれる団体もしくはマルチ商法に関係するわけではありません。

1 代々木公園で奉仕活動と遭遇

 8月末某日。集合場所は代々木公園となりました。子どもの遠足ならここが目的地となりそうですが、我々は行程の都合によりここからのスタートです。渋谷の公園通りから公園へ入って南門へ向かう途中、いろいろなものに出会います。地面にマットを敷いてヨガを楽しむ中年グループ、ひとりウクレレを弾く男性、ダンスの練習をする男女。そうした開放的な代々木公園の光景は子どものころから変わらずで、軽くノスタルジーも味わいつつ、草の香りを吸い込み、日をさえぎる曇り空も心地よく、なかなかのリフレッシュタイム。しかしリラックス気分はここで終了。南門でI氏と落ち合うと、早々に「あそこで話を聞いてくるといいよ」とけしかけるのですから。

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遠目に確認できる、何かの集い

 「あそこ」と言われたエリアを遠目に確認すると、広がりながらもなんとなくの固まりを保つ20人くらいの集団です。テーブルで熱心に打ち合わせをしているチーム、食事中の人、立ち話に興じている人。近づいて何の集まりなのかと聞いてみると「キリスト教です」と返ってきました。

 さらに詳しく聞けば、韓国系プロテスタントの牧師が中心となり、都内近郊各地の教会の有志たちが布教活動を行っているといいます。I氏によるとこの日はさまざまな宗教団体が訪れ、生活困窮者に食料品を配る慈善活動(炊き出し)を行うのだとか。なるほど、しばらくすると少し離れたポイントにはサイババを信仰する宗教団体も到着し、菜食弁当を配りはじめています。

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韓国系キリスト教チームが配布していた食糧。パンやカップ麺など保存のきくものも充実。

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サイババ信仰団体の弁当は「トトロのサツキ弁当」のごとく、米の量が多い菜食弁当。白米の上に、味噌、ゴマ、高野豆腐、塩漬けのスモモ。以前は煮物などが入っていたという話。衛生面が気になる気候のせいか、予算のせいか。

 興味深かったのは、食糧を受け取る人数の差。韓国系キリスト教チームは賛美歌とお説教を聞いた人に、パンや保存食を配布。サイババは布教的なことは一切行わず、弁当をパパパーッと配って撤収。すると圧倒的に人気なのは後者。前者の配布は30食程度だったようですが、対して後者は到着前から長蛇の列で、配った数は120食(一部おかわりした人も)。人気の差、すごいな。配布の仕方の違いはどうやら教義に由来するようですが、どちらの信仰にも関わらない人は、コミュニケーションが最小限である方を選ぶのかも。

 ちなみに私はせっかくですから、プロテスタントチームの女性から、彼女の体験した「奇跡」を30分ほど聞かせていただき、この上なく充実した時間となりました。また、こちらが見ていれば、当然相手も見返すわけで、サイババ弁当待ちの列からは、積極的に話しかけてくる人もいます。

「あんたさっき、あっちでも女の人と話してたよね! 顔、覚えてるよ! お名前は?」

 50代くらいの男性がフレンドリーに話しかけてきたので、「山田と申しまーす!」と返事。行程の時間が差し迫っていたので出発してしまいましたが、また会ったら、ぜひゆっくり話してみたいものです。

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