11月2日(深夜)
『私のバカせまい史』(フジテレビ)は、「ケガと戦い続けて20年以上! 吉川晃司のシンバルキック史」。『バカせまい史』は、これまで誰も調べたことがないような“せま~い歴史”を紹介する内容で、ギャラクシー賞の月間賞にも輝いたことのある番組である。このところ、ゴールデンタイムで放送されていたほか、水曜深夜でも連続放送されている。
私は、小6の頃に『すかんぴんウォーク』と『モニカ』でデビューしたときから吉川晃司が好きで、コロナ前にもライブに行ってシンバルキックを生で見たこともあるくらいだ。そのときに驚いたのは、吉川晃司はけっこう前半でシンバルキックをさくっとやったりして、出し惜しみをしないし、終盤で本気の回し蹴りキックでは失敗したりもするのに、その失敗をちゃんと見せてくれるところに不屈の精神が見えた。その後に、力をふりしぼって成功させたりするので、ぐっときてしまう。
もしかしたら、ジェームス・ブラウンのマントのくだりみたいに、一回は力尽きてマントをかけられ、これで退場かと見せかけて、マントを振り払い再び歌い始めるお約束からも影響を受けているのではないだろうかとも思った。ジェームス・ブラウンが復活して、皆、「待ってました!」と盛り上がるあれである。
この『バカせまい史』の中でも、シンバルキックは、1999年に見たプリンスのライブで、パーカッションを担当したりソロでも活躍しているシーラ・Eが、「The Glamorous Life」の曲の中でシンバルキックするのを見て思いついたのだという。またそのけり方には、ブルース・リーのテイストを入れたと紹介していたので、さまざまなことからインスパイアされて、そして長い年月を経ていろんな生きざまが合わさってできた吉川晃司のオリジナルなのだと思う。
11月6日深夜
『にけつッ!!』(読売テレビ)。千原ジュニアは、兄の千原せいじの息子とよく食事に行っているという。千原せいじの息子は、いまどきの子で、父親の在り方には疑問を持っているそうで、「大きい声を出して人に対して何かを言う人はどういう回路なん? 常軌を逸してない?」と父親のことをボロクソに言うので、一緒にいたせいじの後輩芸人が、せいじをかばうほどであるという。
先日この日記で、千原せいじが『相席食堂』(朝日放送)に出たときに、島のロケで猫の世話をしている独身女性に対して、「(猫の面倒みるまえに)人生の管理せな」とか「猫の面倒みるまえにもっとせなあかんことあるけどな」と言っていたことを書いたが、その番組は、千原せいじの息子も見ていたらしい。
それに対し、ツイッターではもちろん、非難の声がたくさんあったのだが、息子は父親への避難の声を、自ら全部リツイートしたのだと千原ジュニアが語っていた。
もちろん、拡散したのは、自分の父親の言動がありえないということからである。
父親がいかに旧態依然とした考えの持ち主であっても、息子がそれに倣わないという例もあるのだということと、千原ジュニアという話せるおじさんがいること、そして千原ジュニアも、その甥っ子と対話することで、新たな考えを身に着けることができているのだと思うと、なんだかとてもほっとしてしまった。
11月9日
『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)は、「新旧バラエティ女子の仁義なき戦い!妬み嫉み全開の60分」。なんとなく、いやーなタイトルであるが、いまどきのバラエティタレントは、そんな煽りにはそうそう乗らないので、タイトルの通りの「妬み嫉み」というよりも、生き残るために、分析をしあって、その新旧のやり方の変化を議論しているような印象であった。そろそろ、タイトルだけ煽るのはやめればいいのに……。
関係ないが、日曜にテレビ東京で放送している、LDHのオーディション番組『~夢のオーディションバラエティー~Dreamer Z』でMCをしている木梨憲武が、オーディション生たちがグループ分けをするときの結果をCMをまたいだり、小出しにするので、「うずうずしてるんですよ、いいところで終わったりするから。その手法古くねえか?ってくらい」と言っていたが、その感覚は芸能人のほうが持っているのではないかと思った。
『ホンマでっか』の話に戻るが、新世代のバラエティタレントは、いちおうバトルを繰り広げろと言われているので、言われたとおりにバトルを一生懸命繰り広げている感じも漂っていた。
そんな中でも、元HKT48の村重杏奈が「今の時代は好感度がすべてなので、いかに好感度よくテレビに出続けるのかが大事なので」「バラエティってどうしてもグーンときたら、しょんぼりする瞬間があるじゃないですか」と言っていて、これはこれで、バラエティタレントも不安定な時代とリンクして、安定を意識しているのかもしれないなと思った。
村重はそれでも真面目にひとりバトルを繰り広げていたので、「やり方が古い」と指摘されていたが、今はテレビに出るために、スタッフに言われた通りにバトルは繰り広げるが、それに応えすぎて好感度がなくなったら「しょんぼり期がくる」ということも見えているのだと思う。
菊地亜美は「私たちのときはなんでもやります!みたいな人がディレクターさんとかも喜んでくれていっぱい仕事呼んでいただいてたんですけど、今テレビとか見てると、フワちゃんとか兼近さんとかもそうなんですけど、できないことはできませんとかやりませんとか、しっかりいったほうが重宝されるなと思うんです。そっちのほうが視聴者の方も信頼するというか」と、また野呂佳代も「昔はディレクターさん受けがいいほうが出れたんですよ。だけど実際MCの方とか芸能人の方を前にしてやるとみんな引いてるっていう現象がいっぱいあった気がするんです」とも言っていて、テレビの作り手の無茶ぶりに真面目に応えても、あまり実りがない時代であるということは、皆に共有されているのだなということはわかったし、出演者の分析がかなり鋭いので、そういう意味では面白かった。